第17話 奇跡の剣
人型の怪人は自身の体を地面に刺した刀で支えながら、自身の腹部を貫通している槍を見る。貫かれている槍を見ると、身体を回転させて遠心力で愛理を振りほどこうとした。
「コんナヤリくらイで!」
「こんな攻撃くらいで、振り落とされたりなんかするか!」
愛理は槍の柄を掴んで足に力を入れて踏ん張っていたが、勢いが増すにつれて握力の限界がきたのか振り落とされてしまった。愛理は悲鳴を上げながら地面に擦れながら木に衝突をして止まった。
「こんなヤリにツラヌかれるトハ……」
刀で槍の先端を押して、自身の体から槍を抜く。人型の怪人は愛理のもとに走って距離を詰めると、右腕の刀で切りかかろうとした。
「ライトシールド!」
「まダイシきがアルのか! こザかシイ!」
愛理はその攻撃をライトシールドで辛うじて防ぐことが出来た。しかし、ライトシールドに人型の怪人は蹴りを当ててライトシールドを上に弾いた。愛理の弾かれたライトシールドは掻き消えるように消失し、防御手段を失ってしまった。
「くっ! ライトシールドが……でも、たかが盾が消えたくらいで!」
すぐにライトシールドを発現させればいいのだが、それすらも間に合わない距離に人型の怪人の刀が迫っていた。
愛理は人型の怪人の両腕の刀で身体をクロスに切られてしまう。その攻撃を受けた愛理は血を大量に吐きながら地面に力なく倒れると、力が入らない右手を握り締めようとしていた。
「まだ……まだ負けない……私は……」
「オまエのマけだ! オレがカったのだ!」
顔を目の前にいる人型の怪人に向けると、愛理を嘲るように笑っているように見えた。人型の怪人は愛理の顔を見ると、右足で愛理の脇腹を蹴り始めた。
「コレデ死ね! ハヤク死ぬノダ!」
「ぐぅ!? がはぁ……」
何度も愛理の脇腹を蹴る人型の怪人の顔は笑っているように見えた。愛理は何度も蹴られると、血を時折吐き出しながらその痛みに耐えていた。
「ぐぅ……心を折られるものか! 私はまだ……戦えるぅ……」
愛理は脇腹を蹴る人型の怪人の勢いを利用して、身体を転がせた。そして、距離を取るとふらつきながら立ち上がる。
「それでも……なんど倒れても私は戦う!」
「イつシぬのだ! オまエはメザわりダ!」
魔力を振り絞ってライトソードとライトシールドを発現させると、愛理は声を上げて人型の怪人に走っていく。
「私はお前を倒す! 皆を救うの!」
「ソンな力がナイコウゲキなど、ナンどキテもムだだ!」
右腕の刀で愛理の攻撃をやすやすと防ぐと、もう死ぬがいいと片言で人型の怪人は愛理に言う。人型の怪人の右腕の刀で、愛理は腹部を再度貫かれてしまった。
「ぐぅ……何度貫かれても……私は立ち上がらないといけないのに……」
愛理は血を吐き出しながら、地面に力なく倒れてしまった。その様子を見ていた生徒や教師、テレビ画面から見ていた日本全国の人達は悲鳴をあげていた。
「愛理ちゃん! 大丈夫なの!? 死なないで!」
「黒羽! 死ぬな!」
生徒や教師達は愛理の名前を叫び助けに行きたいが、殺される恐怖から近づく勇気が湧かない自身を攻めていた。視聴者達は、怪物の強さに怯えていたが愛理の戦う姿を見て恐怖に打ち勝つ心の強さや戦うその姿に涙を流していた。葵は力なく倒れる愛理に近づこうとするも、特殊魔法部隊の隊員に力ずくで止められてしまう。
「なんで止めるんですか! 愛理ちゃんが死にそうなんですよ! 離してください! 早く行かないと!」
「あなたも死ぬかもしれないのよ! 友達も大事だけど、自分の身も大切にして!」
泣きながら叫ぶ葵に、隊員の男性が君まで倒れたらあの女の子が戦った意味がなくなるじゃないかと顔を強張らせて言った。
「愛理ちゃんは私がやられたから、怪我を押してまで助けてくれてたのに……私はそれを無下にしようとしてる……」
「そんなことはないさ、あの女の子は君や友達のために戦っているんだ! 無下にしたとか思う必要はない!」
葵はその言葉を聞くと、愛理の横に行くのをやめることにして愛理頑張ってと叫ぶ。愛理に葵の声が聞こえたのか、葵ちゃんの声が聞こえると呟いていた。
「葵ちゃんが私のことを呼んでる……頑張ってって……叫んでる……」
愛理は激痛が走っている腹部を左手で抑えながら、静かに立ち上がった。立ち上がった愛理を見た周囲の人達とテレビ画面を見ている人達は歓声をあげていた。
