第13話 班決めって結構すぐ決まるよね?
*
さて、俺の学園生活は井宮という新しい出会いをへて、果たして何か変わっただろうか?
その答えは『変わってない』だ。
井宮は特別学校では話掛けて来ないし、英司ともいつも通りの付き合いを続けている。
どちらかというと、リアルで趣味の会う人間と出会えたのは俺にとってプラスかもしれない。
そんなこんなで俺の学園生活はまさに順風満帆!
ボッチでの楽しい学園生活三か月目に突入しようとしていたのだが……。
「それじゃあお前ら、ちゃんと班を決めておけよ~」
来てしまった……ついに来てしまった。
ボッチにとっての最悪の言葉『お前らで班を決めておけよ』が!!
ボッチの俺が一体誰と班を組むというのだ!!
そもそもなぜこうなったかを説明しよう。
うちの高校は毎年七月の初めに入学したばかりの一年生は宿泊学習に行くことになっている。
目的地は山奥の宿泊施設で一日目はキャンプに泊まり、二日目は施設の部屋に泊まる。
正直休みたい……。
「はぁ……憂鬱だ」
「何ため息を吐いてるんだよ」
「英司……どうやったら宿泊学習の日に熱を出せる?」
「んな方法知ってるなら俺はマラソン大会を毎年その方法で休むよ。どうせ組む奴居ないだろ?」
「英司……流石友よ……」
「こういう時だけ友とか言うなよ……」
「お、笹原と前橋だっけ? お前ら班組むのか? じゃあ俺も入れてくれよ」
「あ、確か池内だっけ? 良いぜこれで男子三人だし」
そう言って声を掛けてきたのは、クラスメイトの池内智春(いけうち ともはる)だった。
確かクラスの男子の中心にいるような奴で、俺とは真逆のリア充だ。
「サンキュー、いやぁ~実は俺さ、前橋と話てみたかったんだよぉ~」
「は? 俺と?」
何をとち狂ったことを言ってんだこいつは?
一体俺の何が目的なんだ?
もしかして、こいつは俺と同じ班になって俺の弱みを握り、将来的には俺をパシリにする気か?
そうだ、きっとそうに違いない!
こんな学園内カースト上位の奴が俺と話たいなんて言うのはそうとしか思えない。
「クラスでもクールでイケメンって入学したときから有名だったからな、いろいろ話してみたくてさぁ~」
「俺がイケメン? そんなわけないだろ? 何を言ってるんだ」
「いやいやイケメンでしょ~、顔立ち良いし、彼女とか絶対いるでしょ?」
「居るわけないだろ?」
「マジかよ超以外! え? 絶対モテるだろ? ラブレターとかもらったことないのか?」
「ラブレター? そんなのもらったことはないぞ? 不幸の手紙なら腐るほどもらったが」
「え? 不幸の手紙?」
俺は入学して一週間くらいしてからだろうか、下駄箱や机の中に不幸の手紙を大量に入れられたことがあった。
ハートのシールや可愛い便箋で誤魔化しているが、あの封筒の中には絶対にカッターの刃が入っていたはずだ!
俺がそんなことを思い出していると、英司が何やらため息交じりに池内に話をしていた。
「こいつ、少し変わってるけど悪い奴じゃないから仲良くしてやってくれ」
「そうなのか? そんな風には見えねーけど?」
「後々わかるよ……こいつの拗らせ具合が」
そんな話を俺たちがしていると、今度は見知らぬ女子生徒が俺の机にやってきた。
「ねぇねぇ前橋君!!」
「な、なんだお前」
「あのさ、あのさ! 私たち女子二人は決まってるんだけど、よかったら前橋君の班に居れてくれない?」
「いや、別に俺の班では……」
「いいぜ、どんとこい!」
「おぉ、池内君は話が分かるねぇ!」
「だろ!」
「勝手に決めんなよ……」
てな感じに名前も知らない女子達と班を組むことになってしまった。
まぁ良いか、大人しくしてれば害はないだろうし、どのみち誰かとは組まなきゃいけないんだ。
「ちょ、ちょっと美佳!」
「あ、椿! 男子決まったよぉ~!」
とか考えてたら、後ろから赤椿こと井宮がやってきた。
どうやらあの女子が言っていた女子二人の内の一人は井宮だった。
良かった、正直知らない女子よりはマシだ。
俺がホッとしながら井宮に視線を送ると井宮は笑みを浮かべながら俺に小さく手を振る。
「これで5人か……あとは女子一人だな!」
そんな話をしていると、またしてもクラスの女子が俺の机にやってきた。
「あ、じゃあ私を入れてくれない?」
「え? 高城?」
そう言ってやってきたのは学校一の美少女一号、高城優菜だった。
まさか高城がやってくるなんて……この班に学校一の美少女二人がそろってしまったぞ……こんな班目立って仕方ないぞ!
しかも高城とはこの前いろいろあって少し気まずいし……やっぱり宿泊学習行きたくなくなってきたな。
「おい、あの班やべぇぞ!!」
「あぁ、学校一の美少女が二人に学校一のイケメンと名高い前橋まで!」
「顔面の偏差値が化け物だ!」
「他三人の顔を見るとなんか安心できるな」
「いいなぁあの班……私も入りたい」
「もっと早くに声かけておけばなぁ……」
クラスのみんなもこの班に注目しているようだ。
はぁ……誰とでもいいとは言ったが、まさかこの二人と一緒の班なんて……。
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