第23話 俺の友人と二人の美少女



「え? 圭司からどうやって信用を得たか?」


 昼休み、俺こと笹原英司は学校一の美少女と名高い二人の美少女に声を掛けられ、内心では少し興奮していた。

 未だに決まらない学校一の美少女。

 その候補ともいえる二人の美少女から話掛けられて興奮しない男子は居ないだろう……一人を除いて。


「あー……どうやってって言われてもなぁ」


 正直そんなの俺自身も良くわかっていない。

 なんか気が付いたらあいつと友達になってた気がするし、何が切っ掛けであいつの中で友達認定されたかも謎だ。

 というか本当に俺は信用されているのだろうか?


「お願い! 何かヒントでも良いの!」


 上目遣いで俺に頼んでくる高城さん。

 そんな事をされては男として何かヒントになる出来事くらいは思い出したい。


「なんか思い出さないの? あんた前橋との付き合い長いんでしょ?」


「い、いや…中学からだから三年くらいなんだけど……」


 男子に冷たいと噂の井宮は俺に対しても冷たい。

 これでこの子がガチのゲーマーでオタクであるという事実には俺も驚きを隠せない。

 しかし、これはこれでなんか良いな……新しい趣味に目覚めてしまいそうだ。


「あ! そういえば」


「何か思い当たる事があったの?」


「あいつと初めて話た時のことだけど……確か俺もあいつも体育であぶれちゃってさ」


「うんうん!」


「なんか、簡単に想像出来るわね……」


「まぁ、あの頃のあいつ今ほど明るくなかったし、髪ももっさりだったからなぁ~」


「いや、今も十分暗いけど? 中学時代はそれ以上だったの!?」


「色で例えると今は黒で中学時代は漆黒」


「なんでそんな闇が深いのよ……」


「そ、それで何を話したの?」


「あぁ、なんて事ない話だったんだけどさ、確か自己紹介みたいな感じの事をしたと思う」


「自己紹介?」


「あぁ、あいつなんも話さねーから、段々俺が暇になって色々あいつに聞いたり、自分の話したりしてたんだ」


「体育の時間に?」


「中学入ったばっかの体育だぞ? 確か体力テストでさ、順番待ちの時間が暇でな」


「なるほど、自己紹介ね。確かに自分の事を知ってもらわないと警戒しちゃうわよね!」


「というか、さっきからなんでそんな事を俺に聞いてくるんだ? 高城はともかく井宮まで」


「あぁ、実はこの子ね」


 俺はそこで高城さんと前橋の関係を知った。

 そして、俺は前橋に対して殺意が芽生えるのを感じた。


「なるほど……圭司をねぇ……」


「そ、そうなの……は、恥ずかしいから誰にも言わないでね!」


「あぁ、それは言わないよ……でもどうしようかな? 俺のこの胸に沸いたあいつへの殺意は……」


「いや、アンタあいつの唯一の友達でしょうが……」


「んなもん知るか! そもそもあいつイメチェンしてからモテすぎなんだよ死ね!!」


「本当にこいつに聞いて大丈夫だったのか?」


「え? イメチェン? そう言えばさっきも前橋君がもっさりだったとか言ってたけど、中学時代からあんな感じじゃなかったの?」


「いや? 中学二年まではめちゃくちゃ髪長くてさあいつ、女子からも人気なんて全くなかったんだ」


 当時の圭司は前髪は目に掛かるを通り越して、目を前髪で隠しており、後ろ髪も肩ぐらいまであって、一部の女子からキモイとか言われていた。


「へぇ~そうなんだ、私はてっきり中学時代からモテモテなんだと思ってたわ」


「まぁ、中学二年の後半からはそうだったよ、でもあの性格だろ? 女子は全員あいつの前に倒れていったよ」


「ふーん、その時の写真とかないの? 私少し気になるかも」


「あ! 私も見たい!」


「あぁ、確かスマホにあった気が……あった、この右から三番目だ」


 俺はそう言ってスマホを二人の前に出した。

 写真は中学一年の頃の集合写真だ。


「え!? 本当にこれがあいつなの!?」


「全然印象違うね……」


 写真を見た二人は驚いていた。

 まぁ、確かにイメチェンしてきた時もクラス中の全員が驚いたしな。


「ねぇ、あいつなんでイメチェンしたの?」


「あぁ、詳しくは聞いてないけど、姉貴がうるさいから切ったって言ってたな」


「あのお姉さんの仕業か……」


「でも、確かにここまで変わったらクラスの女子は放っておかなかったでしょ?」


「まぁな、中学生なんて見た目で人を判断する年ごろだろ? 女子の圭司に対する態度は180度変わったよ」


 あの時の手のひら返しと言えばすごかったもんなぁ……キモイキモイ言ってた連中も圭司様とか様付けで呼び出すし。

 やっぱり女は顔なんだなってそん時俺はそう思ったけど。


「じゃあ、あいつが自分の容姿に対して以上にコンプレックスを持ってるのって……」


「多かれ少なかれ、イメチェン前の女子からの陰口だろうな」


「それであそこまで自分は不細工だって言い張ってるんだ」


「まぁ、あいつが自分に自信が無い原因は中学よりも前にあるみたいだけどな」


「え? じゃあ小学生の頃ってこと?」


「あぁ、俺もそのことは知らないし、聞いてもあいつ教えてくれないんだ」


 昔、小学生の頃の事とか聞くとあいつ嫌そうな顔してたし、もしかしたら中学の頃以上に嫌なことがあったのかもな。


「なるほど……いろいろ教えてくれてありがとうねえっと……」


「あぁ、笹原だよ」


「あ、そうだ! ありがとう笹原君!」


「やっぱ、あいつが友達って言ってるだけあるわね、えっと……」


「だから笹原だよ!!」


 なんで俺の名前って憶えてもらえないんだ……。

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