第120話 文化祭編09

「はぁ? なんでだよ?」


「なんでもないわよ。それより、アンタ早いとこ着るもの決めないととんでもないの着させられるわよ」


 確かにそれはある。

 なんか知らないけどこいつら、俺に何を着せるかで盛り上がってやがる。

 あれか?

 勝負の切っ掛けを作ったのが俺だから、責任持って勝てるようなコスプレをしろってことか?


「んな事言っても何を着れば良いのか全然わかんねーしなぁ」


「じゃ、じゃぁ私が選んであげようか?」


「え? マジ? それは楽で良いな。お前なら変な衣装も持ってこないだろうし」


「じゃ、じゃぁ今日放課後一緒にお店行きましょうよ、そこで選んで上げるから」


「コスプレの専門ショップってやつか……なら英司も一緒に連れて行くか? あいつその手の店には詳しいから」


 なんでか知らないけど、英司はそう言った店には詳しい。

 今回のこのコスプレ喫茶の衣装の仕入れも全部あいつがやっている。

 希望する衣装がある場合はカタログまで持ってきてくれるらしい。


「私は良いけど……笹原ならあっちで死にそうになってるけど」


「え?」


 井宮の言葉を聞き英司の方を見ると、何故か分からないがぼろ雑巾のようになって床に転がっていた。

 一体何があったのだろうか?

 右手にきわどい女性用のコスプレ衣装のカタログが握られており、女子が英司をゴミを見るような目で見ているところをみるとだいたい想像は出来る。


「あぁ、いつもの光景じゃないか」


「そんな爽やかな顔で言わないでくれる」


「しかし、あいつはもうダメだろう。早く葬儀屋を手配してやらないといけないな。仕方ない、放課後は二人で行くか」


「いや、多分笹原まだ死んでないわよ」


 そんなこんなで俺は井宮とコスプレの衣装を買いに行くことになった。

 放課後、俺は井宮と共に街中にあるコスプレ衣装専用のショップにやって来た。

 

「こういう店来るの初めてなんだよなぁ……少し緊張する」


「私は何回か来たことあるわよ」


「マジか! お前まさかコスプレイヤーにでもなろうなんて考えたのか?」


「ま、まぁ昔は……」


「そうだったのか……でもなんでやめたんだ?」


「いや、その……そう言うの好きな友達居なかったし、一人でする勇気なかったし……」


「あぁ……まぁそう言うもんだよな」


 自分のコスプレ姿を他人に見せるのは結構勇気の居ることだ。

 しかも誰かと一緒にするんだったら、やりやすいかもしれないが、一人になるとやる前から諦めてしまうことの方が多いだろう。


「それに中学生のお小遣いじゃ、コスプレ衣装なんて買えないわよ」


「まぁ、確かにな……でもお前の家なら買うだけの小遣いくれそうだけどな」


「親にコスプレ衣装買うからお金頂戴なんて言えないでしょ? ほら入るわよ」


 そう言って井宮と俺は店の中に入っていった。

 中はなんというか、普通のアパレルショップよりも狭く、商品が数多く並んでいるかんじだ。

 通路が狭く、試着室もあまり多くはない。

 まぁ、その代わりお客さんも俺達以外は居ないのだが。


「へぇ~色々あるのね」


「ナースに巫女にメイド服、定番だな」


「うわっ……なにこの衣装、きわどいわねぇ……」


「あ、ふんどしあった」


「あんた、マジでそれだけはやめなさいよ」


「着る訳ねぇだろ!」


 二人で衣装をしばらく見ているとお互いに似合いそうなのを見つけ、相手に渡し試着してみることになった。


「おい、井宮」


「なによ」


「これ……どこの高校の制服だ?」


「え? あぁ私がハマってた漫画の高校の制服、あったから」


「いや、あったからじゃねぇよ、なんで別な高校の制服来て接客しなきゃいけないんだよ」


「これも立派なコスプレでしょ?」


「ただ制服が変わっただけのような……」

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