第23話 突然の取材
朝食を食べ終わった愛理は、テレビのスイッチを押すと怪物の脅威の解説や特殊魔法部隊は何をしているかの解説もしていた。
「特殊魔法部隊の人達のことを解説してる。 名前だけ聞いたことあるけど、何をしてるかは知らないのよね」
愛理はそのテレビ番組を見続けることにした。特殊魔法部隊とはその名の通り、魔法を行使することが出来る防衛庁が管理している特別な魔法部隊である。
魔法を使用できる部隊は別にもあるのだが、より驚異的な事柄に対処する目的で創設されたとアナウンサーが言っている。例えばテロや自然災害、他にも怪物が再度出現するような事態に陥った際にその怪物と戦い、国や国民を守るために選ばれた特別な隊員達であるようである。
「なるほど……あの時一緒に戦った人達は怪物に対処するために選出された人たちなんだ。 確かにすごい人達だった……」
愛理とは違い怪物に怯えることなく立ち向かい、怪物に襲われていた人を救い自身が傷ついても躊躇することなく立ち向かう姿を愛理は見ていた。
「私もあの人たちのように、怯えることなく救いたい人のために動けるようにしないと!」
テレビを見ていた愛理は、特殊魔法部隊の凄さを再確認していると愛理が戦っている映像が映り始めた。その映像は、愛理がシンと戦っている最中の映像であり絶光を両手で放っている瞬間であった。
「ここを映すの!? もっと良いシーンなかったの!?」
愛理は血だらけで顔に自身の血が付着しながらも、叫びながら全力を出しているところであった。しかし、全力で絶光を放ちながらもシンがゆっくりと迫ってくるので愛理は顔を歪ませながらも負けるかと叫びながら出力を上げているところであった。
「良いシーン! 出力があがってる!」
絶光を放っている愛理の目の前に到着したシンは、愛理の腹部を貫いた。鋭い剣で貫かれたので、愛理の腹部からおびただしい量の鮮血が流れてしまう。愛理のその戦闘や、おびただしい血が流れている映像を中止しないで放送していることがテレビ局の怪物に対する広報活動と、怪物と戦った際に起こる事実を知らせたいと考えているのだろうと愛理は感じた。
「あんなに血を流しながら必死な顔をしてる……自分では気が付かなかったけど守りたい気持ちが顔に出てるわね。 私はあそこまで良く戦えたと思うわ」
自身の戦っている姿を第三者の視点で見ていることで、あの戦いの凄惨さを改めて感じていた。
「よくあんなに絶光を放てたわね……私そこまで魔力あったのかなぁ?」
自身の魔力量を改めて考えると、そこまで高くはなかったはずだと思った。しかし、魔力は使えば使うほどに容量が増えることや成長に連れて自然と容量も増えるので愛理はあの命を懸けた戦いで驚くほどの成長をしていたのであった。
「魔力量が増えた気はしないんだけどなー」
そして、愛理の映像が編集されてたのか人型の怪人からシンに変化した時に切り替わった。愛理はここまで飛ぶのかと驚いていると、怪人が変化するようですねとコメンテーターの緊張しながら言葉を発する声が入った。
「今まで動物を模した怪物や神話に出てくるような怪物が多かったようですが、星空学園高等学校に出現をした二体のうちの一体が、この変化した怪物です」
コメンテーターの一人がそう言うと、怪物は進化する種類もいるようですねとも言った。実際進化ということをしたのはシンだけであるのに、そう言っていいのかとも愛理は頭を抱えていた。
「まだシンしか進化というか変化というかした怪物はいないんだけど、一体いれば他にも姿が変わる怪物もいるか……」
しかし、シンの姿をテレビ越しに見ている愛理は目の前でシンが変わった時のことを映像を見ながら思い出していた。
「あの変わりようは異様だったわね。 黒い霧が鍵なのかしら?」
シンが愛理と話していると、葵が愛理の名前を呼ぶ声が聞こえてきた。全国放送で愛理の名前が飛び出たことで、自身の名前をテレビ画面から聞いた愛理は顔を赤らめてしまっていた。
「私の名前が聞こえた! 撮影してた場所まで聞こえる程に大きな声で叫んでたのね……」
葵の絶叫のおかげで私は勝てた部分もあったのかなと考えていると、コメンテーターの男性が、愛理という名前が聞こえましたねと言った。 自身の名前をやっぱり呼んだと思うと、進化した怪物と戦っていた女の子は、黒羽愛理さんという名前らしいですと話していた。
「とうとう私の苗字まで言われたああああああ! 全国放送で流れたあああああ!」
頭を抱えて悶える愛理だが、横の机に置いていたスマートフォンに葵からメールが届いたことにより愛理はさらに悶えることになってしまう。
「葵からメール? なによこれ! 愛理の名前が全国放送にでたねって、いい迷惑よ! 全くもう!」
愛理が感情を最大限に出してスマートフォンを布団に投げつけると、テレビ画面から奏の名前が聞こえたので首ごとテレビ画面の方を向いた。
「この黒羽愛理さんの妹が、現在大注目をされていて人気が急上昇中の黒羽奏さんらしいのです。苗字が同じですし芸名でなく本名で活動をされているので、もしやと今ネット上で話題になっているようです」
その言葉を聞いた愛理はすぐに奏に電話をすると、お姉ちゃん大変なのと慌てていた。
「大丈夫なの!? 私が原因で奏の活動に影響が出たら大変だよ! 大丈夫!?」
愛理も慌てながら奏と話していると、そうじゃないのと奏が話す。愛理のおかげでテレビ出演の依頼がひっきりなしで来るらしく、それで事務所も奏も慌てているらしかった。
