第125話 文化祭編14
「はぁ、全く足の引っ張り合いなんかしてたらいつまでたっても彼女なんか出来ねーだろうが」
英司が行ってしまい、俺は一人で作業をしていた。
あの野郎、コッチがまだ残ってるっていうのに……。
そんな事を考えているとどこからともなく叫び声が聞こえてきた。
制裁が加えられたらしい。
「さっさと戻ってきてくれるとありがたいんだがな」
俺がそんな事を思っていると、クラスの女子が一人近づいてきた。
名前は……なんだっけな?
「ねぇねぇ前橋君、一人で大丈夫?」
「え? いや、一人どっか行っちまったからな」
「良かったら私が手伝ってあげようか?」
「いいのか?」
英司が居ない今、手伝ってくれるのはありがたい。
女子でも居ないよりはマシだし、それに俺も早くこの作業を終わらせたいからな。
「悪い、じゃぁそっちをもっ……」
そっちを持ってくれ、そう俺が言おうとした瞬間、話しかけてきた女子は他の女子二人の手によって拘束されていた。
「もう、何やってるの? 貴方はあっちでやる事あるでしょ!」
「え? いや、私の仕事はもう終わりで……」
「じゃぁ、私たちを手伝ってねぇ~。ごめんね前橋君」
「いや、私は前橋君の手伝いを……」
「「問答無用!」」
「な、なんでぇぇぇぇぇ~!!」
行ってしまった。
なんだ、あっちも忙しかったんじゃないか。
まぁ、文化祭の準備も終盤だし仕方ないか。
みんな忙しいしんだな、仕方ないここは俺一人でなんとかするか……。
*
文化祭、それは学生にとっての大きなイベントの一つ。
この学校の文化祭は規模も学生の力の入れようも他の学校とは比べ物にならないと有名だ。
毎年テレビ局が取材にくるほどで、学生達は他のクラスに負けないよう力を入れる。
「はぁ……」
「どうしたの? 井宮さん、さっきからため息多いけど……」
「え? あぁ、なんでもないわ。ごめんね、気を使わせて」
調理室でメニューのおさらいをしながら、私はクラスメイトの高城さんと話しをしていた。
私も高城さんもお世辞にもちゃんと料理が出来る訳ではないので、料理の特異な美佳に教えて貰ているところだった。
宿泊学習が終ってから、私は高城さんと一緒に居ることが増えた。
まぁ、それは高城さんの好きな人物を私が知っていて、形式上その恋を応援しているからなのだけど……。
「そう言えば前橋君と何かあったの? なんか最近あんまり話してないけど」
「そ、そんな事ないわよ」
これは話すべきなのだろうか?
まさか、あの拗らせイケメンがアイドルまで落としているなんて……。
しかも相手はもう前橋に自分の気持ちを伝えているうえにかなり積極的。
私としてはこれ以上ライバルが増えるのは嫌だけど、高城さんには応援するって行っちゃったし。
「じ、実はね……」
やっぱり隠し事はフェアじゃないわ!
私はただでさえ自分の気持ちを高城さんに伝えて無いんだし、ここはこの間の出来事を高城さんにちゃんと話しておこう。
私はこの前のファミレスでの出来事を高城さんに話した。
「えぇ!? あ、あのアイドルの宮河真奈が!?」
「えぇ、目の前で聞いたから本当だと思う。それにあの様子……間違いなくあいつに気があるわ」
「そ、そうだったんだ……」
不安気な表情を浮かべる高城さん。
まぁ、それもそうよね。
アイドルがライバルなんて勝てるきがしないわ。
でも、高城さんも容姿なら宮河真奈に負けてはいない気がするし、あいつも顔で人を判断するような奴じゃない。
まだ希望はあると思う。
「で、でも所詮アイドルよ! どうせ色々な男をとっかえひっかえしてるのよ!」
「でも、ライバルには代わりないよ」
「ま、まぁそうだけど……」
ヤバイは励まそうとしたのに失敗しちゃった。
「大丈夫! 高城さんも可愛いから!」
精一杯考えて出た言葉がこれかぁ……私ってもしかして口下手なのかしら?
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