第43話 宿泊学習編20
✱
最低、最低!
あんな薄情なやつだなんて思わなかった!!
私は先程の前橋の言葉を思い出しながら、暗い山道を走った。
「高城さーん!! 美佳ぁ!!」
私は声を出しながら二人を探す。
しかし声は帰って来ない。
「井宮さん! 一人は危険だよ!」
そう言って後ろから池内君が私の腕を掴む。
皆も私を追ってやってきたようだ。
「手分けして探そう! 一人で探すのは危険だし、二次遭難の心配もある」
「そ、そうよね……ごめんなさい」
「いや、心配な気持ちは分かるよ……でもまさか前橋があんな考えの奴だなんて……」
「ひでぇ奴だよ!」
「あぁ、凄いやつかもって思ってたけど、あんなこと言うか?」
クラスメイトが前橋の事をそう言っていた。
前橋の評判もこれで落ちてしまうだろう。
やっぱりあんな奴に心配なんてするんじゃなかった。
でも、今はそんな奴のことよりも早く二人を見つけないと!
「早く探しましょう! もしかしたら危険な状態かもしれないし!」
「あぁ、そうだな!」
私達は相談し、二手に分かれて二人を探すことにした。
一つの班は二人を探し、もう一つの班は先生を呼びに行くことになった。
しかし、そんな中で私達はとあることに気がついた。
「ね、ねぇ……あのさ……聞きたいことが一つあるんだけど……」
「どうしたの?」
「ここ……どこ?」
「え……」
同じクラスの女子生徒の言葉に、私達は皆凍りついた。
私は夢中で走ってきてしまい、現在地の場所なんかわからない。
しかも周りは真っ暗でどこがどこかなんてわからない。
恐れていた事がこんなにも簡単に起きてしまった。
「ま、まさか…」
「ミイラ取りが……」
「ミイラになったな」
そう、私達も遭難してしまったのだ。
✱
頬を打たれたのは何年ぶりだろうか?
俺はヒリヒリする頬を抑えながら、懐中電灯を持って暗い夜の山道を歩く。
二人の行動を考えるに、友人のテントに言ってないということは、その前にトイレに寄った可能性が高い。
たしかトイレからキャンプ場以外からも色々な道に続いていたはずだ。
恐らくそこで山の中に入ってしまったのだろう。
「なんで俺がこんな事を……早く見つけてテントに戻って寝よう」
俺はそんな事を考えながら山道を歩く。
すると、どこからか人の声が聞こえてきた。
一人で何か騒いでいるような声、間違い無い井宮の友達の美佳とかいうやつだ。
「うわぁーん、もう一時間以上もここにいるよぉ〜帰りたいよぉ〜」
「み、美佳ちゃん泣かないで……はぁ、どうしたら……」
「まるでガキだな」
「え……」
どうやら俺の予想は当たっていたらしい。
「ま、前橋君!? どうしてここに?」
「お前らが居ないって騒ぎ出してな、仕方ないから探しに来てやったんだよ……怪我とかねぇか?」
「う、うん……」
「うわぁぁぁん前橋く〜ん! 怖かったよぉ〜!」
「くっつくなさっさと戻るぞ、先生に見つかったら色々とうるさいし面倒だ」
「う、うんわかった」
俺は二人にそう言い、元来た道を引き返す。
美佳は怖かったのか、ずっと俺の右手にしがみついており、かなり歩きにくかった。
「お前ら二人だけってことは、井宮たちとは会ってないのか」
「え? 井宮さん? 会ってないけど、まさか井宮さんも私たちを探してくれてるの?」
俺はそう言われた瞬間、なぜか打たれた頬がズキッと痛むのを感じた。
「まぁな……」
まだあいつらが探しているのだとすれば、あいつらも見つけないとな……はぁ……面倒クセェ……。
そんな事を考えている間に俺たちはテントに戻ってきた。
しかし、キャンプ場は俺が二人を探しに行く前と同様に静かだった。
おかしい、俺の助言を聞き少なくとも誰かは先生を呼びに行ってもおかしく無いのに、なんでこんなに静かなんだ?
「はぁ……やっと帰ってこれたぁ〜」
「良かったぁ……ありがとう前橋君」
「………」
「前橋君?」
まさかと思うが、あいつら全員二次遭難でもしたか?
確か井宮が走っていった方向は崖なんかもあって危険だって先生が言っていたが……。
「高城、美佳、お前らはまた遭難するとヤバいから大人しく自分のテントで待ってろ」
「え? な、何? どうしたの?」
「嫌な予感がするから言ってくる。20分しても俺が戻って来なかったら、先生に言って俺や井宮が遭難したって言ってくれ」
「え!? まさか井宮さんも!」
「うそ! 椿まで遭難!?」
「わからねぇけど……よりに寄って危険な方に行っちまったからな」
俺は二人にそう言い、地面に残っている井宮達の足跡を追った。
足跡が残っているが、暗くてわかりにくい、たどり着けるだろうか?
「あぁくそっ! なんで俺がこんな面倒な事を!!」
でも先生からのお説教はもっと面倒だし。
はぁ……なんでミイラ取りがミイラになってんだよ、あのバカ共……。
「これだから陽キャは嫌いだ」
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