第124話 文化祭編13
✱
文化祭の準備は滞りなく進んでいた。
各自衣装を決め、英司が衣装を発注し、女子はメニューを考え、男子は当日用の小道具や内装用の飾りを作っていた。
「お前、何の格好すんの?」
「あぁ、適当にドラキュラにした、そこまで恥ずかしい格好じゃないし」
「マジかよ、俺なんてピカ○ューだぜ? 全身黄色に塗って」
「お前体は貼りすぎじゃね?」
文化祭の準備は佳境に入っていた。
みんななんだか浮足立っていて、クラス内ではいい感じの男女のカップルができつつあったのだが……。
「重くないか? 俺が持つよ」
「あ、ありがとう……」
「小麦粉か? そういえばホットケーキ出すって言ってたもんな」
「うん、でも私下手だから上手く出来るか心配で……」
「そ、それなら俺が練習付き合うけど」
「え!? 良いの?」
「あぁ、全然! 俺大食いだからいくらでも……」
「そうか、そうか、なら俺たちと大食いラーメン食べにいこうぜ〜」
「大食いなんだよなぁ〜?」
「え!? いや、俺はあの子と!!」
「じゃぁ、一緒にいこうーなー」
「ま、待て! あ、ちょっと! うわぁぁあ!!」
このように、他の男子からの嫉妬をかい、女子と引き離された挙げ句、モテない男子からの制裁を受けるという不毛な連鎖が生み出されていた。
「よくやるな……」
そのため、俺たちのクラスで男女のカップルが出来るなんて甘い展開はなく。
それどころか男子は抜け駆けするやつがいないかを殺気だって監視していた。
ま、俺はモテないから制裁の対象にはならないけど。
「おかしい、文化祭の準備中は男女で距離が近くなって恋人ができやすいって書いてあったのに」
「なんで俺たちには一切彼女ができないんだ!!」
全部自業自得だと思う。
というか、こいつらアホだろ。
そんな男子の様子を女子も見ているからか、全く男にときめく女子も現れない。
「漫画やアニメの文化祭とはやっぱり違うもんだな」
「当たり前だろ? 何を言ってんだよ」
俺は今、英司とともに文化祭で使用する大道具を制作していた。
ベニヤ板と角材を釘で打ち付け、ペンキで色を塗っていく。
「文化祭はもっとカップルが出来ると思っていたが、そうでも無いんだな」
「当たり前だろ? そんな奴ら俺が叩き潰してやる」
「諸悪の根源がここに居るな」
「人の不幸って面白いよな?」
「俺、お前と友達で良いのか不安になってきた」
そんな話をしながら準備を続けていると、井宮と高城が材料を持ってきてくれた。
「はい、追加の材料持ってきたわよ」
「あぁ、ありがとう井宮」
「別に……」
井宮は川宮さんと出会ってからなんだか機嫌が悪い。
機嫌が悪いので話掛けても「うん」「あっそ」としか言わない。
そっとしておこうと思って、話掛けないでいると今度はあっちから電話がかかってきたりするのでどうしようもない。
一体どうしたんだ?
「高城もありがとう」
「う、うん……じゃ、じゃぁ私達戻るね」
「お、おう」
高城の様子も最近おかしい。
なんというか、俺と距離を取っている。
おかしいな、俺高城に何かした記憶がないんだが?
宿泊学習で真実をしり、結構良い関係を築けていたと思ったのだが……。
「おいおい、なんだよ井宮と高城と何かあったのか?」
「嬉しそうな顔で言うなよ。俺は別に何かした記憶はないんだけどな……」
まぁ、そのうち機嫌も直るだろう。
なんてことを考えながら、俺は釘を打つ。
「おい笹原! また異端者が現れたぞ!」
「何!? 直ぐに向かう! 制裁の準備をしておけ!!」
「おう! 任せろ」
どうやらまた一人犠牲者が出たらしい。
可哀想に……。
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