第112話 文化祭編01



 夏休み前最後の行事、それは俺に取っては面倒な行事以外のなにものでも無かった。


「というわけで、文化祭だ」


 ホームルームの時間、黒板の前に立った先生が俺たちクラスに向かってそういう。

 俺は先生の話を聞いている振りしてスマホを弄っていた。

 大体リアルの文化祭なんて面白くもなんともない、漫画やアニメの世界のように自由に生徒が企画してということは不可能だ、なんらかの規制がある。

 それにこういう時にカップルがどんどん量産され、夏休みに一線を超える奴らが続出する。

 そんな破廉恥極まりない行事に不細工の俺が一生懸命参加なんてすると思うだろうか?

 答えは簡単だ、文化祭の出し物は仮眠スペースとかにして、俺は当日学校に登校だけして空き教室でゲームをしていたい。

 なので、文化祭の出し物はなんとしてでも仮眠スペースになってもらいたい。


「こっからはクラス委員に任せるぞ、お前ら意見だせよー」


「「「はーい」」」


 俺は信じているぞ、きっとこのクラスのみんなは俺のようにやる気がない。

 だからきっと仮眠スペースという出し物に決まると。

 まぁ、俺は面倒なので意見など言う気は無いが……。


「それじゃぁ、今から出し物を決めるけど何か意見あるかな?」


 黒板の前に先生と変わって池内が立つ。

 あいつって、クラス委員だったのか……。

 すると、英司が手を上げて意見を言う。


「水着喫茶なんてど……」


「「「「却下!!」」」」


「まだ最後まで言ってないだろ!!」


 速攻で女子に却下されていた。

 まぁ、水着喫茶なんて学校の意見がそもそも降りるわけがない。

 あの馬鹿は何を期待してるんだ?

 なんてことを考えていると、今度は野球部エースと名高い、このクラスの陽キャ集団のトップ、八代が意見を言い始める。


「じゃぁ、焼きそば屋とかどうだ? ホットプレートで作れるし、材料費だってそこまでかからねぇんじゃねぇか?」


「確かにそうだな、俺も焼きそば好きだし」


「八代の割には意外とまともな意見ね」


 意外と好評だった。

 あいつ、やっぱり陽キャの中心に居るだけあるな、クラスの奴らの心を掴み掛けたぞ。

 そんなことを考えていると、今度は九条が手を上げる。


「まてまて、それならくじ引きとか射的の方が楽でいいんじゃないか? 集客だって見込める。それに焼きそばは外の屋台でやれば集客出来るが、先輩の話だと学校外の屋台は三年生が占領して二年生以下の学年は使わせてもらえないらしいぞ」


「そうなの?」


「あぁ、でも焼きそばって外で買うから美味しい気がするね」


 九条も流石はイケメン、自分の人脈を使って既に簡単なリサーチを済ませている。


「室内、しかも教室でも出来て、集客も出来るのはくじ引きや射的だ。費用だってそんなにかからないし、射的用のエアガンはサバイバルゲーム部の平岡が喜んで貸してくれるらしい」


「ふっ……ついに俺のコレクションを披露するときがきたな!」


 誰だ平岡って?

 まぁ、でも確かにそれなら準備も楽だし、調理をしなくていいから片付けも簡単だな。

 遊ぶことに関してはコイツら真剣に色々考えるんだな。

 そんなことを俺が考えていると、またしても英司が立ち上がり意気揚々と発言をする。


「それならやっぱりメ………」


「「「「絶対いや!!」」」」


「だからまだ何も言ってねぇだろ!!」


「うるさいわねぇ、どうせメイド喫茶とか言うんでしょ?」


「うっ……ま、まぁそうだけど!!」


 そうならもう黙っとけよ。

 もう嫌だって女子全員に言われてんじゃん。

 

「でも、お前だってみたいだろ? 女子のメイド服姿? なぁ圭司?」


「え?」


 いや、なんで俺に話を降る!?

 こいつ、仲間を作ろとして俺を巻き込みやがった!!

 

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