第107話 女子の部屋って良い香り

 あぁこのまま俺は始めてをこのアイドルに奪われてしまうのだろうか……。

 そんな事を思っていた時、突然エレベーターが動き出した。

 

「あ、動いた」


「っち……」


「あの、今舌打ちしました?」


「何言ってるの? 私がそんな事をするわけないでしょ?」


「いやでも……」


「あ、そうだ今日私の家に寄ってかない? 美味しいお菓子を持っらってね」


「そんな事してたらまた写真撮られますよ?」


「じゃぁ決定ね! さぁ行こ!」


 川宮さんはそう言って俺の腕を引っ張ってくる。

 俺の話しを聞いて欲しいのだが……。





 土曜日の朝、俺はスマホの地図アプリを見ながら住宅街を歩いていた。


「えっと……この辺りだよな?」


 井宮から家の住所を教えてもらい、俺は井宮の家に向かっているのだが、少し緊張していた。

 友達の家に行くなんて、俺にとっては久しぶりの出来事だし、しかも女の子の家だ、緊張しないわけが無い。


「ここか……デカいな」


 有名な高級住宅街に井宮の家はあった。

 俺の家の倍はありそうな敷地に、ガレージまである。

 もしかして井宮の家って金持ちなのか?

 なんて事を考えながら、俺は家のインターホンを鳴らす。


『はーい?』


「あぁ、俺だけど」


『あ、今開けるから待ってて』


 直ぐに井宮がやってきて戸を開けてくれた。


「い、いらっしゃい」


「おう、あぁこれ色々買ってきたぞ」


「あ、ありがとう……って、スナック菓子とエナジードリンクじゃない!」


「ゲームやるときはこれだろ?」


 俺のゲームやるときのお決まりセットだ。

 流石に手ぶらだと気が引けるからな。


「センスの無いお土産ねー」


「うっせ! 良いだろゲームするだけだし」


「そうだけどさー、女の子の家に来るのにあの手土産はどうなの?」


「最高じゃね?」


「私はエナジードリンクは飲まないわよ、太るでしょ? お菓子もそこまで食べないわよ」


「まじで?」


 ゲーマーは皆エナジードリンクとスナック菓子が大好物だと思っていたが……まさか井宮がそうではないとは……。

 家の中に入り、俺たちは二階の井宮の部屋に向かう。


「お前の家って広いのな」


「そうかしら?」


「親御さんは何をしてるんだ?」


「さぁ? あんまり聞いたことないわ、医者だってことは聞いてるけど」


「なるほど……」


 話をしているうちに井宮の部屋の前に到着する。


「あんまり部屋の中じろじろ見ないでよ?」


「モニターしか見る気はない」


「……あっそ」


 ん? 

 俺なんか間違った事言ったか?

 俺がそう言うと井宮はなんだか若干機嫌を悪くしてしまった。

 まぁ、いいやどうせ直ぐに機嫌直すだろう。

 井宮の部屋は女子らしい可愛らしい部屋だった。

 しかし、そんな部屋の中にはしっかりと最新ゲーム機とモニター、そして机の上にゲーミングPCが置かれていた。

 

「マジか……お前すげーなこのパソコン!! 俺の安物とは大違いだ!」


「食いつくのはそこなの?」


「なぁなぁ、このパソコンCPUは? メモリは何ギガ? グラボって何?」


「女子の部屋に入って開口一番に聞くのがパソコンのスペックって……」


 なぜか呆れている井宮。

 俺何かしただろうか?

 それにしても本当に良いパソコンだな……てか、俺の部屋の二倍くらい広さあるしシンプルに羨ましいなぁ……。


「アンタはこっちのノーパソ使って、机はそれ使って良いから、後これ座椅子」


「おう、悪いな。じゃぁ早速しようぜ!」


「……部屋に入れてこの反応は女子として凹むべきかしら?」


 さっきからこいつは何をブツブツ言っているんだ? 

 俺は井宮の独り言が気になりつつもゲームの準備を始める。

 しかし、女子の部屋とは良い香がするものだな、しかも気のせいかなんだか明るく感じる。

 












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