不明
神舞ひろし
完
本当は、自分自身が一番気付いていなかった。
夕焼けに染まる雲と白い壁が眩しいほどなのに、眠りにつくと忘れてしまう。
目が覚めて見る朝焼けも、それが生きているのだという自覚はない。
出来る事は限られていく。
また明日も同じだと勘違いしていく。
遂に訪れた日に目覚めた。
空の青さも、木々の青さも、ただ其処にあるだけ。何も変わらない。
心静かに時を待つ。
さぁ、出掛けよう。
さぁ、羽ばたこう。
積年押さえ続けた思いを、今、解放する時なのだ。
なのに
呼吸が乱れ、あの時とそっくりに、手足がしびれ、立ち上がることが出来ない。
本当は、自分自身が一番気付いていなかった。
悔しさと怒りが、苦しさに変わる。
ああ、情けない。
ああ、情けない。
ああ、情けない。
不明 神舞ひろし @davidson1200s
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