第44話 宿泊学習編21
✱
「え、マジでここどこ?」
「真っ暗でわからないわね」
「わ、私達どこから来たっけ?」
二人を探している途中、私達は走って来た森の中で迷子になってしまった。
まさか、まっすぐ走って来ただけでこんなことになるなんて思わなかった。
「ごめん、私のせいで……」
「井宮さんのせいじゃないよ! 大丈夫だよそんなに遠くには来ていないし、直ぐに戻れるよ」
池内くんが気を使って私にそう言ってくれる。
皆も気を使って池内くんと同じように言ってくれるけど、責任を感じてしまう。
私が闇雲に走りださなければこんな事にはならなかったのに……。
「どうする? スマホの電波も届かないぞ」
「二人の事も心配だけど、まずは自分達が助ける事を考えないとな」
「とりあえず、歩いてみるか?」
「いや、でも闇雲に歩かないほうが良いんじゃないか?」
「でも、このままじっとしててもしょうがなくない?」
まさか本当にこんなことになってしまうなんて……こんな時、前橋にならどう考えるだろう……。
「あっ……」
なんで私……今前橋の事を考えたんだろう。
さっきまで最低な奴だって思ってたのに……。
もしかしたら、私は心のどこかで前橋に何かを期待しているのかもしれない。
口も悪いし、性格もひねくれているけど、前橋はいざと言う時に頼りになると、私はそう思っていた。
「こんな時だけ頼ろうとして……私も大概最低かも……」
あんな事を言った後なのに、私は自分の都合で前橋に何を求めているのだろうか。
「真っ暗で何も見えないな……」
「とにかく気をつけよう、足を踏み外して崖の下にでも落ちて言ったら大変だ!」
「そうね、とりあえずこの辺りは大丈夫そうね」
そんな話をしている途中だった、私は自分の失敗を取り返そうと近くに何か目印はないかと少し歩き始めた。
そして次の瞬間、私は自分の片足が地面を踏まずにそのまま下の方に吸い込まれる感覚を感じた。
「きゃっ!!」
私の体はバランスを崩し、そのまま下に落ちて行った。
「え!? 井宮さん!」
「ま、まさかこの下に!?」
「う、嘘でしょ!!」
「おーい! 井宮さーん!!」
しかし、痛みはそんなになかった。
暗くてどのくらいの高さから落ちたのかはわからないけど、そんなに高い高さからは落ちなかったようだ。
しかも下の方は柔らかい土だったようで、腰を強く打ったりもしなかった。
そこまでは良かったけど……。
「どうやって上に登ろうかしら……」
スマホのライトを照らして上を見ると、落ちた場所から今居る場所は結構な高さがあり、登れそうにはなかった。
しかも近くには階段も段差もなく、上まで登るのは難しそうだ。
「おーい! 井宮さん大丈夫!?」
「わ、私は大丈夫! それよりみんなも気をつけて!」
どうしよう……。
私は辺りを見渡しながらどうしようかを考える。
また、皆に迷惑をかけてしまった。
私……何をやってるんだろ……一人で焦って……。
「………はぁ」
私はため息を吐きながら、そんな事を考える。
遭難して崖に落ちて……こんなんだったら前橋の言うとおりに先生に相談していればよかった。
結局、口は悪かったけど前橋の言葉は正しかった。
こういう時にまず最初に頼るのは自分達よりも知識や経験を持っている大人だ。
「どうしよう……」
私は一人、崖の下でこの状況をどうしようかと考える。
✱
「あいつら居ねぇな……」
高城と美佳をテントまで送り届けた後、俺は英司や井宮を探して森の中を歩いていた。
まさか、というか確実に二次遭難をしている可能性が高い。
「はぁ……面倒くせぇ……」
と言うか、俺こそなんで直ぐに先生に助けを求めないのだろうか?
アイツらにあんな事を行っておいて、今は言った事と真逆の事をしている。
まぁ、でも先生に言って説教を受けるのも面倒だしな。
さっさとあいつら探してテントに戻れば問題は無いだろう。
しかし、このキャンプ場は少し不親切だな、もう少しキャンプ場と森の区別をわかりやすくして欲しいものだ。
こんな直ぐに道を間違えるようなキャンプ場じゃ、安心して泊まれないぞ。
俺がそんな事を考えながら山道を歩いていると、先の方に何やら小さい光が見えた。
小さい光が無数に集まっている。
もしかしてあそこに居るのか?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます