第24話 宿泊学習編1
*
「ついに明日か……」
「何がだ?」
「宿泊学習だ」
「あぁ、楽しみだな」
楽しみ?
何を言っているんだ英司の奴は。
楽しみなわけあるものか、強制的な班活動、衣食住をクラスの奴らと過ごさなけれいけないという苦痛!
これのどこが楽しいというんだ!
「はぁ……お前みたいに友人の多いリア充には最高のイベントだろうな」
「いや、お前が友達作ろうとしないだけだろ……てか、まさかと思うがまだ風邪を引く方法とか調べてるんじゃないだろうな?」
「当たり前の事を聞くな、いい方法が何個かあってな、今日の夜実践するつもりだ」
「やめておけよ、変に体調悪いまま宿泊学習に行くことになるぞ」
「ふっ甘いな、俺が調べた方法なら完璧に明日休むことが出来るんだ! しかも明日休んでしまえば宿泊学習の三日間が自動的に休みになり、俺は事実的な三連休を得ることが出来るのだ!」
「はいはい、くだらないこと考えてないで、今日は早く帰って明日に備えろよ~」
そう言いながら英司は教室を出て行った。
まったく、あいつは俺が失敗すると思っているな、今回の俺に抜かりはない!
明日は必ず風邪を引いて休んでやるぜ!!
*
翌日
「よう、圭司」
「……あぁ……なんだ英司か……」
「いい天気で良かったなぁ、これから三日間楽しみだな」
「俺は全然楽しみじゃねぇよ……」
結局俺は学校を休むことが出来なかった。
風邪を引くためにわざと扇風機を回し、冷房を掛けて寝たはずなのに……。
「それで、作戦が失敗した原因は?」
「……姉貴が俺の部屋の異変に気が付いて、設定温度を元に戻した」
「いいお姉さんだな」
「くそぉぉぉぉぉ!! 俺の三連休が!!」
「下らねぇこと言ってないで、バスに乗るぞー」
俺たちはグランドに朝早くから集まっていた。
グランドにはバスが三台止まっており、クラスごとにバスに乗って宿泊施設に向かう。
「はぁ……面倒くせぇ」
「何朝からため息吐いてるのよ」
「あ? 井宮……なんでお前俺の隣に?」
俺がバスの座席に座ると、井宮が隣にやってきてそんな事を言った。
「忘れたの? バスの席順はくじで決めたじゃない」
「あ、そう言えばそうだった……」
どうせ明日は休むからと、昨日は宿泊学習関連の話は全く聞いて居なかった。
「まったくあんたは……まぁ、私が隣で多少はマシでしょ? 知らない奴と隣同士だったら気まずいし」
「そうだ、気を使って声を掛けられるのも嫌だしな」
確かに知っている井宮で良かったかもしれない。
知らない奴が座ったら色々面倒そうだしな。
「到着までの一時間、まぁよろしくね」
「あぁ、多分俺は寝てるだろうけどな」
「じゃあなるべく静かにしておくわよ、丁度イベント来てるし」
「え? 嘘、イベントって昨日から?」
「告知来てたじゃない」
「何!? 風邪ひくことしか考えて無くて忘れてた! 何時からだ!」
「もうやってるわよ」
「予定変更だ、俺も回る!!」
クソッ! すっかり忘れていた!
確かに先週予告していた気がする……最近のゲームはイベントのスパンが短すぎて困るな……。
俺と井宮は二人で協力しながら、ゲームのイベントを周回していた。
「よし! これで装備半分ドロップしたぞ!」
「私まだ頭しか出てないんだけど、なんかドロ率悪いなぁ~」
「まぁ、もう少し回ればドロップすんだろ、集まるまで付き合うから頑張ろうぜ」
「ありがと、じゃあもう一回ね」
「おう」
俺と井宮はバスの中でゲームをしながらバスの時間を過ごした。
しかし、俺はゲームに夢中ですっかり忘れていた。
このバスにはクラスメイトが大勢乗っているという事に……。
「あ、あの二人ってあんな仲良かったのか?」
「い、井宮って男子には冷たいんじゃねぇの? なんかすっげー笑ってるけど」
「井宮さんがライバルなんて……勝てる気がしないんだけど」
「っち、圭司の野郎死ね!」
*
「やっと着いたな」
「ねぇ、私まだ装備全部ドロップしてないんだけど」
「わかったよ、あとで時間あるとき手伝うよ」
「頼むわよ、アンタ以外に知り合いでこのゲームやり込んでるやつ居ないんだんから」
バスから降りた俺たちは山の中の施設に来ていた。
なんでもうちの学校は毎年この施設で研修学習をするらしい。
とは言っても、ほとんど遊びみたいな感じで勉強することはほとんどないらしい。
流石は自由が売りの校風だな。
「はーい、皆さんまずは班ごとに並んでくださーい」
先生の掛け声で俺たちは施設の前に荷物を持って整列する。
一体今から何をさせられることやら……。
「えぇ、まず皆さんには本日皆さんが寝泊まりするテントを設営してもらいます」
あぁ、なんかありがちな奴だなぁ~。
キャンプを通じて仲間との友情を深めろ的なあれか?
そんな一日のキャンプ経験で深まる友情なんてたかが知れてるっての。
俺がそんな事を考えている間に先生は説明を続ける。
「そしてテントの設営が終わったら……殺し合いをしてもらいます」
いや待って、どういうこと!?
おそらくこの場に居た生徒全員がそう思った事だろう。
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