第13話 危機の襲来
日本にも怪物が現れた。そのことを聞いた愛理は愕然としていた。先ほどまではアメリカで出現した怪物だったので自分には遠い地域での事件だと思っていたのだが、ここ日本でも怪物が現れてしまった。アメリカで出た怪物は、緑色の五メートルの身長をして筋骨隆々であったそうである。その怪物は一つ目をして、右手に巨大な棍棒を持って特殊魔法部隊と戦ったそうである。
日本に現れた怪物は、愛理の住んでいる場所から遠い神奈川県の海岸沿いに出現したらしい。その怪物は赤い全身を覆う甲冑を身に纏って、右手に一メートルの日本刀を持っていた。
「これが怪物……」
愛理は初めて見た怪物に恐怖しか感じなかった。アメリカの特殊魔法部隊でさえ、一体を倒すのに苦労をしたのに、日本は特殊魔法部隊だけで倒せるのだろうかと不安しかなかった。
「あ、今日本に現れた怪物に日本の特殊魔法部隊の隊員が攻撃を仕掛けました!」
そのリポーターの言葉と共に、赤い甲冑の怪物に火属性の魔法を多数浴びせた。すると赤い甲冑の怪物は呻き声をあげたと思うと、すぐに魔法を反射して隊員たちに魔法を浴びせていく。隊員達は爆発によって吹き飛ばされ、岸壁に衝突してしまう。その威力によって気絶をする隊員が多く、気絶をしなかった隊員は武器によって近接戦闘を仕掛けていた。
長剣や斧などで仕掛ける隊員たちの攻撃を日本刀や小手で難なく防いでいく、赤い甲冑の怪物は隊員たちを切り伏せて、一人また一人と殺していく。 右腕を切断された隊員は、そのまま赤い甲冑の怪物に蹴り飛ばされて岸壁に衝突した。その隊員を見た他の隊員は、決死の覚悟で赤い甲冑の怪物に突撃をしていった。 両サイドから武器を持って攻める隊員たちは、何人も切り伏せられながらも、剣や刀を赤い甲冑の怪物に刺していった。
しかし、何本も腹部を貫かれながらも赤い甲冑の怪物は死ぬ気配はなく動き続ける。その場にいた隊員が全員地に伏せていると、先ほどの右腕を切断された隊員が、体内に魔力を充満させて赤い甲冑の怪物に抱き着いた。そして、抱き着いた隊員はそのまま自爆をしてしまった。その隊員の自爆はその地域周辺に衝撃波が届くほどに大規模なものとなり、近くにいた隊員たちは吹き飛んでしまった。
「日本の特殊魔法部隊の方のおかげで、怪物は倒されたようです!」
「倒せたみたいだけど……隊員の人死んじゃったよね!?」
「身を犠牲にして守ってくれたみたいだけど……」
キャスターが中継を終わらせて、日本は救われましたと言うが、愛理は隊員の人死んじゃったよねと言う。その言葉を聞いた正人は、あの人たちのおかげで今の日本の平和があるんだよと言う。 その言葉を聞いた愛理は、誰の犠牲もなく平和を勝ち取りたいと思った。
しかし、特殊魔法部隊の人たちでさえあれほど苦戦をしているのに今の自分自身では無理だろうと感じるしかなかった。テレビ中継が終わると、学校から本日は休校だという連絡が届いた。正人と楓は仕事に向かうが、愛理と奏は学校が休校になったので、自宅待機となっていた。
「あ、学校はないけど私事務所行ってくるね!」
「まだ安心はできないから気を付けてよね。 いってらっしゃーい」
奏はそう言うと、鞄を持って制服のまま家を出て事務所に向かった。家に一人残された愛理は、魔法書を自室から持ってきてリビングでテレビをつけながら開いていく。あの血文字のような文字はまだ表示されているも、それ以外は浮かび上がっていなかった。愛理はどうしたら魔法がもっと浮かび上がるか考えるも、特に答えは浮かび上がってこない。
「どうしたらいんだろう……」
愛理が悩んでいると、テレビのニュース番組でアメリカと日本で出現した怪物のことを特集していた。特集ではなぜ今になって怪物が現れたのか、なぜアメリカと日本にだけなのかの問題を議論していた。愛理はそんなのわからないわよと一人呟いていた。
「あの隊員の人のおかげで日本は怪物に蹂躙されずに済んだし、魔法を反射してたから単なる魔法攻撃だけでは対処できない可能性が高いのよね……」
