第38話 宿泊学習編15
「まぁ、適当にだな」
「なんだ、井宮に入れないのか?」
「もしかして、前橋も高城さん派なのか!!」
「そう言う事じゃねぇよ、別に入れたい相手が居ないだけだ」
その用紙とやらが来たら、早々に適当な女子の名前を書いて出しておこう。
色々聞かれるのも面倒だし、適当な名前を書いたと言っておけば興味も失せるだろう。
「まぁ、確かに前橋にとっては同じ学校の女子なんて眼中にないのかもしれないな」
「なるほど! 流石は前橋だな!」
いや、なんでだよ。
なんでこいつら俺の事をこんなに評価してんだよ。
お前らサッカー部と野球部の部員なんて、スクールカースト最上位みたいな奴らじゃん!
なんでカースト最下位の俺を評価してんだよ!
それともそう言う嫌味か?
嫌味を言って俺を馬鹿にしてるのか?
なんでも良いが、こいつらとこれ以上一緒に居るのは精神的にきついな。
早く上がってテントに戻ろう、今なら脱衣所に居る人も少ないだろう。
「ん? もう行くのか?」
「疲れてるんだ、テントに戻って休むよ」
「そうか! じゃあまた明日!」
「おう」
俺はそう言って二人に別れを告げて、風呂から上がる。
はぁ……陽キャと話すのなんか変に緊張するなぁ……。
「よし! あと少しだ!!」
「がんばれ!!」
「ぬぅぅぅぅおぉぉぉぉぉ!!」
俺が風呂から上がると、女子風呂を覗こうとしていた連中は、大勢で組体操のピラミッドを作り、壁を越えようとしたいた。
その元気をなんでさっきのレクリエーションで使えないのか……。
てか、上の方に居るの英司だし。
「あと……すこしぃぃぃ!!」
英司はそう言いながら、壁に手を伸ばすがわずかに届かない。
そんな時、男湯の扉がガラリと開いた。
「コラ男子またお前らか!!」
「げっ! 先生!!」
「なぜに全裸!?」
「全く、一組の奴らといい、男子は女子を覗くことしか考えておらんのか! バカな事をしとらんで、ゆっくり湯につかれ!」
「「「「は、はい!!」」」」」
引率の男性教諭の言葉で、先ほどまで綺麗に出来ていたピラミッドは崩れ、みんな湯舟につかり始めた。
またってことは一組の奴らも同じような事をやったんだろうな……。
「くそぉ……井宮さんの綺麗な体を見るチャンスだったのに!」
「やめろ! 前橋に殺されるぞ! そこは高城さんにしておけ!」
「俺は前橋のたくましい体を凝視出来たから満足だ……」
「「え………」」
「ん? どうしたお前ら?」
「悪い、ちょっとこっち来ないでくれ」
「なんかお前……怖い」
うっ!
なんだろうか、急に悪寒が……気のせいか?
さっさと着替えてテントに戻ろう、湯冷めをして風邪でも引いたら大変だ。
俺はそんな事を考えながら着替えを済ませ、大浴場を後にする。
外に出ると月が綺麗だった。
最近家の中でゲームばかりしていたから気が付かなかったが、空ってこんなに綺麗だったんだな……。
「さて、テントに戻るか」
そうして俺が歩き始めると、もう一人大浴場から誰かが出てきた。
「ん?」
「あ、井宮」
「偶然ね、あんたも今上がったの?」
「あぁ、まぁな」
やって来たのは井宮だった。
風呂上りで体からは湯気が出ており、なんだかいい香りがした。
「男子の方うるさかったけど何かあったの?」
「まぁ、あれだな……お約束ってやつだ。女子風呂は静かそうでいいな」
「そんな事無いわよ。女子は女子で誰の胸が一番大きいとかそんな話ばっかり。私なんか後ろから鷲掴みされたわ」
そんな話しを今男湯に居る奴らが聞いたら、またあのピラミッドを作って覗きにいきそうだな。
「女子も女子で大変だな」
「男子はどうせ女子風呂覗こうとか考えてたんでしょ?」
「良くわかるな」
「まぁそんなもんでしょ男子なんて、まさかと思うけど参加してないわよね?」
「したところで成功なんてしないのは分かってるしな。それに今の時代はネットを探せばそんな画像いくらでも………」
そんな話を俺がしていると、どんどん井宮の目が冷たくなっていった。
ヤバイ、女子にする話ではなかった!
「ま、まぁ……今のは忘れろ」
「へぇ~あんたって意外とむっつりなんだ~」
「な、なんだと! 俺だって男子高校生だ! 一般的な興味くらいあるわ!」
「へぇ~そうなんだぁ~」
井宮はそう言いながらニヤ二ヤと笑い始めた。
こいつめ、俺をからかって遊んでやがる。
これ以上おもちゃにされても癪だし、ここは話題を変えよう。
「そういえば、お前イベントの周回どうなった?」
「終わるわけないでしょ? 忙しかったんだから」
「まぁ、だろうな」
「だから今夜手伝ってよ」
「はぁ? なんで夜なんだよ」
「ゆっくり出来るのなんて、みんなが寝静まった時だけでしょ! バスで約束したんだから手伝いなさいよ」
「まぁ、良いけどよぉ……」
「じゃぁ、あとでまらメッセージ送るから待ってて」
「はいよ」
井宮はそう言って自分のテントに戻って行った。
「はぁ……強引な奴……まぁでもいっか、どうせ消灯時間になんて寝れねーし」
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