第57話
俺はボールを触っていた。今日の信州大学松戸は守備の固さと他の高校だとエース級のピッチャーが三人くらいいる高校だ。ねるに教えてもらった情報だと森田が最後まで投げるっていうと監督は最後まで投げさせるらしい。つまりこの試合は最後まで投げるってことだろう。今までは継投してたから勝てると思っていたんたがまさかこんなに権力を持っていたとはな。
「着いたみたいだぞ好希」
いよいよか俺は公式戦は久しぶりの先発だ。腕がなるな。練習試合のときのようにたんたんと投げれるようにしなくては。恐らく森田のファンクラブが応援に来るだろう。つまり相手に流れがいくと不味いということだ。なんとか先制点を取ってくれればいいが。
俺達は電車を降りてマリンに向かっていると森田がこちらを向きこちらに気がつくと広角を上げて隣の美少女ともにやってきた。
「これはこれはねると一緒にいた人じゃないか」
森田は髪をファサっと靡かせると、フッとしたイケメンスマイルをした。高住先輩は知り合いなのかという表情でこっちを見ている。
どうやら名前は覚えられてないみたいだ。まあ自己紹介をしてないからだろうが。しても覚えなそうだがな。
「約束はちゃんと守ってもらうからね。君がどんなにねるの事を思っていても関係なくね」
なんで俺がねるを思っていると思っているのだろうか。というより隣に女の子がいるのにそんなこと言っていいのか。普通だったら怒ると思うんだが。
「隣にいるのはチームメイトかな。よろしく今日の対戦相手の森田まさるだよ」
高住先輩の事を知らないのか。野球雑誌の千葉高校野球の雑誌に県立高校トップ10人に乗るほど有名だと思うんだが。知らないってことは眼中にないってことか。
「よろしくな。今日は正々堂々と勝負しよう。まぁ俺は怪我で投げないが」
高住先輩は笑顔で答えた。
「ふっそれじゃまた試合で会おう」
森田はいいたいことだけ言って球場にすたすたと去っていった。ただ隣にいた女の子まだこの場に残っていた。もしかして高住先輩に乗り換えようとしてるのか。俺に乗り換えるということはないだろう。まぁこの場にいない女の子の話をされたらそりゃ失望するよな。
「あのすみませんうちの兄が人の彼女を取ろうとして」
妹なのかこの子。俺は失礼と思いながらこの女の子をじっくりと見た。森田と同じでアホ毛とスッと通った鼻とバッチリとした大きな目透き通った肌見れば見るほど似ているな。
「大丈夫だよ。彼女って訳じゃないし」
「そうなんですか。それならよかったです。この試合はうちの兄が勝つので」
どうやら妹の方も甲子園しか見えてないらしい。確かに春の選抜は信州大学松戸が県内の予選を優勝したが、うちだってあの時に比べれば格段に強くなっているからそう簡単には負けない。
「ねるが勝てると思ってこの勝負を受けたんだ。そう簡単には負けないぞ」
妹はそうですかと言ってその後にでは楽しみにしてますと言って森田の後を追いかけていった。すると高住先輩がニヤッとしながら、
「好希よほどねるの事が大切なんだな」
確かに大切だが幼馴染みとしてですよ。だけどねるの彼氏になる人物は俺も一度見ないと認められない。森田はすぐに不倫をしそうだから認められない。
「それよりマリンに行きましょう。もう少しで第一試合が始まるので」
高住先輩は時計をチラッと見てそうだなと言ってマリンに向かい始めたので俺も隣を歩いた。
第一試合が終わり俺達はマリンの級球場内に入った。ふぅーどこを見渡しても人人人だな。見られてる方がやる気は出るんだが。今はアップをしてるしねるがどこにいるか探すか。お、前の方にいるな。俺はねるを見つけると手を振った。ねると目が合いこちらに手を振り返してきた。俺はやる気が漲るのを感じながらベンチ戻った。
俺は長沢先輩とブルペンに入った。やっぱりプロが使っているだけあってすごく投げやすい。
プロか、小学生のときはプロになるのが夢だったけ。中学に上がってからは県選抜で違う県の選抜と試合をして才能の差を感じて高校ではやらないと決めた俺がまさかプロが使う球場で投げることになるなんてな。人生はわからないものだ。
おれはテンションを上げながら長沢先輩の構えるコースに投げていった。今日は絶好調だ。今日の試合に調子を合わせて正解だったな。
特にスライダーの切れが直角に近い曲がりでいい。後はツーシムもそれなりにキレがいいな。
投球練習が終わると長沢先輩がこっちに口角を上げながらやってきた。
「今日は絶好調みたいだな。今日は隠し球にツーシムにしないで、じゃんじゃん投げていくぞ」
まぁ今日はツーシムほぼ百パーの確率で投げれているから、それには賛成だ。プロですらこのツーシムはそう簡単には撃たれないと山崎選手が実証してるからな。
「はいわかりました。追い込んでから投げますか?」
「そうだなこれは決め球に投げた方が効果は上がるだろうし」
実際山崎選手もこれを決め球に投げている。つまりウィニング球にちょうどいいということだ。
軽く俺は長沢先輩と配球に着いて話し合った。すると形として監督をやってある先生が俺達を呼びに来た。なぜ形だけかと言うとうちの学校には野球経験者の先生がいなくて采配をしてるのは長沢先輩だからだ。よくこんなに強くなったよな監督なしで。
「じゃー久々だろうけれど固くなるなよ。妹も最初っから来てるんだろ」
なんで妹が来てること知っているんだ。もしかして俺の妹の事が好きだから連絡先持っているのか。例え長沢先輩でもまだ優香はやらないぞ。俺は優香を愛しているからな。シスコンしまゃないかって?ああシスコンだ。でもあんなに可愛い妹がいたらシスコンになるのは当たり前だろ。つまり優香が可愛いのが悪い。
「そんな怖いかおしなくても妹は取らないぞ。たまたまうちの妹と優香ちゃんが友達てよく家に遊びに来るんだよ」
そうなのか、うっかり男の急所にボールを投げようとするところだったわ。
「そうですか、優香は迷惑かけてませんか?」
「俺の好きなお菓子を毎回買ってきてくれるくらいちゃんとしてるから安心していいぞ」
さすが優香、相手が喜びそうなことを熟知してるな。今度優香が長沢先輩の家に行く時は俺の好きなマッカンを送ろう。日頃の感謝と普及のために。こうじゃが本当の理由じゃないかって?違うぞ感謝のほうが割合は高い。コウキウソツカナイ。
「おっとうっかり話し込んじゃったな。早くグラウンドに行くか」
俺達はグラウンドに出た。ちょうど森田たちもグラウンドに出てきて、女性たちの黄色い歓声が聞こえる。イケメンめ、試合が終わったらうちの学校がこの声援を受けてやる。俺はそう決意をしていたら審判に整列をしてくださいと言われたので、整列をして相手の学校と挨拶をした。
最初で最後のチャンスかもしれないんだ高校野球が、だから俺は少しでも長く楽しむためにこの試合は勝ってやる。俺はマウンドに堂々と歩きながら向かった。
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