愛理は学校でどうしていけばいいのかと思っていたが、今の私は学生だし何もできることはないかと思い始めた。愛理は何もできない私は守られるしかないのかと苦悩しながら考え、顔を曇らせて考えているとスマートフォンにメールが届いていた。そのメールの送り主は葵からであった。
「葵からだ! どんなメールなんだろう?」
葵からのメールは、怪人が出たことが不安なことや、身近で現れたらどうしようといった内容であった。愛理はそのメールに、星空校長や他の教師達が守ってくれるし、もし町に出現しても警察や特殊魔法部隊が助けてくれるよと返信をした。すると葵からすぐに返信が届いて、そうだよねと書いてあった。また、その下にはもし学園に出現したら二人で守り合おうねとも書いてあった。
「葵は初めて学園で出来た友達だし、一緒に守り合って戦うのは当然よ!」
愛理は笑顔になりながら、葵に一緒に守りながら戦おうねと返信した。 それから数回メールのやり取りをした後に、愛理はお休みと葵に返信を送って寝ることにした。翌日学校に向かうと、ホームルームの後に全校集会が開かれることになった。愛理と葵は、この全校集会で何が話されるのか気になりつつも、怪人が出現しないか不安であった。
その不安は愛理たち以外も感じているようで、同級生や上級生たちも不安な面持ちであるようである。入学式をした場所に全生徒が集まって席に座ったことを確認すると、星空校長を含めた全教師や学校関係者が入ってきていた。教師達が集まると、全校集会が始まった。初めに星空校長が怪人が出現したことや、それに伴って休校にした理由を生徒達に話し始める。
「数百年ぶりに怪人が出現したことによって、これから怪人が頻繁に出現する恐れもあったために、昨日は休校とさせてもらいました。そして本日登校してもらったのは、怪人が出現したことによって学校側の対応をお伝えしようと決めたからです」
星空校長が、マイクを右手に話し始めようとした瞬間、愛理達がいるこの会場の入り口が突然吹き飛んだ。その吹き飛んだ入り口の扉は、近くに座っていた生徒に衝突してしまう。
「痛い! 腕が……変な方向に……曲がってる!?」
入り口の扉が衝突した男子生徒の右腕が、本来曲がる方向とは別の角度で曲がっており、その男子生徒は苦悶の表情で絶叫していた。
「な、何だ突然、何が起きた!?」
星空校長を含めた教師たちは入り口の方を見る。するとそこには、赤黒い肌をした三本角を生やしているトナカイのような怪物や、白い肌をしてしいる両腕が赤い刀をし、顔に鼻や口がない眼だけが存在している奇妙な人型の怪物が佇んでいた。
「速やかに避難をするんだ! 私が相手をする!」
入り口付近にいる怪物二体を目視した星空校長は、すぐさまトナカイの怪物に近づいて外に吹き飛ばした。続いて人型の怪物を蹴り飛ばそうとした時に、人型の怪物が右腕にある刀で切りかかってきたので星空校長はすぐに後ろに下がった。
「私の速度に合わせてくるとは……この怪物強い!?」
星空校長は後ろに下がって自身の服を見ると、左斜めに服が切り裂かれていた。 星空校長は、人型の怪物は強すぎると生唾を飲んでいた。
「教師たちはすぐに生徒たちを避難させるんだ! この怪物は私が食い止める!」
その言葉と共に、星空校長は光属性の攻撃魔法を発動させて人型の怪物に光線と思わしき攻撃を当てた。すると、人型の怪物は壁を壊して外に吹き飛んだ。しかし、人型の怪物はすぐに星空校長に向かって走り両腕の刀で切りかかろうととしている。
星空校長は、どこかからか取り出した短剣によってその刀の攻撃を防いでいた。その様子を見ていた愛理と葵は、避難しろと叫ぶ教師を振り切って星空校長を支援しないとと走り出す。星空校長と戦っている人型の怪物の他にいたもう一体のトナカイの怪物は、外にて教師達と戦っていた。
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