第10話 俺の気持ち彼女の気持ち
*
「朝からひどい目にあった……」
「そりゃそうだろ! あれはお前が悪いわ!」
ホームルームを終えての休憩時間、俺は英司と一緒に屋上に来ていた。
あの後、俺は井宮にブチ切れられ、頬を二回も打たれてしまった。
一体俺の何をがいけなかったのか、俺は全くわからず、ことの経緯を英司に説明していた。
「何が不満なんだよ! 聞いた話だけでも、井宮ってあんな見た目だけどすげーいい奴じゃん! 普通に友達になればよかっただろ!」
「馬鹿野郎! そんなことをしてみろ! 絶対俺は井宮と釣り合っていないと言われ、学校中の男子から目の敵にされ、嫌がらせを受けることに……」
「どっちかって言うとお似合いとして見られると思うがな……イケメン死ね」
「それに、俺みたいなひねくれた奴と仲良くしてると、井宮が周囲から誤解されるかもしれん……それで井宮が陰口を言われるのが俺は嫌なんだ……」
昨日の屋上での出来事で井宮がどれだけ良い奴なのかが分かった。
だから俺は、井宮が俺と仲良くすることで周囲から陰口を言われるのが嫌だった。
一応そういう意味もあって、あそこであぁ言ったのだが……まさか二回も頬を打たれるとは……。
「要するにお前は、井宮に迷惑を掛けないためにあぁ言ったって言いたいのか?」
「まぁ、そうだ。俺とあいつでは住む世界が違いすぎる」
「そうか……とりあえず圭司」
「なんだ?」
「今からお前をぶん殴るからそこに居ろ」
「ま、待て! どうした? な、なにをする!!」
「うるせぇ!! このイケメンが! そんな運命的な出会いまでしやがって! うらやましいんだよ畜生!! 俺にもくれよその運を!!」
「な、何を言ってるんだ!? 馬鹿! やめろ!」
「イケメンで? 可愛い女の子とはゲーム友達で? なんだその羨ましい待遇は!!」
英司はそういいながら俺に掴み掛かってくる。
一体どこに切れる要素があったのだろうか?
というか、こいつ力強っ!
「落ち着け馬鹿!」
「はぁ……はぁ……なんでもいいけど、井宮にはちゃんと謝れ。普通にあれは可哀想だぞ」
「ま、まぁそれは……後でちゃんとメッセージでだな」
「ちゃんと直接言え馬鹿! 普通にこれからも友達として仲良くしてくれって言えよ」
「いや、それは出来ない」
「お前は俺の話を聞いてのか? それともまた俺をキレさせたいのか?」
「待て待て! 前にも言っただろ? 俺の友人枠はお前でもう一杯だ」
「じゃあ、俺はその枠から外れるからそこに井宮を入れろ、そしてその枠をさっさと拡張しろ」
「そうは言っても井宮と友達なったら、井宮に休日に遊びに誘われたり、一緒に帰ろうとか言われるんじゃないか?」
「まぁ、だろうな」
「そんなの無理だ!」
「なんでだよ……この学校の男子生徒からしたら羨ましい限りだぞ」
「だって……俺女子の友達との付き合いからなんてわからん……」
「お前は男の友達との付き合い方も良くわかってねーだろうが」
「そうだ! それなのに女子との友達付き合いなんてわかるわけないだろ!?」
「まぁ……それはわかるが……てか、お前も女子と話すとき緊張とかするの?」
「いや、別に……」
「なんでだよ!」
「お前は緊張するの?」
「緊張しっぱなしだわ! 高校一年の男子なんてほとんどそんなもんだわ!」
「そうなのか?」
「そうだよ! はぁ……正直俺はお前が羨ましいよ……井宮の方から仲良くしたいって言われるなんて……」
「じゃあお前が井宮と仲良くしたら良いんじゃないか?」
「お前は頭わいてんのか! 俺なんて井宮に話しかけた瞬間睨まれるわ!」
「いや、流石にそれは……」
「あるんだよ! 井宮が男子からなんて呼ばれてるか知ってるか? メンズキラーだぞ! あいつ男にはメチャクチャ厳しいんだよ!」
「そうなのか? 昨日話した感じじゃあそんな感じじゃなかったけど……」
「だからお前が羨ましいんだよ!! 一回死ね!!」
*
朝の一件の後から俺はクラスメイトからちらちら見られ、何かを言われている。
きっと、今朝の事をひどいと思ってみんな陰口を言っているのだろう。
ちなみに俺は屋上でキレた英司に頬を殴られ跡が付いていた。
「なぁ、あの頬!」
「あぁ、あのメンズキラーにあの仕打ち! 俺たちの気持ちを代弁してくれた感じでスッキリしたぜ!」
「井宮の奴可愛いけど俺ら男には冷たいからなぁ……前橋グッジョブ!」
さっきから男子が何やら俺を見てコソコソ話しをしているがなんでだろうか?
俺がそんなことを考えていると、あまり今は会いたくない人物がやってきた。
「ちょっといい?」
腕を組み、眉間にシワを寄せながら井宮は俺に向かってそういう。
あぁ……なーんか嫌な予感がする……しかし、また打たれるのは嫌だし、大人しく言うことを聞こう。
俺は井宮に言われるまま、人通りの少ない階段の踊り場にやってきた。
「どうしたんだ? 井宮」
「どうしたもこうしたもないわよ! 何よ今朝のあの返事!」
「え? そのままの意味だけど?」
「なんでよ! 別に私は回りなんか気にしないわ! それに私はあんたと仲良くしたいの!」
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