第47話 宿泊学習編24
✱
『お前は一応俺にとって特別な存在だからな』
私はテントに戻ってきて、さっき前橋に言われた言葉を思い出して眠れずにいた。
てか、何よ!
口では友達じゃないとか言っておいて、特別な存在ってなによ!!
マジであいつ意味わからない!
理屈っぽいこと並べて説教みたいな事を言い出したかと思えば、心配してないとは言ってないとか言い出して助けに来るなんて……。
そんなの……そんなの……。
「普通にかっこいいじゃん……」
私はテントの中で寝袋に包まりそうつぶやいて顔が熱くなるのを感じていた。
あれからずっと前橋の事が頭から離れない。
最初は酷い奴だと思った、二人の心配もしないで面倒だからで済ませるような最低な奴だって……でもそれは違って、あいつもあいつなりに二人を心配していた。
だから、二人が早く見つかるように私達に自分じゃなくて先生を頼るように言ったのだ。
なのに私はそんな前橋の気持ちになんてまるで気がつかづ、前橋の事を思いっきり打ってしまった。
しかも助けてもらって、まだちゃんとお礼も言えていない……。
「最低なのは一体どっちよ……」
私はそんな事を考えながら、前橋にメッセージでお礼を言うべきか否かを迷っていた。
「でも……やっぱりここは直接言う方が良いわよね……てかあいつ寝てるかもしれないし……でも先に謝っておけば後々楽かもしれないし……あぁ!! もう!!」
結局悩んで眠れなかった。
✱
俺は朝は強い方だと思っていた。
いつも目覚ましの鳴る数分前には起きてベッドから出て居るのだが、今日は目覚ましの音で目を覚ました。
しかも体はだるいしまだ眠気もある、正直かなりしんどい。
それもこれも昨日の夜にあんな事をしたせいだ。
俺はテントから出て朝日を見る。
「あぁ……だるい……」
「おい……さっさと行くぞ」
「あぁ……」
そう言ってきたのは、俺に続いてテントから出てきた英司だ。
宿泊学習の朝はラジオ体操から始まる。
朝の7時に集合し、皆でラジオ体操をした後そのまま朝食を食べるらしい。
一体このラジオ体操に何の意味があるって言うんだ?
面倒くせぇ……。
「よっ! 前橋!」
「眠そうだな、まぁ俺らも眠いけど」
「あ? お前ら……」
そう言って集合場所に行く俺に話かけてきたのは、昨日遭難した他の班の男子三人だった。
「昨日はマジでありがとな」
「お前の言うとおりだよ……本当に二人が心配だったらちゃんとした判断をしないとだったよな」
「なんだよ急に……」
てっきり昨日の俺の発言で俺は嫌われたと思ったが、どうやらそうでも無いらしい。
なんだ、別に嫌ってくれても良かったのだが。
「まぁ、次があるかはわかんねぇけど、次回からは気をつけろよ」
「あぁ、そうするよ」
「今日も頑張ろうぜ」
そう言って三人は眠いと言いつつも元気そうに歩いて行った。
「ところでアイツらの名前なんだっけ?」
「いや、知らなかったのかよ!」
後ろからツッコンで来る英司にそんなのいちいち覚えてられるかと心の中で返す。
ラジオ体操時は皆眠そうだった。
だるそうに手首や足首をひねり、だるそうに背伸びをする。
これで何かが変わるとは到底思えないのだが……。
「前橋」
「んあ? 池内か」
ラジオ体操が終わり、次に話かけて来たのは池内だった。
池内は朝早くからテントを出たらしく、俺が起きた時にはもう居なかった。
一体何をしてたんだろうか?
まぁ、別に興味ないけど。
「俺、お前を目標にするよ!」
「はぁ?」
朝からこの馬鹿は何を言ってるんだ?
昨日遭難したときに頭でも打ったか?
「確かにお前の言うとおりだ、自分で決めて自分でやってみなきゃだよな!!」
「そうだなぁーじゃぁ俺はもう行くから」
なんかこいつと関わるとまた面倒なことになりそうなので、俺はさっさと逃げる。
「前橋! お前は俺のライバルだ! 絶対に負けないからなぁ!」
勝手にライバルにするな!!
てかなんだライバルって!
あれか?
ゲームで物語のところどころのイベントに出てきて勝負を仕掛けて来るやつか?
なんでも良いけど、俺を面倒事には巻き込まないでくれ。
「良かったな、ライバルが出来て」
「なんだよライバルって……四天王倒したらチャンピオンとして現れるの?」
友達も要らないが、俺はライバルも要らないんだが……。
俺はそんな事を考えながら、英司と共に施設の食堂に向かった。
朝食は施設の食堂で皆でとり、食事が済んだらあテントを片付け、施設の中の宿泊スペースに移動するらしい。
てか、そういうところがあるなら最初からそこに泊まればいいのに。
その後はまた午前午後を通してレクリエーションをするらしいのだが、昨日の感じからして嫌な予感しかしない……。
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