第2章 怪物襲来編

第14話 怪物との死闘

 教師達は一体のトナカイの怪物に対して十人がかりで攻撃をしており、 足止めをして生徒達を救ったり錯乱や攻撃魔法を放って怪物を倒すことに必死であった。また、戦っている以外の教師達は警察や特殊魔法部隊に連絡を取ったり、避難する生徒達の護衛をしている。


 外も地獄のような戦闘や悲鳴が轟くなか、愛理と葵は人型の怪物と戦う星空校長を支援しようと動いていた。星空校長が短剣を用いて人型の怪物と鍔ぜり合っていると、愛理がライトシールドを発動して星空校長と人型の怪物の間に入った。


「愛理君!? なんでここに! とにかく早く逃げなさい!」

「嫌です! 私と葵も手伝います! ただ黙って見ているなんて嫌です!」

「そうです! 私達だって戦えます!」


 星空校長が驚いていると、葵が人型の怪物の影を操って動きを止めることに成功をした。葵は愛理がいつの間にそんな魔法を使えるようになっているのか知らなかったために、星空校長と愛理がその調子と声を上げていた。


「二人はそのまま耐えてくれよ! 光の粒子よ、この敵を貫け! 絶光!」


 絶光と魔法名を発した星空校長は、右手の掌を人型の怪物に向けるとその掌から光線と思わしき太い光が放たれた。人型の怪物は両手に持つ刀で光線を防ぐも右腕が耐えられずに吹き飛んでしまっていた。しかし、片腕が吹き飛んだからといってその動きが止まることはなかった。人型の怪物は口がないのにも関わらず、何かを叫んでいるように見える。そして、その叫んでいる動作が数秒間続いていると顔の口に位置する部分の皮膚が裂けて口が現れた。


「お、ま、え、た、ち、を、こ、ろ、す……」


 不気味な現れ方をした口から、低音で殺すと三人に言った。


「あの人型の怪物に口が!?」

「あの怪物何かがおかしいよ! 愛理、気を付けて!」


 愛理が驚いていると星空校長が、目を見開いて逃げろと愛理と葵に向かって叫んだ。 星空校長が叫ぶと同時に、愛理と葵に身体が吹き飛ぶほどの衝撃波が襲い掛かってきた。


「ぐぅ! この衝撃は!?」

「愛理ちゃん大丈夫!?」

「葵ちゃん!?」


 愛理はその場で飛ばされずに堪えるも、葵は後方に吹き飛ばされていた。愛理はすぐさま葵に向かって走って助けに行くも、愛理の走る後ろで金属同士がぶつかる音が聞こえた。愛理が振り返ると先ほどまで愛理がいた場所にて、星空校長の短剣と人型の怪物の残っている左腕の刀が鍔ぜり合っていた。


「早く葵君を助けてあげてくれ!」

「分かりました!」


 愛理にそう叫んだ星空校長は、人型の怪物の腹部に蹴りを入れて距離を取ることにした。しかし、すぐに間合いを詰められてしまった星空校長は左斜めに体を切り裂かれてしまってその場に倒れてしまう。


「校長先生!」


 愛理が後ろを振り向いて星空校長の名前を呼ぶと、逃げろと小さく呟いていた。愛理は葵を抱き起すと、葵は額が痛いと言いながら自身の手を額に当てていた。


「あ……血が出てる……大丈夫なの!? 無事!?」

「だ、大丈夫……まだ平気だよ……」


 葵はスカートのポケットに入れていたハンカチで、血を拭いていく。愛理は星空校長に言われた通り、葵を連れてこの場から離れようと考えた。星空校長を置いて愛理は葵を連れてこの場から離れようとした瞬間、人型の怪物が愛理達に目をつけて襲ってきた。


「こっちを見てる!? 来る!?」

「愛理ちゃんに向かってるよ! 気を付けて!」


 愛理はとっさにライトシールドを発動し、人型の怪物の攻撃をギリギリ防ぐことができた。愛理はその人型の怪物の攻撃の速度に恐怖を感じるが葵に先に走ってと言い、自身はライトシールドで攻撃を防ぎながら後退をしようと決めた。


