第26話 宿泊学習編3

 陣取り合戦のルールはこうだ。

 今からクラスごとに陣地を決めて別れるらしい、陣地にはクラスの番号が掛かれた旗を置き、それを取り合うというものだ。

 生徒は全員体にターゲットという、押されると真っ赤に光る的をつけてスポンジ製の剣を持って他のクラスと戦うらしい。

 ターゲットが赤く光ったらその時点で失格となり、先生達が居る救護スペースに移動となるらしい。


「なんだよこのゲーム……」


「まるでサバゲーのチャンバラ版だな」


 俺と英司はそんな話をしながら、渡されたスポンジ製の剣を持ち、ターゲットを体につける。

 何気にみんなノリノリで、みんな楽しそうに作戦を立てていた。


「はぁ……だりー」


「お前はそう言うと思ったよ」


「だってだるいだろ? なんで高校生にもなってこんな事をしなくちゃならねーんだよ」


「まぁ、気持ちはわかるがこれも学校行事だ」


「そうだぜ前橋! 頑張って一組と三組を倒そうぜ!」


「お前らは楽しそうだな……」


 体育以外で体力を使う運動はしたくないのだが……はぁ……本当に面倒だ。

 そんな事を思いながら、俺たち三人は陣地のある施設から少し離れた森の中にある広場にやって来た。

 なんでもいいが早く終わった欲しいものだ。


「よし! 二組はこれで全員だな!!」


 みんなの前に出て大声でそう言い始めたのは池内だった。

 流石は陽キャ、こういう時にリーダーシップを取れるのはすごいな。


「みんな! やるからには勝とうぜ! 入学したばっかりでまだまだ話したことない奴もいると思うし、どんな奴かわからない奴もいると思うけど、同じ二組の仲間だ! みんなで勝とうぜ!」


「おぉ! 池内良いぞ!」


「確かにやるからには勝たねーとな」


「折角やるんだしね!」


 皆さん乗り気ですねぇ~。

 乗り気なところ悪いんだけど、俺は早々にどうやって退場になるかを考えさせてもらいますよぉ~っと。


「なお、先生からのルール説明で聞いては居ると思うけど、このクラスの大将を決めなくてはいけない!」


 え? なにそれ初耳。

 てか、大将ってなんだよ。

 まぁ、この流れだとこのまま池内辺りがやるんだろうな。


「そこで俺から提案がある! このクラスの大将を前橋にするのはどうだろうか!」


 あぁ、前橋ってやつ気の毒になぁ~こんな状況じゃ絶対に断れないじゃん。

 池内もなかなか酷いことすなぁ~これで負けたら晒しものだよ。

 前橋ってやつ本当に気の毒になぁ~。

 ………まて、前橋って……俺じゃね?


「は?」


「前橋! 前に来てくれ!」


 クラスの全員が俺を見る。

 池内ぃぃぃぃぃ!!

 そう言う事か!

 このレクリエーションで俺を晒しものにして、俺の評判を落とし、小間使いにしても誰も俺をフォロー出来ないようにする気だな!!

 こいつめぇ!!

 やっぱりロクな奴じゃなかった!

 クソッ!

 まさかこんな事になるんて!!


「前橋か! 確かに前橋ならな!」


「あぁ、あの井宮をも落とした男だ! きっと上手い戦術を考えてくれる!」


「イケメンの大将、確かに良いわねぇ~」


「カッコいいし、前橋君になら命令されたいかも」


 なんかクラスのみんながコソコソ何をかを言っているようだが、きっと俺の悪口だろう。

 なんであんなパッとしない不細工が大将なんだとか言ってるんだろうな、どうせ……。


「さぁ前橋! 前に!」


 俺は池内に連れられ、みんなの前に出た。

 なんでこうなる……。


「いや、俺以外にも適任な奴はいるだろ?」


 俺はみんなから舐められないように、テンパっている事を隠し、冷静を装って池内にそう言った。


「あぁ、でも前橋は中学時代は剣道や柔道、それにボクシングや合気道なんかもやっていたって聞くし、それに戦略ゲームも好きなんだろ? 対象というのは強さはもちろん、頭の良さも必要だ、前橋は頭の回転が速いと笹原が言っていたからね」


 あいつぅぅぅ!!

 俺の事を売りやがった!!

 なんでそんないらない情報を池内なんかに話やがった!!

 俺はその話を聞きながら、笹原の方を睨む。

 笹原は俺を見ながら親指をグット立てニコッと笑う。

 あのクソ野郎……後でボコボコにしてやる。


「いや、正直言うけど俺にはクラスをまとめる能力なんてない、そう言う能力では池内お前が秀でていると思うが?」


「なら俺は参謀として前橋の手助けに回るさ!」


 なんだ参謀って!

 新しい役職を作るな!

 なんか皆盛り上がって、他の奴らも役職を作りだしただろうが!!

 

「みんな! どうだろうか! 前橋が大将で俺が参謀! 異論があれば遠慮なく行ってくれ」


「異論なんてないぜ!」


「正しい人選だ」


「頼んだわよ二人とも!」


 なんでこいつら無駄にノリが良いんだ!!

 これじゃあ早々に退場出来ないだろうが!!

 そのあと三人一組のチームを組んで敵陣に向かう方向性が決まり、俺は池内から大将の役割を再度確認していた。


「大将は背中にクラスの番号が掛かれた旗を背負うんだ、大将が退場になるか、旗が取られたらそのクラスは敗退だよ」


「あぁ、そう言うこと……」


 はぁ……なんで俺がこんな目に……。

 

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