第54話 宿泊学習編31

「そんな事出来るわけないでしょ、学校行事なんだから」


「おまえ見た目に反して結構真面目だよな」


「う、うるさいわね! アンタが馬鹿な事言うからでしょ!」


「まぁでも、お前が乗ってくれないなら仕方ないな、それじゃあどうする?」


「やっぱり二人じゃ不安だし、他のクラスメイトと合流するのが良いんじゃないかしら?」


「まぁ、数は多いほうが何かと便利だからな」


「私は女子の方に電話するから、アン誰でも良いから男子に電話掛けなさいよ」


「悪い、俺が番号交換してるの英司と池内だけだ」


「そういえばアンタ、友達一人しかいなかったのよね……」


「まぁな!」


「なんでドヤ顔なのよ……まぁ良いわ、じゃあ池内君にかけて」


「はいよ」


 俺は井宮にそう言われ、池内に電話を掛ける。

 考えて見れば池内に電話を掛けるのはこれが始めてだな。

 さて、あいつは全体の指揮をしていたけど、一体今はどこで何をしていることやら……。


『もしもし?』


「あぁ、もしもし? 池内か?」


『前橋か! いまどこに居るんだ?』


「あぁ、今はお前らと別れたところから西に来たところだな、お前は今どこに居るんだ? 合流したいんだが……」


『すまん……合流は出来ない』


「え? なんでだよ」


『それは……俺が今敵の牢屋の中だからだ』


 おい、いの一番に指揮官が捕まったぞ。

 いや、なんであの馬鹿(英司)と一緒に初っ端から捕まってんだよ!

 これからの指揮は誰が取るんだよ!


『不覚だった……まさかあんなところにバナナの皮があるなんて……』


 何こいつ、バナナの皮で滑って転んで捕まったの?

 かっこ悪っ!!

 てか、誰だこいつに指揮を任せた奴!

 

『とにかく頼む! 早く俺と捕まった13人を開放してくれ!!』


「13!? おい! さっき英司に掛けたらまだ英司一人だって言ってたぞ!」


『その後攻めに出たお前ら以外の全員が捕まったんだ』


 なんでゲーム開始して初っ端からクラスの半数牢屋の中なんだよ……。

 てか、攻めに来た奴らの中で残ってるのって俺らだけ!?


『頼む! 動けるのは前橋だけなんだ! 俺たちを救ってくれ!』


「いや、敵の陣地に俺と井宮だけ突っ込めるわけねぇだろ!」


『井宮さんも居るのか! それは助かった! 俺が想像していた戦力の倍だ!』


「そりゃあ元の戦力が一人だからなぁ! てか、無理に決まってるだろ! そっちにだって牢屋を守ってる奴らがいるだろ?」


『あぁ、だが数は少ない、お前ならやれると俺は信じてるぞ!』


「信じられても出来ることと出来ない事があるんだよ!」


『とにかく頼む! 俺を……俺たちをこの石城先生の苦痛から開放してくれ!!』


 本音それだろ……。

 てか、牢屋の中で一体何がおきてんだよ!

 後ろからなんか悲鳴が聞こえてきたぞ……。

 そのままは電話は切れてしまった。

 井宮の方を見ると、どうやら井宮の方も同じような事を牢屋の中に居るやつから言われたらしい。


「参ったなぁ……こうなったら一旦陣地に戻って体制を立て直した方がいいな」


「そうね、二人じゃどう考えても助けられないわよね」


「ここは一度陣地に戻ろうぜ」


「そうね、じゃあ見つからないように……」


 そう井宮が良い掛けた瞬間、井宮のスマホが鳴った。


「もしもし?」


 井宮は電話に出て話始めた。

 どうやらクラスの友人かららしいのだが、井宮は話の途中で声を上げた。


「えぇ!? ほ、本当?」


 一体何があったのだろうか?

 俺は話の内容を気にしながら、井宮が電話を終えるのを待った。

 そして、井宮は電話を切り、顔を青くしながら俺に言う。


「……守りの方も全員捕まったって」


「……よし! 俺は寝る!」


「ちょ、ちょっと! 諦めないでよ!」


「いや、どう考えても無理だろ! なんであいつら全員捕まってんだよ! これもう完全に詰んだだろ!」


 まさかの俺たち二人を残してクラスメイト全員が捕まってしまった。

 てか、どうやったらそんなことになるんだよ!


「な、なんとか……皆を助けに……」


「いや、絶対ムリだろ! 相手は残りが二人だって事も知ってる! 絶対に守りを集中させてくる!」


 絶対に勝てない。

 まぁ、別に勝ち負けはどうでも良いのだが……。

 このままだと俺もあの牢屋という名の地獄に行かなければ行けなくなってしまう……。

 しかもあの石城先生だ、何をされるかわかったもんじゃない。


「いっそ、本当に二人でどっかに隠れてやり過ごすか?」


「なんだかその話が現実に見えてきたわよ……」


 さて、どうするか……助けに行っても捕まる。

 このままこうして逃げていても時間の問題。

 どっちにしろ何か対策を立てないそのうちすぐに捕まるな……。


「牢屋には行きたくねぇし……かと言ってこのまま逃げるのも疲れる……」


 俺と井宮が今後の事を考えていると、急に誰かが叫びながら走ってこちらに向かってきた。


「な、なんだ!?」


 まさか敵か!?

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