第92話 帰り道の恐怖
*
九条の言っていた事に不安を感じつつ、俺は放課後英司と一緒に学校から家に帰っていた。
「まぁ、よく考えたら俺はモテないし、関係ないか」
「どの口が言ってんだよ、まったくお前は」
「でも、やっぱりおかしいんだよな?」
「ん? 何がだよ?」
「いや、やっぱり今感じる視線と学校で感じる視線は何か違う気がして……」
「あぁ、まだ学校からそこまで離れてないし、結構人通りもあるからな。お前を見てる女子でもいるんだろ」
「なんでそうなる? 俺を見て何が楽しいんだ?」
「あぁ、もうなんか説明も面倒だわ……まぁ良いや、どうせお前は家に帰ってゲームするんだろ?」
「あぁ、最近買ったゲームが面白くてな」
「じゃぁ俺は帰るよ、またな」
「あぁ」
俺は帰る途中で英司と別れ、一人で自宅に帰り始めた。
しかし、歩き始めて数分だろうか、人気のない道に来差し掛かった時だった。
誰かが俺の後ろをついてきている事に気が付いた。
一体誰だ?
俺が足を止めるとそいつも止まる、俺が急ぎ足になれば、俺をつけてくる奴も急ぎ足になった。
『……まさか背後からスタンガンを持った女子が近づいてくるなんて……』
俺は学校での九条の言葉を思い出した。
怖くなった俺は急ぎ足で家に帰った。
しかし、途中で人の気配はなくなっていた。
「あれ?」
周りを見るが人が居る気配気配は無い。
気のせいだったのだろうかとも思ったが、先ほどとは感覚がまるで違うのでそうでも無いのだろう。
「なんだか気持ちわりぃな……」
俺は急いで家に帰った。
「ただいま」
「あ、けいちゃんお帰り! 今日は早かったね、またお姉ちゃんとゲームでもする? 今度は夜の大人のゲームを……」
「しねぇよ、それよりもなんか誰かにつけられてる見たいでさ……少し怖かったよ」
「え? あらそうなの? けいちゃん心当たりはあるの?」
「いや、全くないんだ。だから気持ち悪くてさ」
「そう……お姉ちゃん少し出かけてくるわねぇ~」
「包丁を持ってどこに行く気だ」
俺は出刃包丁を片手に外に出ようとする姉を止める。
そんな物持って出て言ったら職質を受けるわ。
「なんで? けいちゃんに迷惑をかける人は早く始末しないと」
「気持ちは嬉しいけどもっと穏便に済ませてくれない?」
心配してくれるのは良いが、対応が雑すぎる。
俺は部屋に戻りながら、姉貴に今日の事を話した。
「ふーん、学校では視線をねぇ……」
「あぁ、そうなんだ。帰りの視線とはなんか違うんだよ」
「そう……誰かから恨みを買うようなこともしてないんでしょ?」
「ああ、全く心当たりが無いんだ」
「あぁ、でもけいちゃんは知らず知らずのうちに恨みをかってそうだけど」
「いや、どういう意味だよ」
「だって、私の可愛い可愛い最愛の人よ!! 嫉妬する気持ちも分かるわ!」
「そりゃどうも、ところで……早く出て行ってくれない? 着替え出来ないんだけど?」
「お構いなく……はぁ……はぁ……」
「出てけ!!」
俺はそう言って姉貴を部屋から追い出す。
全く姉貴にも困ったものだ。
さっさと弟離れをして欲しい。
俺がそんな事を考えながら着替えをしていると、今度はスマホが鳴った。
ディスプレイを見ると、そこには川宮さんの名前が表示されていた。
「もしもし?」
『あ、もしもし圭司君? あのさ、今良いかな?』
「良いですけど、どうかしたんですか?」
『た、大した事じゃないの……な、何か変わった事とか無かった?』
「別に何も……あ」
『何かあったの?』
俺はそう言われてあの視線の事を思い出した。
最近あった変わった事と言えばそれだが、果たして川宮さんに話して何か意味があるだろう?
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