第118話 文化祭編07

「見えなかった」


 まぁ、嘘でも見えなかったって言ったほうが高城は安心するだろう。

 知らぬが仏って言葉もあるし。


「そ、そっか……な、ならいいや」


 すまん高城、ばっちり見ちまったけど、なんとか努力して忘れるから……。

 その後、俺たちは買い出しを済ませて学校に戻った。

 学校では他のクラスの奴らも出店の準備や文化祭の出し物で忙しそうにしていた。


「なんかいいね、こういう空気。お祭り前って感じで」


「そうか?」


 俺は正直さっさと帰ってゲームをしたいんだが……。

 クラスに帰ってくると、なんだか騒がしくなっていた。

 一体何があったのだろうか?

 俺は静かに教室のドアを開けて中に入った。


「面白い、今回も俺たちが勝つからな!」


「ふっ、せいぜいあがいてくれよ」


 なんだ?

 池内と誰かが教室で話してるぞ?

 あれ?

 確かあいつって三組のイケメン……。


「おっと、やっと帰ってきたんだね……僕の永遠のライバル!!」


 うわぁ……こんな教室の真ん中で恥ずかしいセリフ吐かれてるよぉ……ぷぷー。

 誰だよ、このイケメンの永遠のライバルって。

 九条か?

 にしても可哀想だなぁ~みんな注目してんじゃん。

 ………あれ?

 なんか皆、俺の事見てない?


「会いたかったよ……前橋君!」


 おいおい呼ばれてるぞ前橋君。

 早くこいつに答えてやってくれよ。

 ………あ、前橋って俺だ。


「えっと……誰だっけ?」


「ふふ、忘れてしまったのかい? 宿泊学習で君と熾烈な戦いを繰り広げた最上吉秋を!!」


「………誰だっけ?」


「ふふ、とぼけても無駄さ! 僕の永遠のライバルよ!」


 いや、これ以上ライバル要らねねーし。

 あぁ、思い出した。

 こいつ確か、この前の宿泊学習で三組の大将やってたイケメンか。

 一体なんの用なんだ?


「本当は君に戦線布告に来たんだけど、留守見たいだったからね、君の代わりに池内君と話をしていたのさ」


「宣戦布告? なにその面倒な話し」


 うわぁ……絶対嫌な予感がするぅ……。


「ふっふっふ。君は知っているかな? うちの学園祭は来場者にアンケートを記入して貰っていて、どのクラスが一番良い出し物をしたかを点数をつけてランキングにするんだ」


「あぁ、そうなの」


 全然興味ないから知らなかった。

 

「学校全体を通しての総合優勝、学年事に一位だったクラスに送られる学年別賞、大きく分けてその二つの賞があるんだ」


「へー」


 早くこいつの話し終らないかなぁー、そろそろ帰りたいし。


「そこで、今回はこの学園祭で僕たち三組と君達二組でどちらが多くポイントを取れるか勝負と行こうじゃないか!」


「望むところだ!」


「いや、なんで池内が答えるんだよ」


 はぁ……こいつら勝負好きだなぁー、クラスの連中もなんかやる気になってるし。


「望むところ三組になんか負けないわ!」


「今回も俺達が勝つぜ!」


「なんたってコッチには前橋がいるんだ!」


「はぁ……前橋君……君はどうして前橋君なんだい? はぁ……はぁ……」


 うっ!!

 なんだろう?

 今なんだか悪寒が……。

 てか、何?

 勝負する流れなの?

 別に良いじゃん、普通に学園祭を楽しめば。

 こんな面倒な勝負とかになったら、皆やる気だして、俺だけやる気無いと絶対いじめられるじゃん!


「ふっ! 君ならそう言うと思っていたよ永遠のライバル!」


「いや、それ言ったの池内な」


「前橋! みんなで協力して三組を倒そう!」


「なんでだよ、面倒臭い」


 何のメリットもないのに勝負なんて下って仕方ないだろ。

 全くこいつらは何を考えてるんだ?


「ちなみに負けた方が勝ったクラスの文化祭の出し物の後かたずけをするってのはどうだい?」


「なに!?」


 文化祭の後かたずけは文化祭最終日の翌日、つまり日曜日に来て行うことになっている。

 折角の日曜日なのに後かたずけだけで学校に来るのは嫌だったんだよなぁ~。

 もし俺たちが勝てば、その日は丸々休みな上に振り替え休日もある!

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