第74話 スカウトは体当たり
「はぁ……あのですね、大前提として俺は芸能界というものに興味がありません。なんで俺をそこまで欲しがるかはわかりませんが、もう俺に付きまとわないでください」
「なんでよ! 貴方は神様から素晴らしい顔を頂いているのよ! それをフルに活用しなくてどうするの!!」
「おい、誰が笑神様から貰った最高に面白い顔だこら」
やっぱりこの人は面倒だ。
早く家に帰ろう。
「これ以上俺を引き止めるのであれば警察を呼びますよ?」
「うふふそんなの真菜との握手でチャラにしてもらうわよ!」
「あんた最低だな」
「さぁ、良いから事務所に来なさい! 絶対に乱暴しないから! 少しお話するだけだから、ビデオで撮影とか絶対しないから!」
「なんですかその怪しい誘い方! なおさら行きたくないですよ!!」
「じゃ、じゃぁ一緒に来てくれたら、真菜が膝枕してくれるわよ!!」
「え!? ま、マネージャーさん?」
「いえ、遠慮します」
「しかも遠慮された!?」
「も、もしかして私見たいな大人の女性の方が良いの?」
「いえ、嫌です」
「うはっ!! き、傷つくことを平然と言うのね……」
別に傷つけるつもりは無いのだが……。
まぁいいや、二人が傷ついているうちにこっそりこの場から消えよう。
俺はそう思いそーっとその場を離れようとするしかし……。
「ま、待って!」
「え?」
「あ、貴方はきっと売れます! 私もサポートしますから、事務所に入りませんか?」
そう言って来たのは以外にも宮河さんだった。
彼女は俺の腕を掴み真剣な表情でそう言っていた。
そんなに俺の顔は面白いのだろうか?
「悪いけど、俺はそういうの興味ないから」
「あっ……」
俺はそう言うと彼女の手を振り解いて家に向かって歩き始める。
さて、早く帰ってログインしよう。
✱
私、高城優菜は放課後大変な光景を目にしてしまった。
なんと、不審な格好の女の子に圭司君が連れて行かれてしまったのだ。
しかも、後を付けていったら車から別な女の人も出てきて、ショックを受けたり何かを化懇願している様子だった。
圭司くんは涼しい顔で何かを話ているだけなのに……一体何を話しているのだろうか?
正直これ以上ライバルが増えるのは困る……。
井宮さんは私に協力すると言ってくれたけど……井宮さんもきっと……。
「はぁ……ライバル多すぎるよぉ……」
まぁ、圭司くんはイケメンだし、噂だと他の学校の女の子からも人気あるみたいだし……油断出来ないもんなぁ……。
「でもあの二人誰かしら? なんか圭司迷惑そうだったけど?」
気になる……でもまだ自分から声を掛けるのには勇気が居るし。
「そ、そうだ! こんな時のために連絡先を交換したんじゃない!! メッセージで聞けば!!」
私が後を付けていることがバレてしまう……。
てか、私完全にこれストーカーじゃない!!
「こんなの絶対聞けないじゃない!! あぁ〜でも気になるぅ……」
私、一体何をしてるんだろ?
宿泊学習で少しは距離が縮まったと思ったのに……。
「こういう時井宮さんはどうするんだろ?」
私がそんなことを考えていると、先程まで圭司君と話していた二人が車に乗ってどこかに出発しようとしていた。
私はそこで見てしまった。
マスクとサングラスを外したあの不審な格好の女の子の正体を……。
「あ、あれって……まさか」
そこに居たのはアイドルの宮河真菜ちゃんだった。
私でも知っている、いま大人気のアイドルだ。
そんな人が一体圭司君に何のようだったのだろうか?
「うぅ……気になる……気になって仕方ない!!」
私は胸にもやもやを抱えたまま、自分の家に帰って行った。
明日圭司君に聞いてみよう。
✱
「ってことがあってよぉ」
『へぇ……それであんた、昨日生配信出てたんだ』
「え? 井宮も見てたのか?」
『ま、まぁ……噂は流れてきていたから」
家に帰った俺は食事をし、風呂に入って、いつもどおり井宮と通話しながらゲームをしていた。
「参ったよ、良いバイトではあったんだけどさ」
『ま、そのマネージャーの目は悪くなさそうね、中身を見抜けないのが問題だけど』
「は?」
『何でも無いわよ。ま、あんたはそういう業界には絶対行かないわよね』
「まぁな」
俺は井宮に昨日から今日まで出来事を電話で話していた。
井宮ならこのことを話しても問いただして来たりしないし、俺の話を他の奴にペラペラ話したりしないからな。
『……ちなみにどうだったの?』
「どうだったって?」
『その……宮河真菜は……』
「あぁ……胸はデカかったな」
『サイテー』
「いや、どうだったって聞いたのはお前だろ?」
『別に体のことを聞いたわけじゃないんだけどー』
「何不機嫌になってんだよ?」
まぁ、確かに井宮は宮河よりも大きくなかったけど。
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