第97話 彼女の責任感
「あのぉ~何かお困り事ですかぁ?」
あ、ダメだ。
話し方の時点でこの子と俺は合わないと瞬時に体が理解した。
こういう話し方をする女は大抵ビッチだ。
ヤバイ、俺の体が拒絶反応を示して鳥肌が立ってきた。
早くこのビッチの元から去らなければ。
「いや、別に……急ぐんで」
「えぇ~でも君、ここの生徒じゃないよねぇ?」
「あぁそうだ、だから職員室に急いでいかなければならない」
まぁ、絶対に行かないけど。
こういっておけばこの女も俺なんかに構わずさっさとどっかに……。
「じゃぁ、私は職員室まで案内してあげるよ!」
いらねぇ親切を振りまいてきたぞこのビッチ!!
「いや場所ならわかる、大丈夫だ」
まぁ嘘だけど。
「まぁまぁ、そう言わずに私についてきなよ~」
なんでだよ!
俺は思わずそう叫びたくなったが思いとどまった。
急にツッコみ入れてきたよこいつ、キモ!
とか思われたく無いし……ってか、川宮さんは一体どこに居るんだ!
俺は川宮さんに会いたいだけなのに!!
「まぁまぁ、案内してあげるからおいでよ~ついでに連絡先交換しよ!」
「なんでそうなる! バカ! 離せっ!」
あろう事かビッチは俺の腕を掴んできた。
俺がビッチの対応に困っていると今度は後ろから誰か違う別な人物がやって来た。
今度は一体誰だ?
そんな事を俺が思っていると、その人は俺の空いていたもう片方の腕を掴み、ぐいっと自分の方に引っ張って来た。
「ごめんなさい前橋君、待ちきれなかったかしら?」
「え? あぁ川宮さん」
「え? 何? 宮河さんの知り合い?」
「えぇ、そうなの。ちょっとお仕事で一緒になってね。それじゃあ行きましょうか」
「お、おう」
俺は宮河さんに助けられ、二人で校門まで歩き始めた。
さっきのビッチはぽかんとしながらその場に立ち尽くしていた。
「助かりました、ありがとうございます」
「全く、なんで圭司君が学校に居るんですか?」
「まぁ、色々あって……なんか昨日の電話とかも意味深で少し心配になりまして」
「そ、そうだったの……ありがとう」
俺がそう言うと川宮さんは顔を赤く染めながら俺にそう言う。
なんだ、熱いのかな?
まぁ、そんな事はどうでも良い、何か変わった事が無いか確認しないと。
「あの……何かありました?」
「え? なんで?」
「いや、なんかいつもより元気ないなって」
「そう? 私はいつも通りだけど?」
確かに彼女はいつも通りに見えた。
でもなんでだろうか?
雰囲気というか、彼女の感じがなんだか暗い気がした。
根拠もないし、確証も一切ないのだが、なんだかそんな気がした。
「何を言ってるの? そんなことないわよ、もしかして昨日の電話で心配かけちゃった?」
からかうようにそう言う川宮さん。
しかし、なんでだろうか。
一見なんともないように見える彼女の目がどこか悲しそうで、助けを求めている気がしたのはなんでだろうか?
*
まさか、学校まで圭司君が来るなんて思わなかった。
私を心配してここまで来るなんて考えても見なかったし、そもそも私を心配してくれていることに驚いた。
彼はそう言う人の心配とかはあまりしない人なのかなと思っていたけど、そうではなかったようだ。
でも、これ以上彼に迷惑はかけられない。
私の問題は私で解決しないと駄目な気がした。
「なんか、いつもより元気ないなって」
彼がそう言った瞬間、私はなんだか少し嬉しかった。
もしかしたら偶然かもしれない。
でも、彼は私がいつも通りの自分の演技をしている事に気が付いているのかもしれないと、勝手にそう思っていた。
そう、私はこれ以上に彼に迷惑を掛けないためにいつも通りの私を演じていた。
本当は彼に助けてほしかった、でもそれは彼も危険に巻き込んでしまう恐れがある。
だから私は、彼の前ではいつも通りで居ることに決めたのだ。
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