第102話 もう既に好きな場合は?
「いや、助けて貰ったお礼っていうか……」
「そういうのは逆に困るのでやめてください」
なんでこの人は俺にキスを迫ってくる。
そしてそろそろ離れてくれ、身動きが取れない上に俺の息子が男の本能を目覚めさせようとしている。
「えへへ〜、こんなに誰かと一緒に居たいと思ったの生まれて始めてかも……」
「それは光栄なことですけど、早く離れてもらえませんか? もうそろそろ限界なので」
「何が?」
そんなの言える訳がない。
いたずらっぽい笑みを浮かべながら川宮さんは俺に抱きついたまま、俺の腹に顔をこすりつけ始める。
「意外とがっちりしてるんだねぇ〜」
「あのいい加減にしませんか? そろそろセクハラで訴えますよ」
「あぁ、それは嫌だなぁ〜仕方ない、今日は離れてあげよう」
川宮さんはそう言って俺から離れ、頬を赤く染めながらニコッと笑う。
「からかうのはやめてもらえませんか? 俺みたいなモテない男は勘違いしますんで」
「じゃぁちょうど良いや、勘違いして私のことを好きになってよ」
「え?」
何を言って言るんだこの大人気アイドルは……。
俺みたいな不細工にモテても良いことなんて何もないぞ、将来大金持ちになる予定も無いし……ま、まさか川宮さんって……ブス専!?
「まじか……可哀想っすねそんなに可愛いのに……」
「あれぇ〜? なんか可愛いって言われて嬉しいはずなのに、なんか馬鹿にされた気がしたんだけど?」
「いえ、俺は馬鹿になんてしてません。川宮さんがブス専の可哀想な人だと思っているだけです」
「それを世間では馬鹿にしてるって言うんだよぉ〜?」
川宮さんはそう言いながら額に青筋を浮かべていた。
まずい、本当に怒っているようだ……いや、俺は別に悪気はないんだが……。
謝って許して貰えるかな?
というか俺はもういい加減に帰りたいんだが。
「すいません、何でもするんで許してください」
「え? なんでも?」
「はっ! しまった!!」
俺はあまりの川宮さんの圧の強さにビビりそんなことを言ってしまった。
しかし、言った後で気がついた。
なんでもする、その言葉を甘く見ては行けない。
何でもするということは文字通りどんなことでも相手に命令されればやらなければいけない。
いつもなら絶対にそんな軽率な約束をしないのに、俺は早く帰りたいこともあってそんな言葉を口走ってしまった。
「いえ、これは違うんです!」
「ん〜何でもかぁ〜どうしようかなぁ〜」
や、やばい……川宮さんの顔がすごく悪い顔に鳴っていく。
まるで新しいおもちゃを見つけた小悪魔のようだ。
ど、どうしよう……私の奴隷になりなさい!
なんて言われたら……一部の特殊な変態は喜ぶかもしれんが、生憎俺にそんな変な趣味は無い。
「じゃぁ……私の事好きになってよ」
「え?」
「………そしたら許してあげる」
どういう意味だ?
てかそれはお願いなのか?
俺は川宮さんの思いがけないお願いに若干驚きつつも、内心では助かったなんて思っていた。
てか、別に俺は川宮さんのことを嫌いじゃないのだが?
どっちかって言うと既に……。
「あの、もう好きな場合はどうしたら良いでしょうか?」
「えぇぇ!?」
俺がそう言うと川宮さんは顔を真っ赤にして声を上げて驚いた。
いや、そこまで驚かなくても……。
まぁ色々合ったけど、川宮さんはなんだかんだ言って優しいし、全然嫌いじゃない。
俺みたいな不細工とも仲良くしてくれるところを考えると、普通に人として好きなのだが、そういう場合このお願いはどうなるのだろうか?
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