第115話 文化祭編04
*
「ねぇ圭司君」
「なんでしょうか・・・・・・」
「なんで私のメッセージ既読無視したの?」
「いや、学校だったんで・・・・・・」
放課後、事務所に行くとそこにはどす黒いオーラを放った川宮さんが仁王立ちで俺を待っていた。
なんか怒っているようだが、既読無視した事がそんなに悪かったのだろうか?
「それで? もう一回私とご飯に行けない理由を言ってみて」
「え? あぁ、漫画の新刊が出まして」
「うん」
「早く読みたいのでお断りします」
「なんで?」
「だから、漫画の新刊が・・・・・・」
「じゃなくて! なんで女の子の誘いを断って、漫画を読むの! いつでも読めるでしょ!!」
「いや、四ヶ月ぶりの新刊なんで・・・・・・」
「新刊でもなんでも、そんなの私とご飯食べてから見れば良いでしょ!!」
おかしい、なんで俺はここまで怒られているんだ?
やっぱり既読無視がいけなかったのか?
漫画の為に女子との食事を断るのは普通だしなぁ・・・・・・。
「もう、罰として今日は私の家でご飯を食べなさい!」
「えぇ・・・・・・」
「嫌そうな顔しないの!」
はぁ・・・・・・ただでさえ事務所関係で忙しい上に、文化祭の準備で明日から忙しくなるのに・・・・・・貴重な放課後がどんどん潰れていく。
「良いわねえ~青春って感じで」
「あ、マネージャーさん聞いて下さいよ! 圭司君が!」
俺と川宮さんが話しをしていると、俺たちのマネージャーである岡島さんがやってきた。
「うふふ、仲が良いの良いけど。週刊誌にリークとかされないでね、もう庇い切れないから」
「それは気を付けてます。でも川宮さんが・・・・・・」
「圭司君がいけないんでしょ! せっかく誘ってるのに!」
「まぁまぁ、落ち着いて。二人とも、CMの撮影日が決まったからこれに目を通しておいて」
「はぁ・・・・・・」
俺は渡された資料を見た。
細かく商品の説明やコンセプトが書かれており、それに咥えてCMがどのように撮影されるのかが資料に記載されていた。
「何か聞きたいことはあるかしら?」
「あの一つ良いですか?」
「あら、圭司君何かしら?」
「ここのキスするって書かれてるところなんですけど・・・・・・本当にするわけじゃないですよね?」
資料を読んでいて、ラストのシーンのところに大きく「ここでキス!!」と書かれていた。
いや、俺だって別に健全な男の子だから、女子とのキスが嫌な訳じゃ無いよ?
でもね、色々な人に見られながらとか絶対嫌ってだけ。
だって・・・・・・恥ずかしいし・・・・・・。
「あぁ、大丈夫よ、ここはフリで良いわ。カメラにも口元は写らないから」
「そうですか、なら安心です」
「ふーん・・・・・・私とちゅーは嫌なんだ」
「いえ、別にそう言うわけでは・・・・・・」
「じゃぁ、本番で私が本当にキスしたら・・・・・・どうする?」
小悪魔のような笑みを浮かべながら川宮さんは俺にそう尋ねてくる。
「え? いや突き飛ばしますけど」
「あーそうよねー、そう言う子よねー、期待した私が馬鹿だった-」
当たり前だ。
急に唇を奪われたら、誰だってその相手を突き飛ばす。
ビックリしちゃうしな。
「そこは本人達に任せるけど、当日はよろしくね。それじゃぁ今日はこれで終わりだから、気を付けて帰るのよ」
岡島さんのその言葉でその日は解散になった。
帰り道、俺はまだストーカー被害が心配だというので、川宮さんを自宅まで送っていた。
「え? 文化祭?」
「はい、うちは再来週で」
「そうなんだ。休みだったら覗きにいこうかな~」
「やめて下さい、貴方が来たら騒ぎになります」
しかも俺に会いに来たなんて言い出したら、いよいよ俺は英司に殺されかねない・・・・・・。
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