第36話 宿泊学習編13
*
「え!? 言えなかった?」
「うん……」
夕食を食べ終えた後、私は高城さんから自由時間に前橋と何を話たのかを聞いて居た。
どうやら前橋は高城さんに自分と同じ小学校だったのではないかと聞いてきたらしいのだが、高城さんは違うと言ってしまったようだ。
「なんでそこで変な嘘つくのよ」
「だって……なんか前橋君の目が怖くて……」
「あいつの目が? いつもなんだかダルそうな目つきなのに?」
「うん、もしかしたら何かあったのかも」
テントの中には今は私と高城さんだけだ、美佳は友達のテントに何かをしに行ってしまった。
まぁ、美佳が居ないからこんな話が出来るんだけど……。
「まぁ、それは良いんだけど……問題はそのあとの話よね?」
「う、うん……」
「まさか、前橋の小学校時代の好きな相手が太ってた頃の高城さんだったなんてねぇ……」
もしかしてあいつって少しデブ専だったりするのかしら?
まぁ、今もそうかは分からないけど。
「ちゃんと同じ学校って言っておけば、今頃もしかしたら付き合えてたかもしれないのにねぇ~」
「だ、だって……何かありそうだったから……」
「それも気になるけど、今はなんとか本当の事を話して高城さんがブーちゃんだった事をあいつに言わないと!」
「そ、そうなんだけど……どうしたら良いか分からなくて……」
まぁそうよね。
まさか当時の自分を好きだったなんて夢にも思わないだろうしね。
というか、前橋はなんで小学校の話題を振られてそんな目をしたのかしら?
あいつ、小学生の頃に何かあったのかしら?
「うぅ……私やっぱりあの時の体系に戻った方が良いかな!?」
「それはやめなさい、もったいないから」
若干高城さんも前橋の昔の好きな相手が自分だって分かって少し混乱してるみたいね。
ここは少し高城さんが落ち着いてから行動に移さないと危険かも……。
なんとかして二人が上手くいくようにサポートしないと。
あれ?
なんでだろう……なんか胸の奥がモヤモヤするような……何か忘れてるみたいなこの感覚はなんだろう?
二人がくっ付いて、あいつも普通にみんなと話すようになったら……あいつ私とゲーム……してくれるのかな?
「………」
「井宮さん?」
「え? な、なに?」
「どうかしたの? なんかボーっとしてたみたいだけど……」
「あ、あぁごめんごめん! ちょっと考え事しててさ」
いけないいけない!
何変な事考えてるんだろう私!
あのゲームバカの事だから、彼女なんて出来てもゲームは続けるわよ!
私がそんな事を考えているうちにテントの入口が開き、美佳が戻ってきた。
「二人とも、これ持ってきたよ!」
「え? 何? これ?」
「一年女子限定! 一年男子イケメンランキングの集計表」
「あんた……そんなのやってたの?」
「まぁねぇ~なんか男子も裏で女性のランキングつけてるみたいだし、対抗して男子版も作ったのよ!」
「それを作って何の意味があるのよ……」
「ちなみに後二人の票が入れば完成なんだけど、誰に入れる? やっぱり前橋君?」
「わ、私は前橋君かな……カッコいいし」
「オッケー、まぁわかりきってたことだけど、一位はぶっちぎりで前橋君だったよ。レクリエーションで更に人気を上げたね。それで椿は誰に入れるの?」
「私? なら私も前橋で良いわよ」
「おぉーこれで前橋は一年女子ほとんどの票を集めた事になるねぇ~流石私の前橋君!」
「あんたのじゃないでしょ」
「あ、あと適当に二人名前書いて、一応三人まで書けることにしたから」
「あと二人って言われてもねぇ……」
「ちゃんとカッコいい男子にしてよ。まぁ誰かに情けを掛けても良いけど」
そう言われても唯一仲の良い男子にはもう入れちゃったし。
てか、大体あいつ以外にイケメンを選べって方が難しいわよ。
私はあいつ以外の男子とほぼ話さないし、話しても話しが合わないし。
「あれ……なんか私……」
あいつの事ばっかり考えてるような……。
「ん? どうかしたの椿」
「え? あ、いやなんでもないわ……」
仕方ない適当に名前書いて出しておこう。
って言うか……やっぱりモテるんだ……あいつ。
私がそんな事を考えながら表を見ていると、テントの外から声が聞こえてきた。
「おーい女子! 良かったら一緒にトランプでもやらないか? どうせ風呂まで暇だろ?」
「ヤバイ!! 椿! その表早く隠して!!」
「う、うん!!」
声の主は同じ班の池内君だった。
どうやら一緒にトランプをする名目で来たようだ。
私は慌てて表を自分のカバンの中に隠した。
もしかしたら前橋も一緒かな?
「よっ!」
「何もなくて暇でさ」
しかし、入って来たのは池内君とえっと……確か英語みたいな名前の前橋の友達だけだった。
なんだ……前橋は来ないのか……。
私は心の中でふとそんな事を考えてしまった。
なんでだろう、あいつが居ればもっと楽しくなる気がした。
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