第49話 宿泊学習編26
「居ないな、面倒だから」
「そ、そうなんだ……じゃ、じゃぁ今日も頑張ろうね」
「あ、あぁ……」
俺がそう言うと、女子三人のうちの一人が頬を赤らめながらその場を去っていった。
何が言いたかったのだろうか?
はっ!
あれか「あんな捻くれた性格で彼女なんて居るわけないわよ! 確かめてきましょう!」って感じで三人で来たのか!
顔を赤くしていたのは、笑いをこらえるのに必死だったからか!
くそぉ……人の事を馬鹿にしやがってぇ……。
「英司!」
「なんだよモテ男君」
「いま、あの子達に酷い辱めを受けた気がする!!」
「なんでだよ……どういう思考回路してたらそういう結論に至るんだよ……」
英司は俺の話を聞きながらため息を吐いていた。
こいつはもっと友達に対してもっと優しい対応を取れないのか?
まったく、友人が酷い辱めを受けたって言うのに……。
「ねぇ……」
「ん? あ……」
俺と英司がそんな話をしていると、今度は井宮が俺の元にやってきた。
なんだか今日は欲声をかけられる日だな。
もしかしてあれか?
俺の悪評が広まりだしてるからか?
まぁ、井宮に限ってはそんな話しをしに来た訳ではななさそうだが。
「おぉ、大丈夫か? 昨日崖から落ちて怪我とかしてないか?」
「だ、大丈夫よ……そ、その……昨日は……ありがと」
「ん? まぁ、別に……俺がしたくてしたことだからな、お礼を言われる筋合いはないぞ」
まぁ、井宮には色々感謝してるからな(主にゲーム内で)。
普通に心配だったしな。
井宮とはこれからも良いゲーム仲間でいたいし、あんなことで仲違いするのもなんか嫌だし、俺も謝っておくか。
「まぁあれだ、俺も悪かったよ、正直俺は自分の言った事を否定する気は無いけど……まぁ……言い方があったよな……悪かった」
「べ、別に……それは……」
なんだか歯切れの悪い井宮、そしてそんな井宮を見て何かを察した英司。
なんだ?
井宮はまだ何か俺に言いたいことでもあるのか?
「じゃ、じゃぁ私行くから……」
「お、おう。また後でな」
そう言うと井宮は下を向いたまま、俺の元を離れて行った。
やっぱり具合でも悪いのか?
「おいコラ!」
「ん? なんだ?」
「なんだじゃねぇ! あれはどういうことだ!」
「どういうことってなんだ?」
「なんであの難攻不落の城とまで言われたあの井宮さんが落ちてんだよ!! しかもお前みたいな捻くれ者に!!」
「ん? 一体何の話をしてるんだ?」
相変わらず英司は馬鹿のようだ。
城が落ちるだの落ちないだのと……一体何の話をしているんだ。
「くそぉ……なんで圭司ばっかりこんなに……うぅ……」
「おい、泣いてるのか?」
「うるせぇ! 泣きたくもならぁ!」
「なんでだよ……」
やっぱり英司は馬鹿のようだ。
✱
『それでは、これよりクラス対抗のどろ刑を始めたいと思います!』
そう高らかに宣言したのは、村上先生だった。
石城先生は流石にやりすぎだと、現在学年主任の先生にこってり絞られているらしい。
まぁ、周りが結婚して不安なのはわかるけど、生徒に手を出しちゃ駄目だよ。
「なぁ池内」
「ん? どうした前橋?」
俺は近くに居た池内に声をかける。
今は一日目同様にクラス別に班ごとで並んでいる状況だ。
「結局俺たちは警察なのかな? それとも泥棒か?」
「いや、一般人になったよ、だから警察である三組を捕まえなくちゃいけない」
「つまり、俺たちは一組から逃げればいいんだな?」
「あぁ、そうだよ。クラスごとにこの色の違うキャップを被るから、それでクラスを判別するんだ」
俺たちに渡されたキャップの色は青色だった。
何でも一組は赤色で三組は黄色らしい。
つまり俺たちは赤色のキャップから逃げて、黄色のキャップの奴らを捕まえなくちゃいけないらしい。
「前橋」
「ん? なんだよ」
「……ありがとな、俺自信がついたよ!」
「は?」
こいつは一体何を言っているんだ?
「今日のどろ刑、俺がクラスを指揮する! そして絶対に勝ってみせる! そうしないと俺はお前のライバルを名乗れないからな」
「え? ん? はい?」
こいつマジで何を言ってるんだ?
俺のライバル?
そういえばそんな事言ってたけど……それとこのレクリエーションに何の関係があるんだ?
別に俺は面倒ごとに俺を巻き込まなければそれで良いんだが……。
てか、池内の奴なんでこんな生き生きしてるんだ?
まぁ、今回は俺が指揮をしなくて済むし、まぁ良いか……。
「皆聞いてくれ! 昨日は前橋の指揮のおかげでうちのクラスは勝つことが出来た!」
うわっ!
アイツまたクラス全員の前で話し始めた!
よくあんな真似が出来るなぁ……。
俺をライバルとか言ってるけど、俺の方があいつのライバルを名乗れねえよ……いや名乗る気もないんだけど……。
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