「私は……まだ……戦える……私がみんなを……守るんだ!」
その叫びと共に愛理の身体が光り輝き、眩い光と共に白色の透明度が高い無垢な白色にも見える一本の長剣が現れた。
「これは……綺麗な剣……葵ちゃんと同じように私の体から現れた……」
愛理から出現した白い長剣は剣の部分は透き通るように白く、目が奪われるほどに美しい形をしていた。また、柄の部分は薄い青色をしておりグリップ部分には白色が縦線で入っているようである。愛理は自身から出現した長剣のグリップ部分を右手で握ると、長剣が眩く光り輝いた。
「これは! 握ったら凄い光が!」
「ナンだ、そのブきは!」
愛理は眩く光り輝く長剣の明るさに目を瞑るも、長剣を握る手と長剣のグリップ部分が妙にマッチする感覚があった。自身から出現した武器だからなのかわからなかったが、この長剣なら目の前にいる人型の怪人を倒せると直感がした。
「この長剣なら……お前を倒せる!」
「だカらナンだとイッてイる!」
愛理は長剣のグリップを強く握り、目の前にいる人型の怪人に向ける。 すると、人型の怪人は身体を震わせていた。
「オマエも……ナンダそのツルギは!」
「お前達怪物を倒すための神秘な武器だ!」
人型の怪人は、愛理に対して鬼のような形相で叫ぶ。両手を振り乱しながらそんな剣一本で何が出きると叫び、愛理に向かって飛び掛かってきた。愛理は長剣を構えて人型の怪人の右腕の刀を防ぎ、それを弾いて左腕の刀の攻撃を防ぐ。愛理は今までと違い、体がどう攻撃を防げばいいか直感で動けることが不思議に感じ、愛理はこの直感に疑問を感じずに動こうと決めた。
「キュうにウゴきがカワった!?」
「この力で! お前を倒す!」
愛理は声を上げて、気合を入れる。そして、目の前にいる人型の怪人の攻撃を捌きつつも、愛理は脇腹や頬などに切り傷を入れていく。葵の槍もだが、身体から出現をした不思議な武器であれば、怪物に傷を与えることが出来るようであった。
「グゥ……そのブキはナンだ!? コノからダにキずをツケるナんて!?」
また、魔法でも傷は負わせられるが高等な魔法でなければいけないために、愛理には魔法よりは手に持っている武器でなければ対処法がなかった。
「ブキを持ったテイドで強気にナルナ!」
「この武器なら倒せるんだ! 強気にならなくてどうするの!」
連続で両腕の刀で切りかかる人型の怪人の攻撃を、愛理は長剣で何度も防いでいく。先ほどと同じく、攻撃の隙をついて人型の怪人の腹部に蹴りや背中に回りこんで連続で背中を切り付ける作戦で攻撃をしていく。
「ナメるな! そんナサクせんなど!」
「これで行くしかないのよ! 私はこれで勝つの!」
愛理の攻撃を何度も受けた人型の怪人は、雄叫びを上げてナメるなと攻撃速度を上げた。愛理は速度が上がった攻撃に次第についていけなくなり、腕や太ももを切り付けられてしまった。
「速さに追いつけなくなってきた! でも、それでも、この剣でならお前を倒せる!」
愛理はいったん距離を置いて、再度剣を構えた。そして、人型の怪人と数秒間その場から動かずにお互いの反応を見ていた。そして頬を撫でる程度の風が周囲を流れた後、愛理と人型の怪人はお互いに動き出した。
「これで最後よ! 葵ちゃんや、みんなのために倒す!」
愛理は長剣を横に構え、人型の怪人の両腕の刀の隙間を狙っていた。人型の怪人は、両腕の刀をクロスに構えて、愛理を切り殺す態勢をとっている。
「そんな攻撃!」
愛理は長剣を横に構えて、クロス切りを受け止めることが出来た。 愛理は太ももにかかる負荷の苦痛に顔を歪めるも、歯を喰いしばって負けるものかと声を上げて、人型の怪人の腕を上に弾いた。
「その腕をもらうよ!」
愛理はそう言いながら、人型の怪人の左腕を切り落とすことに成功をした。切り落とされた左腕は地面に落ちると、そのまま蒸発して消えてしまった。その消えた自身の腕を見た人型の怪人は、唇を噛みしめてオレの腕ガと何度も呟いていた。愛理はその声が聞こえずに、右腕を切り落とそうと切りかかると人型の怪人の体を黒い霧が包み始めた。
「な、何なの!? 黒い霧が怪人を包んで何をしようとするの!?」
愛理は突然発生した黒い霧が、目の前にいる人型の怪人を包み始めたことに恐怖を感じていた。
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