第48話 宿泊学習編25

「はーい、これから今日のレクリエーションの説明を始めまーす!」


 さて、今日は何をさせられるのか……。

 と言うか、今日はなんだか皆から見られる気がするんだが、これは俺が自意識過剰なだけだろうか?

 まぁいいや、今日も適当にレクリエーションを済ませよう。

 俺がそんな事を考えて居ると石城先生が話を続ける。


「今回はクラス全員で協力してドロ刑をしてもらいまーす!」


 またアホそうなレクリエーションだぁ……。

 てか、この人数でドロ刑って面倒そうだなぁ……早めに捕まって檻の中にいよう。


「ドロ刑だってよ、なんか懐かしいな、小学生の頃よくやったよな?」


「そうか? 俺はあんまりやったことないぞ」


「あぁ、まぁ一人を好むお前に取ってはそういうもんか」


「まぁな……てかクラス全員で協力してドロ刑ってなんだ?」


「昨日みたいに三クラス合同って事なんじゃねぇの?」


「そうしたら、泥棒と警察の2つにしか別れねぇーぞ?」


「あぁそうか……」


 俺と英司がそんな事を話ていると、石城先生は説明を続けた。


「今回のルールは少し特殊で泥棒と警察の他に一般人と言う役を追加しまーす!」


「せんせーい!」


「はい、どうしましたか? 交際を申し込みたい場合は婚姻届に名前と印鑑を押して先生に持ってきてね」


「い、いえ……一般人という配役はどんな役なんですか?」


「良い質問ですねぇ〜、ご褒美に先生が結婚してあげましょう。ここに私のマイ婚姻届がありますので、後で印鑑を持ってきてくださーい」


「いや、絶対に嫌ですよ! だからどんな配役なんですか?」


「嫌ってどういうことかしらぁ〜? 一般人は警察を捕まえる事が出来ます。そして一般人は泥棒から人質として捉えられます。つまり、いつもは2役の構図が3役になるてことですね、わかりますか?」


「つまり、警察は泥棒を捕まえて泥棒は一般人を捕まえて、一般人は警察を捕まえるってことですか?」


「そうです、理解が早くていいですねぇ〜。とりあえず結婚を前提にお付き合いからでも構いませんよ?」


「いえ遠慮します」


 とりあえずルールと石城先生の結婚欲がすごいのはわかった。

 さて、とりあえずどの配役になったにしてもさっさと捕まって大人しくしてよう。


「ちなみに勝ったクラスには昨日同様商品を用意してまーす!」


「「「いりません!!」」」


 商品と言われた瞬間、昨日の石城先生からの商品を思い出したのか、男子全員がそう叫んだ。

 

「あらあら、皆さん遠慮しないでいいのよぉ〜」


 別に遠慮してるわけではないのだが……。


「それに今回はもっと素敵な物ですよぉ〜。先生のパン……」


「おい! 取り押さえろ!」


「この独身とんでもない事を言おうとしたぞ!!」


「だから私は石城先生に任せない方が良いって言ったんです!!」


「は、離してください!! な、なんでですかぁ〜!!」


 石城先生が何かを言おうとした瞬間、他の先生達が石城先生を取り押さえる。

 石城先生はそのままメガホンを奪われ、そのまま先生達に連れて行かれた。

 なんと言うか……ウチの学校の教員はやっぱりう普通じゃないようだ。


「なんかとんでもんかったな……」


「確かにな……はぁ、それにしても面倒だなぁ……」


 説明が終わり、それぞれのクラスの委員長がくじを引いてクラスの役を決めていた。

 その間、俺たちは班ごとに分かれて配役が決まるのを待っていた。


「あれ? 池内は?」


「いや、あいつ委員長だぞ」


「そうだったの?」


「流石はお前、他人に全く興味ないのな」


「俺が興味あるのはゲームの発売日とイベント日だ」


「あっそ、何でも良いけど……これから多分お前大変だぞ」


「大変?」


「まぁ……そのうち気がつくよ」


「? まぁ良いけど……早く終わってくれないかなぁ……」


 なんて事を俺が英司と話していると、昨晩池内や井宮達と一緒に遭難した班の女子達が俺の前にやってきた。


「ま、前橋君……」


「あ? あぁ……何?」


 どうせ昨日の事で何か良いに来たのだろう。

 まぁ、結構酷い事をこいつらの前で言ったしな。

 でもこれでボッチの道が更に安泰になる。

 女子から嫌われれば、それはもうクラスの嫌われ者だ。

 さぁ、一体どんな罵詈雑言を俺に浴びせる?

 出来るだけ優しく言ってね、俺泣いちゃうから……。


「き、昨日はありがとう……前橋君の言うとおりだったよ」


「なんか、私達も焦っててさ……ありがとう」


「前橋君てその……か、かっこいいね、冷静に対応出来て」


 ………ん?

 なんだこいつら、一体誰の話をしているん?

 かっこいい?

 冷静な判断?

 どう考えても俺じゃないぞ?

 一体俺に何を言いにきたんだ?

 だが、なんか怒ってないみたいだな……。


「お、おう?」


 とりあえず返事はしておこう。


「あ、あのさ……前橋君って付き合ってる人居ないの?」


 付き合ってる?

 なんでそんな事を聞くんだ?

 うーむ……マジで謎だ……先生も変わった人が多いが、生徒も変わった奴が多いな、この学校は……。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る