第96話 話を聞け

「なんだ、視線を感じるような……」


 校門前で人を待っているだけなのだが、そんなに怪しいか?

 俺がそんな事を考えていると、警備員の一人が校門の方から俺の元にやって来た。

 まさか、あれか?

 さっきから校門前でウロウロしてたから流石に怪しまれたか?


「君……」


「え? あ……えっと……」


 ま、まずい……うまいこと言わないとなんかややこしくなりそうだぞ!

 そんな事を考えながら俺を焦っていると、警備員さんは笑いながら俺にこういった。


「君かい? きょう夕方に来るって言ってた転入生は?」


「え?」


「あ、もしかして警備員なんかいるからびっくりした? 君みたいな有名人が多い学校だからねぇ、これぐらいの警備はね。ささ、早くあそこで入場手続きをしてくれ」


「え? いや、俺は……」


 違うと言いたいのだが、知らない人に対してあまりコミュ力を発揮できないゲーマーの俺。

 クラス奴とか学校の奴らと違うから、なんだか変に緊張してしまう。

 しかし、この警備員さんはどうやら俺を今日来る転入生と間違えているらしい。

 正直に言って人違いですって言わないと、警備員さんも困るだろうしなぁ……。

 てか、俺を見て有名人と間違えるなんて……今日来る転校生君はきっと芸人さんなんだろうな。

 

「あ、あの……た、多分人違いっす」


「え? いやいや、君みたい顔の子は中々居ないよ、この学校に転入手続きで来たんだろ?」


「いや、違います……俺は」


「え? 違うの? じゃぁあれか? うちに通ってるアイドルと同じドラマに出てる子とか? 打ち合わせをさせて欲しいってたまに来るんだよ」


「いや、まぁ近いけど違います。俺は……」


「あ、分かった! それじゃああれだ! 学校見学だろ? うちの学校は芸能人が良くお忍びで見学に来るからさぁ~」


 だめだ、この人全く俺の話を聞かない。

 なんでこう話しが通じないんだ。

 俺はただ中に居る川宮さんに会いたいだけなのに……。

 面倒だし、このまま中に入っちまおうかな?

てか、この学校はそんなに芸人さんが見学に来るのか?

 何その面白そうな学校、学際で漫才コーナーとかステージでやったら、一本番組作れるんじゃね?


「じゃぁ、これを首から掛けて、職員室に行ってね。そこで見学の手続きを済ませて」


「は、はぁ……」


 俺は言われるがままゲストと掛かれた札を受け取り、首から掛けて校内に入った。

 どうしたもんだろうか?

 川宮さんには校門前にて待つなんてメッセージを送っちゃったし……。

 このまま校内を探してみるか?

 いや、でもやっぱり俺だけ他の制服だからみんな俺を見てコソコソ話しをしてるなぁ。


「え? 何あの人、どこ事務所の俳優?」


「めっちゃイケメンじゃん! 私連絡先聞いてこようかな?」


「でも、テレビで見た事なくね? 売り出し中なのかな?」


「この業界、顔だけじゃやっていけないからなぁ……イケメン俳優でもパンイチくらいにならないと受けないし」


 やばい……遠くから美男美女の四人組が俺を見て何か話してる。

 あれか?

 俺の顔を見て『え~あんな顔で生きていけるのぉ? マジありえない』とか『あんな顔に生まれるくらいなら俺は死を選ぶな』とか言ってるのか?

 すいませんねぇ、俺の顔が醜くて。

 俺だってあんたらみたいな綺麗な顔に生まれたかったよ!!

 

「あのぉ……」


「え? っと……だれ?」


 俺がそんな事を考えながらあるいていると、一人の女子生徒から話掛けられた。

 流石は芸能コースのある学校だ、かなり可愛い子が声をかけてきた。

 茶髪に短いスカート、それに腕にはシュシュを巻いている。

 見るからに俺が嫌いなタイプのギャルっぽい子だ。

 まぁでも井宮はあんな見た目だけど良い奴だし、もしかしたらこの子も見た目だけこんなんなのかもしれない。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る