第24話 週刊魔法使い

 実際に愛理自身から聞く言葉なので、貴重な話だぞとその場にいるマスコミ全員が話していた。また、一人のカメラマンが生中継が繋がったとも言葉を発していた。


「え!? これ生中継してるの!?」


 愛理が慌てていると、女性レポーターが奏の持つスマートフォンにマイクを向けて、あの進化した怪物と対峙した時どんな気持ちでしたかと聞いてきた。


「わ……私は……怖い気持ちよりも、皆を守りたいとの気持ちの方が大きかったです。 誰かがやらないといけないですし、特殊魔法部隊の人達も含めて怪人に倒されていたので、私がやらないとと思って戦ってました」


 顔を赤らめながらその時思っていた気持ちを愛理は離した。自身の命よりも、皆を助けたい、命を懸けてでも助けたいとの思いがあってと愛理が話した。すると、レポーターが続けて腹部を貫かれた時はどんな気持ちでしたかと聞いてきた。


「え……貫かれた時ですか……その時は……」

「何て質問をしているんですか!」

「やめてください!」

「大丈夫だよ。 貫かれたときはお腹が焼けるように痛かったです。 それでも私は戦わないとと思っていました」 


 楓や奏がなんて質問をしているのかと言った瞬間、愛理が焼けるように痛かったですと話し始めたので口を挟まずに話させようと思っていた。。


「傷口は今は塞がっていますし、回復魔法によって治療されています。 お腹を貫かれた時は、先ほど言ったように焼けるような痛さに加えてもう死ぬのかと考えていました。 でも、その時に私の名前を叫んでいた友達がいました」


 愛理の友達と言う言葉を聞いて、これは良い情報だとレポーターやカメラマンがウキウキしているようであった。


「そのお友達はご自身の名前を呼んでいただけですか?」

「早く教えてください!」


 そう突っ込んだ質問が飛び出すと、愛理は名前を呼ばれたことしか覚えていませんと言う。他に何か言っていたと思いますが、戦うことに必死でしたと愛理は言った。愛理の言葉を聞いていたマスコミは聞けることが聞けたと一様に声を上げると、一斉に帰り支度を始めていた。愛理達に何の挨拶も何もなく家の前から消えていく。


「聞くこと聞いたら帰ったわね……言わなかったらこのまま居続けたのかしら……」

「ありがとうも何も言わないで一斉に帰っていったね。 ま、こういうもんだから気にしたらダメだよ」


 楓と奏が顔を合わせて文句を言っていると、一組の若い男女のマスコミが愛理達の家に来た。


「あの……少しインタビューよろしいですか?」

「あ、はい。 何でしょうか?」


 その若い男女は今までのマスコミと違い、礼儀正しかった。 愛理は奏に画面を向けてと言うと、どんな質問ですかと問いかけた。


「あ、ありがとうございます! えっと……黒羽愛理さんが進化した怪物と対峙した時に出現した剣って何でしょうか?」


 今までのマスコミとは違う質問を受けた愛理は、その剣のことは何も分かりませんと答えた。若い男女のマスコミは、古代の資料を調べても出てこなかったので新たな発見なのかもしれませんねと目を輝かせながら愛理の映るスマートフォンに近寄ってくる。


「その剣については現在、星空校長先生が調べて下さってますので私からは何も言えません……」

「そうですか……こちらも調べるので、何か分かり次第お伝えしますね。 私達は愛理さんを応援していますので、これからも信念を貫き通してください」


 愛理は頭を下げて謝ると、マスコミの若い男女はこちらも調べますのでわかり次第情報をお伝えしますと言ってくれた。その言葉を聞いた愛理は、ありがとうございますと返す。


「では、これで失礼します」


そして、マスコミの若い男女が愛理の家を後にすると、奏と楓はやっと終わったかなと小首を傾げた。


「やっと終わったようね……愛理と奏ありがとうね」


 楓は娘二人に感謝をすると、愛理は奏ありがとうと言ってテレビ電話の通話を切った。愛理は大きなため息をつくと、ベットに静かに体を預けた。今のマスコミとの出来事で愛理は一気に疲れてしまい、もう何も考えたくないと思っていた。


「マスコミ対応って大変なのね……いつも対応をしてる奏でさえ、あんなに困惑してたんだもんね……私ひとりじゃなくて良かった。 今度奏に何か奢ろうかしら」


 ベットに寝っ転がりながら天井を見て独り言を呟いていると、スマートフォンに奏からさっきはありがとうとメールが届いた。


「奏からメールだ。 そんなことメール必要ないのに……返信しておこう」


 そのメールに愛理はすぐにこちらこそありがとうと返信をすると、そのまま少し寝ることにした。寝始めてから数時間が経過すると、晩御飯の時刻だと看護師に起こされてしまう。愛理は起きたくないと言いながら看護師に布団を剥がされると、お昼食べてないんですからと言われた。


