第12話 迫る恐怖

 愛理は早く習得しますと言って、再度フライの魔法を発動させた。愛理は星空校長と葵に言われたことを考えながら、再度宙に浮く。自身の身体の力を入れ過ぎずにバランスを取っていく愛理は、ついに自由に少しずつだが動くことが出来た。


「やった! 葵ちゃんみたいに動けるようになった!」

「凄い凄い! 動けてるよ!」


 愛理が喜んでいると、星空校長が調子に乗ったらすぐ落下するぞと注意をした。愛理はそうでしたと言い、すぐさま飛ぶことに集中をすることを再開した。


「だんだんと飛べるようになった! 次は飛びながら別の魔法を……」


 そう呟く愛理は、フライを発動させながらライトソードを発動させようとすると、意識が別の方にいってしまいフライの魔法が切れてしまった。


「うわぁ!?」


 愛理はライトソードすらもフライ中に上手く発動出来ずに、地面に落下してしまった。その様子を見ていた星空校長は二つの魔法はを発動させるのは簡単だが、フライはまた別問題だと愛理に言う。


「フライの魔法によって多少は飛べるようになっても、未だに素早くは動けていないから、集中と意識が別のところにってしまうと解除されてしまうのだろう」

「そうなんですか!? 魔法って難しい……」

「私も頑張るから、一緒に頑張ろう!」


 そういう星空校長の言葉を聞いた愛理と葵は分かりましたと言って、笑顔で返事をした。もう一度愛理と葵はフライの魔法を発動させようとしたところ、下校時刻を知らせるチャイムが鳴り響いてしまう。その音を聞いた星空校長は、今日の部活はここまでだなと言って帰宅して身体を休めてくれと二人に言った。


「ありがとうございます!」

「勉強になりました!」


 そう愛理と葵は星空校長に言って、二人して部室にて帰り支度を始めた。帰宅中に愛理は葵と楽しく笑いながら帰ることが毎日楽しいと感じていた。


「じゃ、私はここだから愛理ちゃんまた明日ね!」


 葵と別れた愛理は、またねと返して帰路についていく。愛理は登校二日目だが、新鮮なことばかりなことや魔法の練習が出来ることが嬉しかった。しかし、嫌なこともあると落胆もしていた。それは魔法教科以外の学科科目である。愛理は魔法のことばかり考えており、それ以外の科目のことを考えることしていなかった。


「魔法だけ勉強したいけど、そんなことはダメよね……はぁ……憂鬱だわ……」


 まだ高等学校の学科授業が始まったばかりなので、そこまで焦らなくていいかと思う愛理だがいつか葵に怒られそうだなとも思っていた。そして、翌日も学科授業の後に魔法の授業を終えて部活の時間になると、フライの魔法を再度練習をしていた。


 昨日とは違ってアドバイスされた通りに愛理は魔法を発動させていく。歩くような速さで移動が出来るようになり、小走り程度まで葵と共に動くことが出来るようになっていた。


「やった! ここまでできた!」

「愛理ちゃん凄い! かなり上達してきてる!」

「ありがとう葵!」


 愛理と葵が喜んでいると、星空校長がここまで早く出来るようになるとは思わなかったと言っていた。それに対して愛理は、葵と頑張りましたと返答をした。


「まさかこの短時間で、ここまで上達するとは考えてなかったよ」


 星空校長は、その行使で自主練習をしていけば思う通りに素早く動けるようになるだろうと言う。それからは部活の活動時間終了時刻まで、愛理と葵はフライの魔法の練習を続けていた。


「そろそろ部活終了の時刻だな。 今日はこれで解散にしよう」

「ありがとうございました!」

「またお願いします!」


 星空校長のその言葉を聞いた二人は、挨拶をして片付けをした後に部室に戻っていく。部室には星空校長が椅子に座って、一冊の本を読んでいた。


「何の本を読んでいるんですか?」


 愛理のその言葉に、星空校長は光の柱から出てきた救世主のことが書かれている本だよと教えてくれた。


「私たちを救ってくれた救世主のことですか!?」

「そうだ。 そう言われているが、この本にはあまりいいことは書かれていないな」


 葵は星空校長に詰め寄って、私好きなんですと言う。 急に詰め寄ってきた葵に驚きながらも、星空校長はあまりいいことは書かれていないぞと言う。


「そうなんですか!? 私が知っている書籍類では、救世主たちは素晴らしかったと書かれていましたけど……」


 葵のその言葉に星空校長は、それだけが真実ではないぞと言う。


「この前教えた人を攫ったことの他にも、流れ玉での殺人や囚われていた日本人共々怪物を殺したりと残虐なこともしていたと聞いている」

「そ……そんな……そんな話聞いたことがないです!」

「私もです!」


 その言葉を聞いた愛理と葵の顔は青ざめていた。愛理と葵はその星空校長の言葉をすぐには信じることが出来ずにいたのである。その本に書いてあることはただの一説でしかないと思っていたが、自分たちが知っていることだけが真実ではないと教わっていたのでその一説も真実の一つなんだろうと愛理は思っていた。


