第108話 料理とは?

「このパソコン、絶対高いだろ」


「まぁまぁよ」


「いや、絶対20万近いだろ」


「まぁそうね、ベッドでゲームするのに買ったのよ」


「どんな理由だよ」


 俺なんて小遣い溜めて買ったセール品のゲーミングパソコンだぞ。

 このパソコンなんて、俺のデスクトップよりも高いし。


「よし、ログイン完了、おぉなんか心なしかいつもよりぬるぬる動く」


「同じでしょ?」


「いや、メモリもグラボも倍近い性能だからな」


「なんでも良いけど早く私の居る所まで来て、早く周回始めましょ」


「へいへい」


 いつも使っているパソコンよりも各段にスペックの高いパソコンを使い、俺は井宮とゲームを始めた。

 

「あ、馬鹿! なんで死んでるのよ!」


「悪い、いつも使ってる奴じゃないから操作ミスった」


「早く慣れてよ」


「分かってるよ」


 慣れないパソコンを何とか扱いながら、俺は井宮とイベントを周回する。

 やはり、いつもの電話よりも互いに状況が分かりやすく、効率が良い。

 もっと早くにこの方法を取れば良かったのでは無いかと思うほど、今日のイベント周回は効率良く進んだ。


「武器出た?」


「あぁ、俺は三個出た、まぁもう十分かな」


「そうね、私も4個出たし十分よ」


「はぁぁ~! 疲れたぁ……今何時だ?」


「もう14時ね」


「どうりで腹が減るはずだ」


「何か食べる?」


「俺が持ってきたスナック菓子で良いんじゃね?」


「そんな物食べると太るでしょ、仕方ないわね……私が準備してあげるわよ」


「あぁ、いや出前とかそう言うのは良いぞ? 気を使わないでくれ」


「何言ってるの?」


「え?」


「私が作るのよ」


「………井宮、お前の作る料理は……その……食えるのか?」


「アンタ、私に殴られたいの? それとも蹴られたいの?」


 だって、井宮と料理とか接点が無さ過ぎて怖い。

 高城だったら料理得意そうなイメージあるから、なんか安心出来るけど、井宮が料理するってなると、なんだか不安になる。

 だって、見た目がギャルで中身ゲーマーだぞ?

 そんな奴が料理出来ると思うか?

 

「じゃぁ、俺カップ麺で良い」


「うちにそんな物無いわよ、良いから待ってなさい」


「じゃ、じゃぁコンビニに食える物を買いに行こう!」


「なんで私が作った物は食べられ無いみたいになってるのよ」


「だってお前が料理出来る訳ないだろ! 自分のキャラを考えろ!」


「分かったわ」


「ぐはっ!」


 殴られた。

 しかも腹を……。

 しかもグーで……女の子がグーパンとかしないで……。

 俺はそのままベッドにもたれ掛る感じで倒れた。

 

「まったく、そこで動画でも見て待ってなさい」


「は……はい……」


 俺は井宮の言う通り、井宮の部屋で料理が出来るのを待った。

 待っている間暇だったので、俺は毒を食べてしまった時の対処方についての動画を見ていた。


「なるほど……毒を抜く事が大切なのか……」


「アンタ何の動画見てるのよ……」


「毒の抜き方について学んでる」


「毒なんて入れないわよ!」


「ひっ!!」


 井宮はそう言いながら、俺の目の前にオムライスを出す。


「食べて見なさいよ!」


「……見た目は悪くないですね……」


「良いから食べなさいよ!」


「わ、分かった……」


 見た目は良い、しかし騙されてはいけない。

 見た目が良くても中身がダメな場合もある。

 俺はスプーンを手に持ち、オムライスをすくう。


「あむ………もぐもぐ……」


「ど、どうよ?」


「ん?」


「ど、どうなのよ?」


「んん!?」


「いや、さっさと飲み込みなさいよ!」


「………え? なんで? 美味っ……」


「どんだけ溜めるのよ……まったく、だから言ったでしょ?」


「あぁ、美味い。まさか食べられる物を通り越して美味い物が出て来るとは……これは奇跡か」


「普通に私の料理の腕を褒めなさいよ……」

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