第93話 視線の正体とは
「誰かに見られてる気はしましたね」
『……そう』
俺は正直にそう言った。
あのデートからその視線を感じていたし。
もしかしたら、その視線の正体が川宮さんのこの話に関係あるのかもしれないとそう思ったからだ。
「何かあったんですか?」
『う、ううん! 大丈夫! ごめんね、いきなり電話して……』
「あ、はい」
『そ、それじゃぁ……』
そう言って川宮さんは電話を切った。
一体なんだったのだろうか?
無意味な電話を川宮さんがかけて来るとは思えないし。
「……考えても仕方ない、次のデートのプランでも練るか」
俺はそんな事を考えながら、着替えを済ませてベッドに横になる。
*
「………どうしよう」
私、川宮李亜は自分のおかれて状況に恐怖していた。
一人暮らしの自分の家に帰ると、とある封書が届いていた。
中には私と前橋君が二人でご飯を食べている様子が写っている写真と、手紙が入っていた。
手紙の内容はこうだった。
【この事をマスコミに漏らされたくなかったら、明日17時にこの男待ち合わせた場所にて待つ。もし誰かにこの手紙をばらした場合、ネットにこの写真をばら撒く】
どうしよう……。
私は怖くて何も考えられなくなっていた。
前橋君も視線を感じると言っていたし、恐らくこの手紙の主は本気だ。
怖い……お父さん、お母さん……。
今までにない恐怖に私は両親の事を考えた。
そして、さっきの電話で私はこのまま彼にこのことを打ち明けようかとも考えてしまった。
でも、前橋君には迷惑を掛けたくなかった。
私のわがままを聞いてくれた彼を……。
私をアイドルとしてではなく、一人の女の子として見てくれる彼を……。
巻き込みたくはなかった。
「……うっ……」
気が付くと私は涙を流していた。
一体何を要求されるんだろう。
何を言われるのだろう。
考えるだけで気持ちが悪くなり、吐き気がした。
*
翌日、俺は朝早くに起きて学校に行く準備をしていた。
「姉貴」
「なぁに? けいちゃん?」
「いい加減着替える時に部屋に侵入するのやめろよな!!」
「まぁまぁ、良いではないか、良いではないか!!」
「良くねぇよ!! 良いから出ていけ!!」
「あん」
「たく……」
いつも通り朝から姉貴と一悶着しているとスマホに知らない番号から電話が掛かって来た。
「知らない番号か……いっか」
知らない番号からの電話には基本出ないのが俺だ。
しかし、その番号から何度も何度も電話が掛かって来た。
「あぁもう! うるせぇな! なんだよ!!」
俺は半ばキレ気味に電話に出る。
「はい? もしもし」
『あ、前橋君? 私よ真菜のマネージャーの……』
「あぁ……えっと名前なんでしたっけ?」
『あら? 言ってなかったかしら? 私は岡島よ、岡島由美子(おかじま ゆみこ)、って今はそれどこじゃないのよ!!』
「なんですか、朝から……事務所になら入りませんよ」
『違うのよ、今日はその話じゃなくて……あの子の様子が変なんだけど、何かしらない
?』
「え? あぁ……別に。てか俺が知るはずないでしょ」
確かこの人にはデートの事を言っていなかったはずだ、俺がばらして川宮さんに不都合があってもいけないし、デートの事は隠しておこう。
『この前デートしたことは知ってるのよ』
「な、なんのことですか?」
『駅で待ち合わせをして、そのまま映画に言ったわね、その後のお昼のセレクトもなかなかだったわ』
「なんでそこまで知ってんだよ」
『なんでって、ずっと後ろをついて行っていたからよ!』
「ストーカーじゃねぇか!」
『何を言ってるの! 彼女はうちの看板よ! 万が一間違いがあったら困るのよ!』
「だからって休みの日に何やってんだよ! 暇か!」
『えぇ! 昨日はオフだったけど、デートする旦那も彼氏もいないから暇だったわ、だから暇つぶし……じゃなくて心配で後をつけたのよ!』
「今暇つぶしって言ったよね?」
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