「それが真実の一つだったとして、なんで私達に魔法を使えるようにしてくれたんでしょう? そこが疑問です……」


 愛理と葵はお互いに顔を見ながら、悩んでいた。その二人の様子を見て星空校長は、そこは私にも分からないと言う。


「校長先生でもわからないなんて……でも、魔法があればその救世主の人たちとも会えるのかな!」


 愛理は会ってみたいと思いながら、葵とどんな人たちなのかと話し始める。その二人を見ていた星空校長は、早く帰りなさいと二人に言う。


「先生さようなら!」

「先生また明日!」


 愛理と葵は二人で挨拶をして、帰宅をする。魔法のことを知るにつれて、疑問ばかりが湧いてくるのが嬉しいと感じている愛理は葵と魔法のことを話しながら帰っていた。扱える魔法が沢山増えたわけではないが、着実に増えつつあるのが嬉しいと話していると、葵が魔法は人生の役に立つように使いたいと話していた。愛理も、人のために役立つ魔法使いにならないとと葵に言って、また明日ねと別れた。それから数週間は学業と部活や土曜日での魔法の練習をしている。とても大変だが、実りある毎日を愛理は過ごしていた。


 家では両親や奏と魔法のことや、奏のCMやドラマ撮影のことを話したり聞いたりと奏の活躍を聞くたびに愛理自身も頑張ろうと思える毎日であったが、魔法書に新しい魔法が発現しないことだけが気がかりであった。そんなある日、愛理は自室で魔法書を開いて眺めていると魔法書が淡く光って魔法とは違う警告文のような文字が突如浮かび上がった。


「時が早く来てしまった? 気を付けろ?」


 魔法書に浮かんだ文字は赤色で浮かび上がっており、愛理は不気味だと思いながらも特に気にはしていなかった。夕食はすでに家族の皆で済ませていたので、自由な時間を愛理は過ごしていた。自室でテレビ番組を見たりスマートフォンで友達と連絡を取ったりと、楽しく過ごしていた。


 そのまま夜遅くなり愛理は布団にもぐって寝ると、どこかの国の空で空間が割れた。その空間の割れた場所から怪物が現れたことを寝ていた愛理は知らずにいた。愛理が寝ている時、怪物が現れた国では数百年ぶりに現れた怪物に驚くも魔法を駆使して厳しいながらも倒すことが出来たようである。 愛理が朝に目が覚めると、楓が慌てて部屋に入ってきていた。


「愛理! テレビ見てテレビ! 早く!」

「突然なにー?」


 そう愛理に言うと、楓は慌てて部屋を出た。愛理は何が起きたのかわからずに部屋を出てリビングに入ると、テレビ中継で怪物が数百年ぶりにこの地球に現れましたとリポーターの女性が慌てながらも中継を行っていた。


 怪物が現れた場所はアメリカの南部であり、昨日深夜に現れたようである。そこではアメリカの特殊魔法部隊が現れた怪物一体に、深夜から朝方まで特殊魔法部隊一個中隊で戦って負傷者多数を出しながらもなんとか倒したようである。


「怪物が現れた……それもたった一体なのに、ここまで苦戦するなんて……」


 愛理は怪物の強さに絶望をするも、現れたのが日本でなくて良かったと内心思っていた。


「いつこの日本にも出現するかわからないから、二人も気を付けるんだぞ」


 正人が愛理と奏に注意するようにと言うと、二人はわかったとすぐに返事をした。


「奏は私が守る!」


 そう意気込んで言うと、お姉ちゃんなら安心だねと奏は笑顔で言った。そう奏が言った瞬間、テレビ画面から耳を塞ぎたくなるほど大きな警報音が鳴り響く。


「何この大きな音!?」


 愛理が耳を塞ぎながら言うと、テレビ画面がスタジオに切り替わってキャスターが日本に怪物が現れましたと報道をしていた。

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