第101話 潜入!初めての女子の部屋


「ここが私の部屋……」


「じゃぁ、お邪魔します」


 俺は川宮さんに言われて、川宮さんの一人暮らしの部屋にやって来た。

 流石はアイドル、オートロック付きの良いマンションに住んでる。

 高校生がこんなところで一人暮らしなんて贅沢だなぁ……俺もこのクラスのマンションに住めるくらい稼げるかな?

 なんてことを考えながら部屋に入ると、玄関先で突然川宮さんが俺に抱きついてきた。


「え!? あ、あの……なんですか……これ……」


「ごめんね……でも少しだけこうさせて……」


 なんだ、この状況は……今俺は大人気アイドルである宮河真奈の自宅にお邪魔し、玄関先でそのアイドル様に抱きつかれている。

 あれか? 

 ストーカーの恐怖から解放されて急に今までの事を思い出して怖くなったのか?

 まぁ、それなら分からない事もないし、少しくらい胸を貸すのも良いだろう……腹の辺りにも丁度いい感じに柔らかい触感があるし……。


「あの……不安だったのは分かりますけど、アイドルが軽率に男にしていいことじゃないと思いますよ?」


「……圭司君のせいじゃん」


「え? なんで?」


 いきなり俺のせいにしてきたぞこのアイドル。

 身に覚えのない罪を着せられた気分だ。

 しかし、そうは言うものの川宮さんは一向に俺から離れようとしない。


「あの……そろそろ離れてもらえません?」


「いや」


「なんで!?」


 あれ?

 この人ってこんなキャラだっけ?

 そんな事を考えていると、俺に抱きついたまま川宮さんが俺の顔を見上げてくる。


「圭司君はさ……なんで自然に私がしてほしい事をしてくれるの?」


「え? いや……そんな事をしたつもり無いんですけど……」


「まぁ、なんでもいいや……ねぇ」


「はい?」


「ちゅーしてもいい?」


「あぁ、良いですよって違ぁぁぁう!! いきなり何とち狂った事を言ってんですか!!」


 そう言う彼女の頬はほんのり赤く染まっており、俺を抱きしめる力も強くなっていた。


「だってさ……危ないところを助けてくれて、私の事をちゃんと女の子として見てくれて……そんな色々私の為に頑張ってくれたら、好きになっちゃうよ」


「え? は? えぇぇぇぇぇ!?」


 もしかしたら今まで生きてきた人生で一番の驚きだったかもしれない。

 俺は今、大人気アイドルに告白された。

 しかも抱きつきながら……。

 いや、そんなわけない!

 そんな美味しい展開、この俺に起こるはずがない!!

 俺はギャルゲの主人公でもなければエロゲの主人公でもない!

 ただの不細工なゲームオタクだ!

 これは何かの罠に違いない!

 きっとあれだ、俺を事務所に入れるためのハニートラップだ!

 って、俺さっき自分で事務所入ったじゃん!!

 なんてセルフツッコミをしていると、川宮さんが自分の顔を俺の顔にどんどん近づけてくる。


「あぁぁぁぁ! ストップストップ!!」


「ん? 嫌だった?」


「いや、嫌とかそう言う話じゃなく。あなたは一体何をしようとしてんですか!!」


「好きな後輩の男の子にチューしようとしてたわ」


 え?

 何そのすごく言われてうれしいセリフ……。

 あぁ、なんなんだろう。

 この胸がキュンってなって締め付けられるような感覚。

 いや、待て!

 騙されるな俺!!

 俺は不細工だ、そしてモテない、そしてオタクだ!

 こんなモテる要素の一切ない俺がアイドルに好かれるなんてありえない、これは夢だ!

 そもそもアイドルはどっかのカッコいい俳優とか社長とかと付き合うものだ、俺なんかを相手にするわけがない。

 全く、俺も困ったものだこんな夢を見て……早く目を覚まそう。

 なんてことを考えていると、またしても川宮さんお顔が俺の顔に近づいて来る。


「いや、だから何してるの!!」


 俺はそう言いながら川宮さんを引きはがす。

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