第65話 宿泊学習編42



 学校に到着したのは午後三時過ぎだった。

 俺はずっと眠っていて、なんだか帰りのバスの中が一瞬のように感じた。

 このまま俺たち一年生は解散となるが、部活のある奴らはそのまま部活に向かっていったり、遊びに行くう奴らはどこに行くかを相談したりしていた。

 まぁ、もちろん俺はこのまま家に帰って三日間溜まったゲーム欲を開放したいところだが、俺にはまだやる事が残っている。


「高城」


「え? け、圭司君!? ど、どうあしたの?」


「少し良いか?」


「え? あ……う、うん……」


 俺は高城を呼び出した。

 高城にはしっかり今の俺の気持ちを言っておかなかければいけない。

 井宮との関係も落ち着いたしな……。


「は、話って何?」


「いや……あのさ……正直言うと俺、高城の変わりように驚いてて………正直高城がブーちゃんだとは思えないというか……」


「そ、そんなに私って変わったかな?」


「あぁ、昔はそんなに可愛くなかった」


「か、かわっ!?」


「だから正直に言うと、すぐに昔見たいに戻るのは無理かもしれない……でも少しづつでも……前みたいな関係に戻れないかな?」


 これが俺の本心だ。

 あの頃信頼していた友達なら、また同じような関係になれるかもしれない。

 だが、人の考え方は変わる、だから俺は昔とは変わってしまった自分を高城にしってもらうためにこういう答えをだした。


「も、もちろん! そ、そんなの当たり前だよ!」


「そう言ってもらえると助かる」


 高城が俺と友達なりたがった意味は俺の事を知っていたから。

 高城の正体に気が付かない俺ともう一度友達になろうと、一生懸命だったのかもしれない。

 なんだか、気がつけなくて申し訳ないな……。


「じゃぁ話は終わりだからこれで……」


「あ、あのさ!」


「ん? なんだ?」


「れ、連絡先交換しよ……」


「あ、あぁ……わかった良いぞ」


 俺はそう言われて少し戸惑った。

 連絡先を教えるということは、その相手から連絡が来るかもしれないということだ。

 まぁ、俺に実害の無い連絡であれば全く問題ないのだが……。

 こういう学校のしかもクラスメイトとの連絡先の交換は要注意だ。

 休日に突然遊びに誘ってくる可能性もあるし、急に電話を掛けてくる危険性もある。

 まぁ、高城ならそんなことは無いと思うが……。


「はい、これが俺の連絡先だ」


「う、うんありがと……か、帰るの?」


「あぁ、三日間ゲームしてないからな、今日の夜から遊び倒す予定なんだよ」


「そ、そっか……気を付けてね!」


「あぁ、じゃぁな」


 俺はそう言って高城の元を後にする。

 よし、これでやるべきことはすべてやった!

 後は家に帰ってゲーム機のコントローラーを握り、ゲームの世界に行くだけだ!!

 なんて事を考えながら、コンビニでお菓子やジュースなどの食料を調達して帰った俺だったのだが……。


「おっかえりぃぃい!! 圭ちゃーん!!」


「あぶね!」


「ぎゃん!」


 家に帰った俺を待っていたのは、同じく学校から帰ってきたばかりの姉貴だった。

 俺は抱きつこうとしてきた姉貴を華麗に避けて、自分の部屋に真っ直ぐ向かっていく。


「圭ちゃん圭ちゃん! お姉ちゃん圭ちゃんがいなくて危うく死んじゃうとこだったんだよ!」


「なんでだよ」


「もう! なんで宿泊学習なんて行くの!?」


「学校行事だからだよ」


「なんで学校行事なんて出るの!」


「俺だって出たくねーよ! でもうちの親はそういうのは出ろって言うだろ!」


「うぅ……でも無事に帰ってきてよかたぁ〜」


「鬱陶しいなぁ……」


 姉貴はそう言いながら、俺に抱きついてくる。

 この姉は本当にうざい……。

 こんなのがカリスマ女子高生なんて本当に呼ばれてるんだろうか?


「じゃぁ、悪いけど姉貴。俺は部屋に籠もるから」


「えぇ〜帰って来たばっかりだし、もう少しお姉ちゃんに構ってよぉ〜」


「嫌だ」


「うぅ〜お姉ちゃんこの前も仕事頑張ったんだよ?」


「知らない」


「うぅ〜……ん? なんか圭ちゃんから女の匂いが……」


「なんだよ女の匂いって……」


「圭ちゃん……まさかと思うけど……宿泊学習中に何か女の子とあった?」


 な、何も無いわけではないけど、別に姉貴に話すようなことでも無いしな……。

 てか、絶対に高城の事とか話たら面倒なことになるからやめておこう……。


「べ、別に何もないけど……」


「なんだか初恋のあの子と再開出来て戸惑ってそうな感じね」


 いや、なんでここまで的確に言い当てられるんだよ!

 もしかして姉貴見てた!?

 

「そ、そんな訳ないだろ?」


「そうよね? あの子は引っ越したんですもんね? じゃぁそろそろお姉ちゃんとイチャイチャしましょう」


「しねーよ」


 そう言って俺は部屋に入って鍵を締めた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る