第90話 彼女がなぜ?
「何か用か?」
『何よ、随分疲れてそうじゃない』
「そりゃあそうだ、今日はあの日だぞ? 疲れないわけがない」
『それでどうだったのよ、デートは?』
「なんかお前機嫌悪くね?」
『気のせいよ! 良いからどうだったのか言いなさい!』
「な、なんだよ……別にこれといって何もなかったぞ? 普通に映画見て飯食って猫と戯れて終わったぞ」
『そう、意外ね。アンタが私以外の女の子と普通に外出するなんて』
「まぁ、そこまで緊張もしなかったな、報酬が発生してたからかな?」
『しかも手までつなぐなんて……もしかしてアンタ、あのアイドルに気でもあるの?』
「なんでそうなるんだよ。ん? てか、なんで手を繋いでた事を知ってるんだ? 俺、そんな事言ったっけ?」
『い、言ったわよ! べ、別に覗いてたわけじゃないから!』
「はぁ……」
誰も覗いてたのかなんて聞いてないんだが……。
口が滑って手を繋いでいたことも行ってしまったのだろうか?
『そ、それでこれで彼氏役ってのは終わりなの?』
「いや、もう一回することになった」
『はぁ!?』
「いや、なんでそんなに驚く?」
『な、なんで二回もする必要があるのよ!!』
「いや、なんか今度は博物館デートだって言い始めて」
『は、博物館!?』
「なんでいちいち驚くなんだよ。別にただの恋人役だろ? 隣に居るだけだ」
『そ、そんなのわかってるわよ』
「もう切って良いか? 久しぶりに一日外に居て疲れてるんだ、今日はもうゆっくりして寝たい」
『あ、あぁそう……じゃぁ、お休み』
「おう」
俺はそう言って電話を切った。
なんだったんだ?
内容の無い会話をしたような気分だ。
まぁ、良いや疲れたしさっさと寝よう。
そう思った俺った俺の部屋に先ほどやっといなくなったはずの姉が勢いよく入って来た。
しかも露出度の高いルームウェアで……。
「さ、さぁ! お姉ちゃんとベッドで楽しい大人のゲームをしましょう!!」
「寝ちゃダメ?」
その後、俺は姉と久しぶりにゲームをした。
普通のテレビゲームを……。
*
「……ど、どうしよう……」
私は現在悩んでいた。
圭司君に電話を掛けるか否かを……。
だって、電話なんてまだしたことないし、しかも初めての電話で今日のデートは如何だったの?
とか聞いいて、もしもショックな回答が帰ってきたら私は絶対に立ち直れない。
「はぁ……どうしよう……」
私は机の上に置いたスマホと睨めっこしながらそんな事を考える。
しかし、まさか井宮さんまでデートを尾行しているとは思わなかった。
まぁ、あの感じから見て私の予想はおおよそ当たりよね?
「あぁ……井宮さんに勝てるのかな? 私……」
相手は学園のアイドルと称されるほどの美少女。
おまけにはっきりとした性格と、誰とでも仲良くできる社交性から男女問わず人気がある。
それに比べて私はただの大人しい女子生徒、一応ダイエットに成功して多少マシにはなったと思うけど、中身は小学生の頃とあまり変わっていない。
アイドルの宮河真菜だけでもかなりの強敵だというのに、それに加えて井宮さんまで敵になるなんて……私、完全に二人に負けてるじゃん……。
「はぁ……なんだか考えてたら疲れてきたなぁ……今日はもう寝よう」
結局私は今日も圭司君に電話を掛けることが出来なかった。
こんな事で良いのだろうか?
圭司君はただでさえ学校でも人気がある。
この前の宿泊学習でもクラスの勝利に活躍したり、井宮さんを助けたりしてクラスのみんなから信頼を集めている。
私を含めた三人以外にもきっと圭司君に好意を持っている女子は多いはずだ。
「うぅ……絶対負けないもん! 幼馴染は負けヒロインとか言われてるけど、そんなことないもん!!」
私は昔の私と圭司君の写真を見ながら、涙目で一人そんな事を呟く。
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