「え!? そんなに寝てたんですか!?」

「そうですよ。 爆睡をしていたので昼食を置いておいたのですが起きなかったようで下げました」

「起こしてくださいよ! お昼食べたかったぁ!」


 愛理が窓の外を見ると、既に日が落ちて真っ暗になっていた。 愛理は寝すぎたと頭を抱えると、目の前の机に置かれた晩ご飯のおかゆと鮭に薄味の味噌汁を食べることにした。


「この薄味もう美味しく感じる! 逆に毎日食べたくなってきた!」


 愛理は勢いよく食べ進めていくと、途中でむせてしまってベットボトルのお茶を沢山飲むはめになってしまった。


「危な! 危うく窒息するところだった!」


 お茶を沢山飲んで一息をつくと、病院食って薄味で健康的だなと改めて感じていた。愛理は全て食べ終えると、やっぱり量が足りないと愚痴を言い始めていた。


「売店で何かお菓子買おうかなー」


 愛理はそう呟きながら、早く歩けないながらもゆっくりと歩いて行く。部屋を出ると、近場にあったエレベーターに乗って地下一階にある売店に向かう。


「ここが売店か! 大きなスーパーのような大きさだ!」


 愛理は地下一階に到達すると、目の前に広がるコンビニの広さに驚いた。一般的な病院にあるコンビニの広さではなく、ワンフロア全体がコンビニになっているようであった。愛理はそこを歩くと衣類や食料品に、書籍などが多数置いてあった。愛理は目を輝かせながら歩き続けていると、ここを利用しているお客は職員や入院患者の家族が多いと思った。


「結構利用者が多いんだなー。 ここの売店は何でも揃っているから普段でも買いに来たいくらいだわ」


 病院にある施設なので、当然だと思ったがここまで大きいと周辺に住む人も利用すると思っていた。病院のある場所が場所なのでそんな人はいないかと考えていたが、会計の場所を見ているとまた安くなってここを利用してよかったと外から来た人らしき年老いた女性が杖を持って立っていた。


 愛理は杖を持って立っている人と、店員の話を静かに聞いていた。なんでもここは病院関係者以外も利用ができるが、来るまでが大変なので関係者以外の利用が少ないらしい。関係者はかなり安く利用ができるが、関係者以外でも他で買うより値引き額が高いので車で週に三回は買いに来ているらしい。


「確かに漫画本も新品で一冊三百円は安い! あ、この本欲しかったやつ! 買おう!」


 愛理は急に真顔になり、欲しかったものを買うことにした。漫画本やファッション雑誌に、週刊魔法使いという魔法専門雑誌を選んでいた。


「週刊魔法使いを買わずに終えるところだったわ! 危なかった……」


 愛理は胸を撫で下ろし、週刊魔法使いの表紙をまじまじと見た。週刊魔法使いは毎週業界を問わずに、魔法を仕事で使用をしている人達を特集している雑誌であり、愛理は魔法の使い方や働いている人達が煌びやかなオーラ放っていることを見ることが秘かな憧れでもあった。そんな週刊魔法使いという雑誌を愛理は買い忘れるのだけはダメだと思い出し、購入をした。


「いやー、今週の週刊魔法使いは最高だわ! だって妹の奏が表紙だからね! 言ってくれればよかったのに、意外と恥ずかしがり屋なんだから!」


 愛理は微笑しながら、スタイリッシュな黒色で統一されだ服を着てポーズを取っている奏が写っている、週刊魔法使いの表紙を見つめていた。奏のポーズ最高ねと笑いながら愛理は表紙を見ていると早くお会計をしなきゃと思い、目当ての物をカゴに入れて会計場所に歩く。


 解消品の合計金額はそれほど高くなかったので、持ち金でなんとかすることが出来た。愛理は早く部屋に帰って週刊魔法使いを見ようと意気揚々とした気分でエレベーターに乗り込む。愛理は意外と金額は安かったけど、買い物し過ぎたかなと思いつつもまっいいかと気にしないようにした。


「さて、部屋に帰ってきたしさっそく読みますか!」


 ベットに入って、購入をした週刊魔法使いを読み進める。今週号は奏の特集なので、自身が知らされてない奏の活動が知れると嬉しかった。


「なになに……小学校三年生から子役として活動をしていたと、その時から役に合わせて魔法を使用していたと……」


 奏はその時から魔法の勉強をして、氷属性の魔法を使っていたんだなと頷いていた。その時の自分は魔法を勉強というよりも遊んでばかりだったので、奏の活動には一切興味がなかったのであった。


 今なら奏の芸能活動に興味が高いのだが、昔は興味がなかったことが悲しいと感じていた。 昔から興味を持っていれば、奏の芸能活動を支えられたのかなと思っていた。


「中学生時代にバラエティに出て、昆虫とか食べてたの!? あっそう言えば一時期仕事から帰ってきた時に虫が美味しいから家でも食べようよと言ってたような……」


 あの時の虫を食べようとの虫押しはこの仕事が原因だったのかと、愛理は今更ながら納得をしていた。

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