「事務所に電話がきたり、マネージャーの電話にもきて大慌てだよぉ!」
「そ、それは嬉しい悲鳴かな……?」
愛理は自身のせいで奏に迷惑がかかったかと思っていたが、それは違ったようで安心をしていた。奏はお姉ちゃんの戦いのおかげで私の出演依頼が増えたんだよと言い、悪いことばかりじゃないでしょと笑い声で言っていた。
「そうだね! ありがとう奏!」
「だからお姉ちゃんが気にする必要はないよ!」
愛理も笑いながら言い、通話を終了した。奏の出演が増えたことは嬉しいと感じ、これで奏の芸能活動はもっと成功するかなと嬉しい気持ちで一杯であった。
「奏に良い影響が出てよかった……あ、テレビで私のことはちょうど終わったかな?」
愛理の戦闘映像が終わり司会者とコメンテーターが一人の少女によって、今回の怪物の危機は脱しましたが言っていた。
「少女一人によって救われた一時の平和ですが、これは大人がするべきことだったのです。少年少女によって守られる平和ではなく、大人達の力によって救っていくべきなのです」
「確かにそうですね。 子供達に頼りっきりでなく、大人達の力で倒していくべきなのです! 子供にばかり頼るわけでなく、大人達で怪物を倒して平和を勝ち取るべきです!」
一人のコメンテーターがそう締めくくるとテレビ番組は終了した。愛理はここまでがっつりと自身の戦闘が映像として全国放送されるとは思わなかったので、退院したらどうなるんだろうと少し不安になっていた。
「考えても仕方ないか……今は成り行きに任せよう! うん! その方がいい!」
愛理は考えても仕方ないと思い、今を楽しむかと決めた。愛理は他のチャンネルを回したり、スマートフォンにてお気に入りのサイトを回ったりしていた。
「早く退院して、魔法の勉強したいなぁ……」
愛理がそう呟きながらサイト巡りをしていると、奏から電話が入った。愛理がその電話に出ると、奏がお姉ちゃん大変だよと叫んでいた。
「どうしたの!? 何かあったの!?」
「お、お姉ちゃんも落ち着いて! 今話すから!」
愛理が慌てた口調で言うと、通話口の向こうにいる奏はお姉ちゃんも落ち着いてと愛理に言った。
「ご、ごめんね……それで何が大変なの?」
その言葉を聞いた奏は、家と事務所にマスコミが殺到しているのと言う。奏は動画モードにするからと言うと、画面を見てと奏は言う。
「これで見えるかな?」
「見えたわ! なにこれ!? 何で家にこんなに!?」
スマートフォン越しに奏の姿が見え、その画面が次に家の外に向けられた。そこにはテレビカメラを持った人達やレポーターと思われる男女数十人が家の前で騒いでいた。家の玄関前では、正人と楓がマスコミに対してこの場で騒がないでと対応をしているもその対応すら良い画だと撮影をしていた。
「ご近所迷惑なので、騒いだり固まらないでください! 今ここに愛理はいませんから!」
楓のその言葉を誰一人信じることはなく、早く愛理さんを出してくださいとその場にいる全員が叫んでいた。その大声を近所に住んでいる人達はうるさいと怒鳴る人もいるが、その声など聞こえない素振りで愛理の家に詰め寄り続ける。
「もう帰ってください! いくらここにいても愛理はいません!」
「娘はここには今いないと何度も言っていますよね!?」
正人と楓がいないと言い続けるも、マスコミは愛理の家の敷地内に入り続ける。玄関前にまで来たマスコミはマイクをインターフォンに当てて黒羽愛理さんいるんですよねと言い続ける。愛理は奏からのテレビ通話によってその一部始終を見ていると、こんなに酷いことになっているなんてと顔を歪めていた。
「私が行かないと!」
そういう愛理の言葉を聞いた奏は、お姉ちゃんが来たら余計に混乱するからダメだよと言う。 すると奏はそのまま待っててと言って移動を始めた。
「ちょっと奏! なにするつもりなの!?」
愛理は奏が何をしているのか不安になるも、奏の行動を信じることにした。そして、数分が経過すると奏は玄関の前にいた。何をするのか愛理が不安に感じていると、皆さんという声がスマートフォン越しに聞こえた。
「皆さん聞いてください! お姉ちゃんは今入院をしています! どこにいるかは言えませんが、この通り入院をしています!」
そう言いながらスマートフォンの画面をマスコミの人達に向けると、愛理は初めましてと頭を下げた。マスコミは黒羽愛理だと一斉にカメラとマイクを向けていた。
「初めまして、黒崎愛理です!」
その様子は異様な光景であり、楓はなんで見せたのと奏を問い詰めようとしていた。しかし、奏はこうしないといつまでもここに居続けるよと楓に言う。
「そうね……このままじゃ迷惑だものね……」
「そうだよ! こうでもしないと近所迷惑になっちゃう!」
楓は奏に任せようと決めると、娘の愛理ですと言った。その言葉を聞いたマスコミは、あの戦闘は何を考えて戦っていましたかや友達を守るために何をしていましたかなど愛理があの戦闘で何を考えていたかを聞こうとしていた。
「質問が沢山あって混乱していますが、私はあの戦闘の時はがむしゃらに戦い友達を守るため、学園の生徒達や教師の先生達、そして特殊魔法部隊の人達と協力して怪物を倒すことに専念していました」
その愛理の言葉を聞いたマスコミは、メモを取ったりボイスレコーダーのスイッチを入れていた。
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