拗らせイケメンと四人の美少女

第11話 他人以上友人未満

「いや、その気持ちは嬉しいんだけどな……」

「何よ、私の何が問題なのよ」

「いや、お前がこの学校一の美少女の一人という点が問題なんだよ」

「何よそれ？　てか、学校一なのに複数いるの？」

「自覚無いのか？」

　この噂は男子のみならず女子にまで知れ渡っているというのに、こいつはその噂を知らないのか？

　まぁ、本人の耳には入らないように周りがしているのかもしれないが。

「よし、ハッキリ言おう、井宮お前は可愛い」

「な！　何よいきなり！？」

　頬を赤らめる井宮に俺は続ける。

「可愛いが故に学校内でも目立つ存在だ」

「そ、そうなの？　私は分からないけど……」

「それが一番の問題だ！　俺は学校内では目だ立つ、静かに平和に過ごしたい！　しかし、お前と友人関係になってしまってはそれが叶わなくなってしまう」

「なんでよ？」

「だから、お前が男子生徒はもちろん女子生徒からも人気があるだろ？　そんな人気者と俺みたいな根暗でボッチで不細工な男が一緒に居るのは不自然だろ？」

「いや、多分誰もアンタの事をそうは思ってないと思うけど？」

「そうなのか？　はっ！　そうか、眼中にも無いということか！」

「いや、そうじゃなくて……」

　まぁ、確かに俺は教室では空気だし、眼中に無かったと言われても納得できるな……。

　だがそれならそれで丁度いい、眼中に無いまま学園生活を終えよう。

　そうだ、それなら毎日一人で平和に学園生活を終えられるぞ。

　しかし、それならやはり赤椿、もとい井宮と友人になるのは無理だな……。

「あのさぁ……アンタもしかしてだけど……」

「ん？　なんだ？」

　考え事をしていると井宮が俺の顔を見て話しかけてくる。

　俺はそんな井宮の方を見てそう言うと、なぜか井宮は頬を赤らめ顔を逸らした。

　なんだ？

　俺の醜い顔はそんなに見たくないのか？

　まぁ仕方ないか……。

　若干悲しいけど。

「あ、アンタ自分が女子からかなり人気あるってこと知らないの？」

「はぁ？　俺みたいな？　根暗で？　ボッチで？　不細工な男が？　井宮、お前は何を言っているんだ？　とりあえず良い眼科を紹介してやろう、ちゃんと目を直して俺の不細工面を見てみろ」

「視力は良い方よ、アンタ女子からかなりの人気よ。でも近寄るなオーラが出てるから声かけられないってみんな言ってるわ」

「おいおい、気を使わなくても良いぞ？　自分の顔面偏差値の低さは俺が良く知ってる」

「あんたが不細工だったら、この学校の男子の大半は不細工よ」

　全く、井宮は何を言っているんだ？

　気を遣うと言ってもあまり度が過ぎているとただの悪口だぞ。

　それに俺が不細工であることは昔ちゃんと証明されてるし……。

「中学の頃は良く女子に不細工と言われていたぞ」

「え？　それって本当に女子？」

「あぁ、何やらあなたが好きですと俺をからかってくるのでこう言ってやったんだ『俺不細工だし君に一切興味ないから関わらないでくれ』とな！　そしたら全員『あんたみたいな不細工大っ嫌いよ！』と言ってどこかに走って言ったぞ？」

「あんた……それは酷いわよ」

　一体何がだ？

　からかってくるそいつが悪いだろう？

「アンタ……結構いろいろ拗らせてるのね」

「何がだ？」

「はぁ……じゃあ何？　あんたは学校で静かに過ごしたいから私と友達にはなれないの？」

「そうだ、お前と友達になったら俺は恐らく他の男子から目の敵にされることだろう」

　英司も羨ましいとかなんとか言って、俺に襲い掛かってきたしな。

「はぁ……じゃあ、こういうのはどう？　学校ではいつも通り、でも放課後とか休みの日は仲良くしない？」

「いやだ」

「アンタまた打たれたいの？」

　赤椿さんは意外と武闘派のようだ……ゲームでもジョブがファイターだったけど、リアルでもファイターだとは……。

「だって、お前俺を遊びに誘うだろ？」

「まぁ、そりゃあね」

「それが嫌だ！　俺は自分の時間を有効に使いたいんだ！　他人に俺の時間を奪われたくないんだ！」

「ゲームのイベントとか、アニメのイベントの日に一緒に行くのも？」

「よし行こう、あぁいうイベントに一人で行くは心細い」

「コロコロ意見帰るわね……じゃぁそういうのだったら良いのね」

「まぁ、そうだな……俺も興味があることなら……」

「じゃあそれで良いから仲良くしましょうよ、私も一緒のイベントとか行きたいし」

「うーむ……プライベートなら学校の奴にバレる心配もないか……」

　確かにそれなら良いかもしれない。

　今までゲームのイベントやアニメのイベントなんかは一人で行く勇気がなくて、諦めていたことが多かったしな……。

「よし、じゃあこうしよう、俺たちは他人以上友人未満の関係だ」

「なにそれ？」

「お互いの利害が一致したときだけ友人関係になる関係だ」

「いや、もう普通に友達で良いんじゃ……」

「そこは譲れん」

「変なところで頑固ね……まぁ、それでもいいわ」

「じゃあ、そういうことで」

　俺はそう言って井宮と握手を交わす。

　この日、俺は初めて他人以上友人未満の関係の女子と知り合った。