第56話 宿泊学習編33



 数十分後、三組との合同作戦が始まろうとしていた。

 作戦はわかりやすくこうだ。

 まずは俺と井宮がクラスメイトを助けに来たふりをして一組の奴ら(泥棒)の注意を引く。

 一組の奴らの注意が十分俺たちに集まったところで三組(警察)の出番だ。

 背後から一組の奴らを三組が襲い、その隙きをついて俺たちはクラスの奴らを救い出す作戦だ。

 まぁ、正直かなりの乱戦になるだろうし、何人助けられるかは運だな。


「ねぇ、そろそろ行く頃よ」


「わかってるよ……はぁ……なんで俺がこんな事を……」


 正直マジで面倒くさい。

 なんで俺がクラスの奴らの為にここまでしなくちゃいけないんだ!

 まぁ、確かに今日一日俺と井宮で逃げ惑うのはそれはそれで面倒だ。

 それでも、あいつらがこんな簡単に捕まらなければこんなことにはならなかったのに!!


「はぁ……行くか」


「アンタさっきからため息吐いてばっかりね」


「昨日も言ったろ? 俺は面倒事が嫌いなんだ」


「でも、やるのね」


「まぁ、あいつらを助けないともっと面倒なことになるからな」


「……まぁ、アンタのそういうところは良いと思うわよ……」


「は? なんて?」


「あぁもう! 良いから行くわよ!」


「何怒ってんだよ……」


 俺がそう言うと井宮怒って先に行ってしまった。

 俺何かまずい事言ったか?

 井宮を怒らせるとビンタが飛んでくるからな……気をつけよう。

 俺はそんな事を考えながら、一組の奴らの前に出た。


「あ! いたぞ!!」


「前橋と井宮さんだ!!」


「お前ら下がってろ! 井宮さんは俺が!」


「いや僕が!」


「あっしが!!」


「「「捕まえる!!」」」


 なんかこいつら目が怖いな……井宮も同じ事を感じたのか、顔を真っ青にして本気で逃げていた。

 顔が良いとあぁやって大変な目にも合うんだなぁ〜。

 その点俺はブサイクだから、そんな心配は皆無だな。


「あ! 前橋君よ!」


「さっきは良くもやってくれたわね!」


「こ、今度こそ……き、既成事実を……」


 oh……。

 まさかまたさっきの女子生徒三人組に合うなんて。

 なんかコイツらも少し変わった奴らだったんだよなぁ……俺のキャップを汚いって言って、誰が取るかで揉めてたし……まぁ、汚いって直接は言ってないけど。


「さぁ! さっきの続きよ! 大人しく捕まりなさい!」


「そしてどさくさ紛れに腹筋を触らせなさい!」


「私の胸でよければ少し触っていいから!!」


 なんて言ってるのか良く聞き取れなかったが、とりあえず何やらあの三人は俺を捕まえようと必死らしい。

 他の女子も何故か俺の方に来ている。

 恐らく男子が全員井宮を追いかけているからだろうが……。

 さて、このままコイツらひきつけておかないといけないわけだが、三組の奴らまだでて来ないのか?

 早く出て来てもらわないと俺たちの体力が持たないのだが。

 そんな事を考えていると、丁度その時隠れていた三組の奴らが一斉に一組の奴らに襲いかかり始めた。


「よし! 掛かれぇぇぇぇぇ!!」


「「「「うぉぉぉぉぉぉぉ!!」」」」


 なだれ込んでくる三組の生徒。

 この気を逃すつもりはない。

 俺は急いで誰も居なく鳴った一組の牢屋に向かう。


「前橋!」


「何捕まってんだよ……ほらキャップ、早く逃げるぞ!」


「ははは、やっぱりお前に助けられちまったな」


「たく、もう簡単に捕まるなよ」


 俺は池内にそう言いながら、クラスメイトを脱出させていく。

 なぜかわからないが、クラスの生徒の大半がなんだか既に疲れていた。

 牢屋に居る間は動かなくて良いはずなのだが?


「あ! 人質が逃げてるぞ!!」


「は、早く捕まえろぉぉぉ!!」


「む、無理です! 三組の奴らがぁぁぁ!!」


 まずい、早くも牢屋の守りを固めに来た。

 仕方ない、ここはひとまずこれで逃げよう。


「あ、おい! 圭司! 俺も助けてくれよ!!」


「英司……」


「圭司……」


「ま、頑張ってくれ」


「この薄情者がぁぁぁぁぁぁ!! もう先生の愚痴はいやだぁぁぁぁ!!」


 さらばだ友よ……俺はきっとお前の事を忘れない。

 俺はそんな事を思ってすぐに忘れた後、池内達と共にその場から撤退した。

 

「ふー、なんとか半分以上は助けられたか」


「あぁ、本当に助かったよ、流石は前橋だ!」


「すげーな! まさか三組の奴らと協力するなんて!」


「流石前橋だぜ!」


 いや、そもそもお前らが捕まらなければ俺はこんな苦労せずにすんだんだよ!

 

「はぁ……頼むからもう捕まらないでくれよ……もうこんな作戦通用しねぇから」


 俺は救出したクラスメイトにそう言いながら近くのの大きな石に腰を下ろす。

 はぁ……疲れた。

 しかし、これで後は池内にまかせて俺はゆっくり逃げられそうだ。

 そういえば井宮が来ないけどどうしたんだ?


「なぁ、誰か井宮を見なかったか?」


「え? 見てないけど?」


 おかしい、井宮には敵を引きつけた後はそのままクラスの陣地まで逃げてこいと言ったはずなのに……まさか。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る