第12話 俺は彼女とこんな感じ
*
現在の俺の学園生活は順調そのものだ。
これと言って困っていることもなく、これと言って不便もない。
まぁ、一つ問題があるとすれば先生がたまに行ってくる「よーし、じゃあ二人一組になれー」くらいだが、そこは英司と組むので問題がない。
そんな俺の学園生活に変化が生じたのはここ最近だった。
学校が終わり、いつも通り家に帰ろうとすると決まって学校から少し離れた公園であいつが待っている。
「ん、やっと来た。もっと早く来てよ」
「別に井宮と待ち合わせをしたわけじゃないのだが?」
そう、先日俺と他人以上友人未満の関係になった井宮だ。
井宮は最近、放課後になると俺の前に現れこうして放課後の時間を一緒に過ごしている。
「昨日のイベントボス強すぎない?」
「攻略出てたぞ、今日の夜リベンジだな」
まぁ、とは言っても俺にとっても井宮と居る時間は有益だ。
帰る途中にあるファミレスにより、二人で携帯ゲームをしたり、新作のゲームについて話たり、今期のアニメについて話たり。
まぁ、今までメッセージアプリでやっていたやり取りをリアルでやるようになり、その効率は明らかに向上した。
そのせいでお互い時間を忘れ、夜までファミレスに居ることが最近ではほとんどになっていた。
「ん? あ、もうこんな時間じゃん」
「もう20時か……どうりで腹が減るはずだ」
「何頼む? またミートドリアとかいう?」
「じゃあ、今日はミートスパゲッティで」
「あんまり変わらないじゃん」
「麺とご飯は全く別物だぞ?」
ここ一週間は二人でこんな感じで夜までファミレスでゲームをし、そのまま夜飯を食べて家に帰るのが通例になっていた。
正直、今までチャットやメッセージでやっていたことをリアルでやるとこんなに楽だなんて思わなかった。
「ねぇ」
「なんだよ」
「今日は何時でログインするの?」
「あぁ、多分風呂入っていろいろ準備してからだから、22時くらいか? 赤椿さんは?」
「私もそれくらいかな? でもあんまり夜更かしは出来ないかな? 肌荒れるし」
「週四で夜更かししてるお前が言う?」
「うっさいしっ!」
俺は井宮の事を二人きりの時は赤椿さんと呼ぶことにしている。
これは俺なりに学校と二人でいるときの態度を変えているという証明でもある。
「十分可愛いのに、まだ綺麗になろうとするなんて贅沢だろ」
「は、はぁ!? い、いきなり何よ!」
「は? 俺は事実を言っただけだ」
こんな感じで井宮は俺と話をしているとたまに顔を赤くして怒ってくる。
別に怒らせるようなことはしていないと思うのだが?
注文した商品がテーブルに到着し、俺と井宮は食事をしながら話をする。
「あのさ、今週一週間こんな感じで過ごしてきたけど……これってもう友達なんじゃない?」
「いや、学校では他人だから違う」
「アンタの基準が良くわからないわよ……」
「まぁ、俺にとっての友達は英司だけだからな」
「あのいつも一緒にいる? そんなに仲良いの?」
なんだか不満そうな顔でそう尋ねてくる井宮。
俺はそんな井宮にどや顔で説明する。
「それはそうだ、あまり干渉せず、休日は互いに自分の時間を尊重し、たまに一緒に遊びに行き、先生のあの魔の言葉『二人組つくれー』が出た時にも自然と一緒になれる存在、それが英司だ」
「それって、友達だったとしてもそこまで仲の良い友達じゃないわよね?」
「何を言ってる! こんなひねくれもので面倒くさい俺とも話をしてくれる男だぞ! もはや親友かもしれない」
「その親友と今朝は死ねって言い合ってたけど……」
「それはあいつが悪い、お前とのこの関係を話したら急に起こりだしてだな……」
「あぁ、アンタと違ってその友達は常識人っぽくて安心」
あいつが常識人?
どちらかというと俺の方が常識人だと思うのだが?
あんな急に怒って暴力を振るってくる奴が常識人なはずないだろ?
「じゃあ、私はいつになったらアンタと友達になれるのよ」
「そうだなぁ……学校を卒業してからとかか?」
「長すぎよ……今から三年間も一緒だったらそれはもう既に友達よ」
「たった三年だぞ! 本当なら十年はほしいところだ」
「そこまでいったら大親友よ!! まったく、本当にアンタは拗らせすぎ!」
何を言っているんだこいつは?
三年でお互いの何がわかるというんだ。
友人というのはお互いを良く知った上になるものだ。
数か月やそこらで友人を名乗られては困る。
「はぁ……あんたさぁ……もう少しクラスメイトと話てみない? あんたの価値観のズレが分かってくるわよ?」
「嫌だね、急に話掛けて死ねとか言われたらどうする!」
「どこの不良高校よ!」
「それに男子ならともかく、女子は俺の顔は見るに堪えないようでみんな顔を逸らすぞ」
「照れてるのよそれは……はぁ……あんたって本当に面倒くさい性格してるわね」
「そんなことはない、俺はどちらかというとシンプルな性格だぞ! ザ・モブって感じだ!」
「アンタの場合少女漫画のザ・ヒーローよ」
井宮はそう言いながらため息を吐き、注文したサラダを口に運ぶ。
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