第61話 宿泊学習編38

「た、高城……お前もしかして」


「……うん、そうだよ……」


「そうか……」


「わかってくれた?」


「あぁ……ブーちゃんの友達だな!!」


「……え?」


「なんでそうなるのよ……」


 そうでなければ高城がここまで俺とブーちゃんの関係を知っているはずがない!

 そうか……ブーちゃんまさか高城と知り合いだったのか……連絡取れるならまた会いたいなぁ……。

 しかし、なんで井宮は俺を可愛そうな人を見る目で見ているんだ?


「まさかそういうことだったとは……だから俺と友人に……」


「あんた……どこまで馬鹿なのよ」


「え? いや、だってそうなんだろ?」


「どう考えてもそのブーちゃん本人が高城さんでしょ!!」


「はぁ?」


 全く何を言っているんだこのアホは……。


「そんなわけ無い、ブーちゃんは高城さんみたいな美少女じゃなかった」


「び、美少女!?」


「こんなにスタイルもよくないし、痩せたからってここまで綺麗にはならないだろ?」


「き、綺麗……」


「それに……」


「も、もう良いから! 高城さんがオーバーヒート寸前よ」


「え?」


 言われて振り向くと、高城さんは顔を真っ赤にして頭から湯気をだしていた。

 なんで?

 俺なんか変な事言ったか?


「あんた、そのブーちゃんの本名とか覚えてないの?」


「いや、正直あだ名でしか呼んだ事無くて……」


「どんな友達よ」


「いやでも……高城がブーちゃん?」


 俺はそう言いながら高城の顔をじーっと見る。


「あ……ん……」


 うーむ……近くで見るとやっぱり綺麗だ。

 俺と違って目鼻立ちが整っているし、まつげも長い。

 でも、高城がブーちゃんだなんて信じられないなぁ……。


「あ、あんまり見ないで……」


「あぁ、悪い」


 高城は顔を真っ赤にして俺から顔を隠してしまった。

 まぁ、こんなブサイクに見つめられたら気持ち悪いわな。


「本当に高城がブーちゃんなのか? 正直全く信じられないぞ」


「それじゃあ高城さん、何か証拠みたいな物ってない?」


「い、一応あるけど……こんなの覚えてるかわからないから……」


「あるのか? なんだよ見せてくれよ」


「で、でも……これを持ってること自体前橋君知らないかもしれないし……」


「まぁ、見せるだけはタダだから見せてみたら?」


「う、うん……」


 一体何を出すのか、俺は少し気になっていた。

 正直、俺はブーちゃんの事を人として好きだった。

 優しくて思いやりがあって……人間顔では無いと言うが、本当にそのとおりだと思っていた。

 でも、そのブーちゃんが高城だった時、俺は何を思うのだろうか?

 決定的な証拠が出てきた瞬間、俺は高城に何を思うのだろうか?

 まぁ、でもそんな証拠なんて出てくるはずが無い、そもそもブーちゃんが高城な訳がない。

 そう思っていた俺出して来た古びたキーホルダーを見て、俺は目を見開いた。


「これ……昔前橋くんが要らないからってくれたの……ずっと持ってて……」


「…………」


 言葉が出なかった。

 知らないわけがない、そのキーホルダーは俺が泣いているブーちゃんに渡した当時の宝物だ。

 確かガチャポンのシークレットだったと思う。

 いじめられて泣いていた彼女に俺はそれを上げたのだ。


「まさか……高城が……」


「お、覚えてるの?」


「……あぁ、泣いてたお前に俺が渡した……」


「そ、そう! 私体型のせいで良くいじめられてて……いつも前橋くんが助けてくれて……」


 そんな……まさかあのブーちゃんがここまで変わるなんて……。

 俺の初恋の人が……ここまで変わってしまっているなんて。


「転校するときは悲しかったけど……前橋くんを高校で見かけたときは嬉しかった……また一緒に遊びたいと思ったけど、前橋くん私に気がついてくれなくて……」


 俺は自分で動揺しているのがわかった。

 彼女は紛れもなくブーちゃんだ。

 だからこそ俺は何を言っていいかわからなくなった。

 俺は今後彼女とどう接すれば良いのか、てか俺なんかまずい事を言った気がするけど……。

 なんか本人の前で好きだったとか言った気がするぞ!

 やばいなぁ……なんか色々考えてたら腹痛くなってきた。


「ちょっと、さっきから黙ってどうしたのよ?」


「……いや………ちょっと混乱してきた……悪いけど俺は先に戻るわ……」


「え!? あ、あの……ま、また私と仲良くしてくれる?」


 仲良く……それはまた友達になるってことか?

 俺の考え方は昔とは違う……俺は彼女にどう接すればいい?

 

「あぁ……考えておくよ……」


 俺はそういってその場から離れた。

 逃げると言った方が早いのかもしれない。

 どうやって部屋に戻ったのかすら覚えていないほど、俺はぼーっとしていた。

 気がつくと俺はなぜか、英司のベッドに居た。


「いやなんでだよ!!」


「友よ……相談にのってくれ」


「都合の良い時だけ友達にすんじゃねぇ!」


「いや、今回はマジなんだ……」


「………何があった? お前がそこまで落ち込んでるの珍しいな」


「実は……」


 俺は英司に先程の出来事を話した。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る