第59話 宿泊学習編36
✱
「酷い……目にあった」
「モテるんだから、あのくらい良いだろ?」
「俺は別にモテない!!」
あの後、風呂場に戻され俺は風呂場のクラスメイトにひどい目に合わされた。
まぁ、具体的に何をされたのかは、恐ろしくて言えないので言わないけど……。
とにかくひどい目にあった俺は疲れ切った顔で自分の部屋に戻った。
全くうちのクラスの男どもはなぜ色濃い沙汰になるとあそこまでの力を出すのか……マジで謎だ。
「あーあ、明日で宿泊学習も終わりかー色々あったなぁー」
「そうだな、特に昨日な」
「まぁな、山はやっぱり怖いね」
「遭難した奴がそれを言うなよ」
「遭難したから言えるんだよ、まぁでもそんな宿泊学習も終わりだ」
「なんだかんだであっという間だったな」
「出来ればこういった学校行事にはもう参加したくないね」
「残念ながらこういう学校行事がこれからもたくさんあるんだよ」
はぁ……こんな学校行事が三年間で何度もあるのか……。
面倒くせぇなぁ……学校行事なんて全部休みたいが、ウチの親はそういうのは絶対に許さないし。
「学校でゲームするって行事はないのかな?」
「ある訳ねぇだろアホ」
「いや、でも昨日と今日のレクリエーションもゲーム対して変わらねーだろ」
「まぁ、それは認める」
明日は午前中にこの施設の責任者からこの森に関する話を聞いて帰るだけだ。
なんか最終日にやっと学習的なイベントが入ってきたな……。
「ん? そういえば池内は?」
「あぁ例の呼び出しイベントだよ」
「マジか……まぁあいつは生粋のリア充って感じだからな……マジで滅びればいいのに」
「その言葉、お前にも言ってやるよ」
「何を言っているんだ、俺もお前と同じモテない組だ」
「はぁ……お前はもう少し自分の顔面について理解した方が良いぞ」
「理解してるだろ」
「俺、お前のそういう悪意の無いところが嫌い」
「なんなんだ全く……さーて、それじゃあ俺もちょっと用があるから」
「あぁ、やっぱりお前も呼ばれてるのね……はぁ……なんで俺はモテないんだ」
俺はそんな英司の言葉を聞きながら、部屋の外に出る。
何でも施設から抜け出す抜け道は、男子部屋と女子部屋を隔てるトイレの中にあるらしい。
俺は井宮からきたメッセージを元にその抜け道を探ろうと思っていたのだが……。
「あぁーなるほど……こういうことね」
俺がトイレに入ると、そこには窓から外に抜け出す他のクラスの男子生徒が何人か居た。
トイレの窓は大きく、人が一人抜け出すには十分なサイズだった。
しかも地面と窓にそこまでの高さはなく、皆簡単に抜け出していた。
「や、やべーよどうしよう! 俺も呼び出しくらっちまった!」
「落ち着け! これで俺たちは高校入って最初のタイミングで彼女を作る権利を獲得したんだ!」
「そ、そうだな! 地味で目立たない中学時代から考えたら夢のようだ!」
「あぁ、そうだな! 早く行こうぜ!!」
「あぁ!!」
なるほど、あの噂は本当みたいだな。
まぁでも、まだ高校に入学して半年も経って居ないのに告白なんて少々早すぎではないだろうか?
まぁ、夏休み前に彼氏を作りたいと考えリア充女子の考えそうなことだが……。
「さて、俺も行くか……」
まずは高城のところに最初は向かおう。
あいつとの約束が終わった後に井宮と合流すれば問題はないはずだ。
と言うか、なんで高城は俺を呼び出したんだ?
別に明日の朝とかでも良い気がするのだが?
なんて事を考えながら、俺は施設の裏口に向かった。
そこには既に高城が居て、俺を待っている様子だった。
「悪い、遅れた。それで用ってなんだ?」
「あ、ま…前…橋君……」
俺が高城の元にやってくると高城はなんだか歯切れ悪くそう言った。
暗くて良くはわからなかったが、なんだか顔が赤いような気がした。
「き、来てくれたんだ……」
「まぁ、約束したからな。それで何の話だ?」
「う、うん……あ、あのさ……」
「あぁ」
「そ、その……もしかしたらもう……わかってるかもしれないけど……」
「いや、全然」
「え!? だ、だってこの呼び出しのイベント知ってるんじゃ……」
「あぁ、あの女子が男子を呼び出して告白するってやつか?」
「そ、そう!」
「いや、高城は話があるって言ってたし、そういうのじゃないだろ?」
「え……えぇ……」
「まぁ、それに俺はモテないから告白なんかされるわけないし」
「そ、それ本気で言ってる!?」
「あぁ、だってそうだろ?」
「そ、そうなんだ……」
なんで高城は苦笑いをしているんだ?
もしかして俺の醜い顔を見てどんな表情をしたら良いかわからないでいるのか!?
まぁ、確かにこんなブサイクを目の当たりしたらそんな顔にもなるか……あれ? なんでだろう……どうして涙が出てくるんだろう?
「え!? な、なんで泣いてるの!?」
「いや……なんか自分で言ってて悲しくなった」
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