第25話 宿泊学習編2
「というのは冗談で」
まぁ、そうだよな……高校生に殺し合いをさせる学校なんて漫画やアニメの世界だけだろう。
先生のジョークであろうが、いきなり笑顔でそんな事を言われるとマジな感じがあるからやめて欲しい。
「テントの設営が終わったら、クラス対抗陣取り合戦をしてもらいまーす」
結局意味が分からない事に代わりはなかった。
詳しいルールの説明はテントの設営後にあるらしく、俺たち生徒はまず指定された場所にテントを設営する作業に入った。
「えーとこのポールを伸ばして……あ、前橋そっち持ってくれ」
「あぁわかった」
「さんきゅー」
俺は男子三人で協力してテントを立てていた。
しかし、男子のテントの隣に女子のテントを設営するのは少し問題があるのではなかろうか?
俺がそんな事を考えている間に男子のテントの設営は終了した。
「おぉ、意外と広いな」
「まぁ、男三人だしな」
池内と英司がそんな話をしながら、テントに荷物を置いていた。
はぁ、こんな狭いテントの中で一晩この二人と過ごすのか……ちゃんと寝れるかどうか不安だなぁ……。
俺がそんな事を思っていると、後ろから池内が俺の肩を叩いていきた。
「なぁなぁ前橋!」
「ん? なんだ?」
「あのさ、お前って井宮さんと付き合ってんの?」
「What?」
おっといけない、何を言っているのか意味が分からなすぎて言語を間違えてしまった。
何を馬鹿な事を言っているんだこいつは?
そんな素振り少しも見せたことが無いというのに……。
「なんでそうなる、あいつと俺はそんな仲じゃない」
「そうか? なんかバスで二人で楽しそうにしてたからさ」
「楽しそう? 俺と井宮が?」
楽しい?
イベントの周回を必死にしていたから熱は入っていたが、別にそんなに騒いでいた覚えはないのだが……。
俺と池内がそんな話をしていると、今度は後ろから井宮が俺に話掛けてきた。
「ねぇねぇちょっと」
「ん? なんだよ」
「テント張るの男子も手伝ってくんない? 女子だけじゃきつくて」
「えぇ……めんどくせぇ……」
俺がそう言うと井宮は俺の頭に思いっきりチョップをくらわせる。
「いってっ!」
「良いから手伝え馬鹿、池内もお願い出来る?」
「お、おう」
そう言って井宮はテントの方に戻って行った。
「これのどこが仲良いんだ……」
「いや、それなりに心を許してないとチョップはしてこないと思う」
「バカな事を言ってないでさっさと行くぞ、また井宮に何か言われるのはごめんだ」
俺はそう言って井宮達の元に向かい、池内と一緒にテントの設営を始めた。
こういう時女子というのは良いものだ、女子だからという理由で体力仕事を男子にやらせることが出来る。
「えっと……ペグはどこだ?」
「あ、ここにあるよ」
「あぁ、ありがとう」
そう言って俺にペグを渡して来たのは高城だった。
高城はニコニコしながら俺にペグを渡し、そのまま俺の作業をジーっと見ていた。
なんなんだ高城の奴!!
この前から俺に付きまとって何を考えているんだ!?
正直俺は高城の真意がいまいちよく分からず、若干恐怖を抱いていた。
「ねぇ、何か手伝う事とかある?」
「いや何もない」
「そう? 何かあったら言ってね」
「お、おう……」
そう言って高城はその場を去って行った。
フー良かった、この前みたいにしつこく付きまとって来ることは無いようだ。
これも井宮が高城に何か言ってくれたおかげだろう。
ありがとう井宮!
あとでまたイベント周回付き合うぜ!
*
「どうだった?」
「うん、少し話せた!」
「そう、気を抜いちゃだめよ、勝負はこれからなんだから!」
「わかってる! 私なんとしても前橋君を振り向かせて見せる!」
そう言う高城さんを見ながら、私は横目でペグを地面に刺す前橋を見る。
あの拗らせイケメンを攻略するのは大変だ。
しかし、ゲームもそうだけど、敵が強ければ強いほど、難易度が高ければ高いほど、攻略は燃えるというもの!
「私も出来るだけサポートするわ!」
「うん、ありがとう井宮さん」
うわぁ……可愛いなこの子……性格も良いし、可愛いっていいなぁ……。
私なんて、バリバリ化粧で顔作ってるし……ゲーマーだし……。
はぁ……比べると悲しくなってくるわね、やめよう。
「おい、テント立ったぞ荷物入れろよ」
「あぁ、ありがとう男子」
私と高城さんが話をしていると前橋が私たちにそう言ってきた。
この子にこのかなり拗れた性格の前橋を落とすことは出来るのだろうか?
*
テント設営が一通り終了した後、俺たちは再び施設の前に集められ、先生から先ほど言われたクラス対抗陣取り合戦のルールを聞いていた。
「今から皆さんにやってもらうのは入学して初めてのクラス対抗行事で~す、皆さんクラスのみんなと協力して頑張ってくださいねぇ~!」
あの先生のあのふわふわした感じはどうにかならないのだろうか?
いい年してあの喋り方は若干キモイな……きっと若作りに必死なのかもしれない。
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