第92話 帰り道の恐怖



 九条の言っていた事に不安を感じつつ、俺は放課後英司と一緒に学校から家に帰っていた。


「まぁ、よく考えたら俺はモテないし、関係ないか」


「どの口が言ってんだよ、まったくお前は」


「でも、やっぱりおかしいんだよな?」


「ん? 何がだよ?」


「いや、やっぱり今感じる視線と学校で感じる視線は何か違う気がして……」


「あぁ、まだ学校からそこまで離れてないし、結構人通りもあるからな。お前を見てる女子でもいるんだろ」


「なんでそうなる? 俺を見て何が楽しいんだ?」


「あぁ、もうなんか説明も面倒だわ……まぁ良いや、どうせお前は家に帰ってゲームするんだろ?」


「あぁ、最近買ったゲームが面白くてな」


「じゃぁ俺は帰るよ、またな」


「あぁ」


 俺は帰る途中で英司と別れ、一人で自宅に帰り始めた。

 しかし、歩き始めて数分だろうか、人気のない道に来差し掛かった時だった。

 誰かが俺の後ろをついてきている事に気が付いた。

 一体誰だ?

 俺が足を止めるとそいつも止まる、俺が急ぎ足になれば、俺をつけてくる奴も急ぎ足になった。


『……まさか背後からスタンガンを持った女子が近づいてくるなんて……』


 俺は学校での九条の言葉を思い出した。

 怖くなった俺は急ぎ足で家に帰った。

 しかし、途中で人の気配はなくなっていた。


「あれ?」


 周りを見るが人が居る気配気配は無い。

 気のせいだったのだろうかとも思ったが、先ほどとは感覚がまるで違うのでそうでも無いのだろう。


「なんだか気持ちわりぃな……」


 俺は急いで家に帰った。


「ただいま」


「あ、けいちゃんお帰り! 今日は早かったね、またお姉ちゃんとゲームでもする? 今度は夜の大人のゲームを……」


「しねぇよ、それよりもなんか誰かにつけられてる見たいでさ……少し怖かったよ」


「え? あらそうなの? けいちゃん心当たりはあるの?」


「いや、全くないんだ。だから気持ち悪くてさ」


「そう……お姉ちゃん少し出かけてくるわねぇ~」


「包丁を持ってどこに行く気だ」


 俺は出刃包丁を片手に外に出ようとする姉を止める。

 そんな物持って出て言ったら職質を受けるわ。


「なんで? けいちゃんに迷惑をかける人は早く始末しないと」


「気持ちは嬉しいけどもっと穏便に済ませてくれない?」


 心配してくれるのは良いが、対応が雑すぎる。

 俺は部屋に戻りながら、姉貴に今日の事を話した。


「ふーん、学校では視線をねぇ……」


「あぁ、そうなんだ。帰りの視線とはなんか違うんだよ」


「そう……誰かから恨みを買うようなこともしてないんでしょ?」


「ああ、全く心当たりが無いんだ」


「あぁ、でもけいちゃんは知らず知らずのうちに恨みをかってそうだけど」


「いや、どういう意味だよ」


「だって、私の可愛い可愛い最愛の人よ!! 嫉妬する気持ちも分かるわ!」


「そりゃどうも、ところで……早く出て行ってくれない? 着替え出来ないんだけど?」


「お構いなく……はぁ……はぁ……」


「出てけ!!」


 俺はそう言って姉貴を部屋から追い出す。

 全く姉貴にも困ったものだ。

 さっさと弟離れをして欲しい。

 俺がそんな事を考えながら着替えをしていると、今度はスマホが鳴った。

 ディスプレイを見ると、そこには川宮さんの名前が表示されていた。


「もしもし?」


『あ、もしもし圭司君? あのさ、今良いかな?』


「良いですけど、どうかしたんですか?」


『た、大した事じゃないの……な、何か変わった事とか無かった?』


「別に何も……あ」


『何かあったの?』


 俺はそう言われてあの視線の事を思い出した。

 最近あった変わった事と言えばそれだが、果たして川宮さんに話して何か意味があるだろう?

 

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