第91話 視線の先には俺!?



 学校に行くと、なんだか俺は嫌な視線を感じた。

 なんだろうかこの視線は?

 まるで誰かが俺に向かって何かを責め立てているような……。


「なんだか視線を感じる」


「今更かよ」


 俺がそう言うと斜め向かうの席の英司が俺にそう言ってきた。

 今は授業の合間の休憩時間、俺は机に座ってスマホを弄りながら英司に続ける。


「いや、なんか視線を感じるんだよ、それも二人」


「は? 二人? 学校中の全女子生徒とかじゃなくて?」


「なんでそうなる? そんなの感じるわけないだろう、何馬鹿な事を言ってるんだ? あ、そうか元々馬鹿だったな、すまん忘れてくれ」


「忘れるかクソ野郎、お前も馬鹿だろうが」


 しかし、教室に居ても感じるこの視線はなんだ?

 まるで誰かが俺の事を良く思っていないような……。


「よぉ前橋」


「また笹原と喧嘩か? ダメだろ仲良くしねーと」


「なんだ、またお前らか、最近よく来るな」


「いや、クラスメイトなんだし話ぐらいかけるだろ?」


 俺と英司が話をしていると、九条とは八代が話かけてきた。

 こいつらは宿泊学習後からなんだか慣れ慣れしい。


「視線を感じる?」


「なんだよ、そんなの今に始まった事じゃないだろ?」


「いや、今までは感じなかったんだが」


 一体なんなのだろうかこの視線の正体は?

 今も後頭部に感じる。

 まさか後ろに!!


「あ……」


「ん、どうした井宮?」


 そう思って後ろを振り向いたが、いたのは井宮と高城だった。

 こいつらが視線の正体な訳ないな。

 高城とも井宮とも結構一緒に居るけど、その時に感じる視線じゃないし。

 それにこいつらは俺にそんな視線を向ける奴らじゃないし。


「べ、別になんでも……」


「あ、あははは……きょ、今日はいい天気だね!」


「いや、曇りだけど……」


「あ……な、なんか良いよね! その……雲が厚くて!」


 どうしたんだ高城は?

 なんか分けわかんねー事言ってるけど……。


「そ、それより何を話してたのよ」


「あぁなんでも前橋が視線を感じるらしい」


 九条の説明に二人はなぜか視線をそらした。


 

「へ、へぇ……そうなんだ……」


「こ、怖いねぇ……誰かに見られてるのかなぁ?」


「いやいや、でも前橋なら視線を感じるくらい日常茶飯事だろ?」


「その視線に慣れた前橋が言ってるんだぞ、きっとすごい視線なんじゃないのか?」


 なんだよすごい視線って。

 そう言えば、川宮さんとのデートの時も視線を感じたが、その時とは何かが違うような……。


「うーむ……ま、良いか、放っておけば収まるだろ」


「お前それで良いのかよ」


「あぁ、別に今のところ実害ねぇし」


 俺がそう言うと英司は少し心配そうに俺を見ていたが、後ろの井宮と高城はなぜかホッとしていた。

 

「害ねぇ……前橋気をつけろよ」


「何がだよ」


「いや、俺の思い過ごしだと思うが……お前に恨みを持ってる人間がお前を見ているのかもしれない」


「なんだよ、怖いことを言うな九条。俺はメンタルが弱いんだ、泣くぞ」


「いや、真剣に聞けよ。一人になった時は気をつけろ、背後からグサリ!! なんてことがあるかもしれん」


「マジで怖いことを言うなよ……一人で帰れなくなるだろうが」


「あぁ、九条あれか? 中学時のバレンタイン事件、まだお前引きずってるのか?」


「え? 何? 実際あったの? マジであったの!?」


「あれは酷かった、まさか背後からスタンガンを持った女子が近づいてくるなんて……」


「いや、それどういう状況だよ!!」


「お前もモテるもんなぁ~モテる男の宿命ってやつだろ? あれ以来バレンタインデーは制服の下にあれ着てるんだろ?」


「あぁ、防弾チョッキをつけているから今年は無事だった」


「何? 今年はってことは去年は何かあったの!?」


「まぁ、俺が言いたいのはストーカーは怖いってことだ。お前もモテるんだから気をつけろ」


 九条がそう言った瞬間、教室に先生が入ってきて授業が開始された。

 えぇ……何、そんな事がリアルで起きてるの!?

 てか、あいつ良く無事だったな、なんだよバレンタインデーに防弾チョッキを着る高校生って、聞いたことねぇよ!

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