「走って葵! 先に逃げて!」


 愛理のその言葉に、葵は先に待ってるからと叫んで走っていく。愛理はちゃんと行くよと小声で返すと、目の前にいる人型の怪物と対峙した。


「今の私じゃとても敵わないけど、足止めくらいなら!」


 ライトシールドで、人型の怪物の攻撃を愛理は何度も防いでいくが、その攻撃の速さや重さに次第に防ぐことが困難になっていた。


「ぐぅ……盾の形を保てなくなってきた……」


 愛理は冷や汗をかきながら人型の怪物の攻撃を防いでいるものの 、攻撃を防いで数分が経過するとライトシールドの形が少しずつ崩れていき愛理の魔力の減りと共に形が歪になってきていた。


「やばい! もう魔力が!」


 そう言った瞬間、人型の怪物の蹴りが愛理の腹部に衝突して吹き飛ばされてしまう。葵が走った方向に吹き飛ばされた愛理は、血を少量吐き出しながら宙を舞って地面を転がった。


「お腹が……まさか蹴られるなんて……」


 愛理は地面に衝突するとすぐに顔を人型の怪物に向けた。人型の怪物はニヤケ顔になりながら、コロスと片言で何度も何度も力強く遠くに吹き飛ばされた愛理にも聞こえるほどの声量で叫んでいた。


「何か恨みでもあるの!? 私は何もしていないわよ!」


 愛理は人型の怪物がなぜ何度もコロスと片言で叫んでいるのか理解が出来なかった。そんなことを愛理が考えていると、人型の怪物が愛理の方向に勢いよく走り出した。愛理は来たと目を見開いて人型の怪物を見ると、右手にライトソードを左手にライトシールドを発動させた。


「私が止めないと! 私が戦わないと!」


 意を決して人型の怪物と対峙をする愛理の目からは、負けないという意思を感じさせた。愛理は近づいてきた人型の怪物の攻撃をライトシールドで防ぐと、右手のライトソードで斬りかかろうとした。しかし、その愛理の攻撃は易々と避けられてしまう。


「私の技量じゃ、まだ攻撃が当たらない!」


 愛理が悔しいと感じていると、突然人型の怪物の攻撃速度が上昇した。 先程までとは違い、数段攻撃速度が上昇し、愛理はライトシールドで防ぐのが精一杯になってしまう。


「強すぎる! ライトシールドが壊れちゃう! このままじゃ……どうすればいいの!」


 愛理が冷や汗をかいていると、その一瞬の隙をついてライトシールドの横から人型の怪物の膝蹴りが愛理の腹部に突き刺さる。愛理は再度血を吐きながら、葵が退避した屋外にまで吹き飛ばされてしまった。愛理のその姿を見た葵や同級生達は悲鳴を上げて愛理の名前を何度も叫んでいた。


「愛理ちゃん! 愛理ちゃん大丈夫!? 死なないで!」


 葵は愛理の名前を叫びながら地面に落下した愛理に近づこうとすると、葵の目の前に人型の怪物が立ちふさがった。


「怪物が何よ! 私の友達をこれ以上虐めないで!」


 葵は愛理の前に立ち、目の前にいる人型の怪物に向かって声を荒げた。なぜ人間を襲うのか、なぜ大切な場所を奪うのか、なぜ大切な人を傷つけるのかと問いただした。すると、葵の目の前にいる人型の怪物の吹き飛ばされた右腕の切断面が蠢き始めて吹き飛ばされた右腕が復元した。


「右腕が!? 復元するなんてずるい!」


 葵がそう叫ぶと、復元した右腕の刀で葵の首元を人型の怪物は軽く切った。切られた葵の首筋からは血が少量流れ落ち、葵は小さな痛みに耐えていた。


「これくらいの痛み……目の前の愛理ちゃんの辛さに比べたら!」


 そう言って愛理の前に立ち続けると、人型の怪人が強がりを言うなと流暢な口調で話し始めた。


「お前タチ地球人を殺すことが、オレの使命だ」


 突然流暢な口調で話し始める人型の怪人に葵は驚くも、それでも殺させるものかと強気な口調で葵は返す。


「私は約束したんだ! 友達の愛理ちゃんと守り合うって!」


 守り合うという言葉を叫びながら言った瞬間、葵の体が光り輝いて胸のあたりから一本の綺麗な槍が出現した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る