第11話 新魔法
「これ、想像以上に重い……身体強化を常時できないと常に振れないかもしれない……」
愛理は現状では扱いたい剣を思う通りに扱えないので、筋力を付けたり身体強化魔法を修得していきたいと考えていた。
「君たちが選んだ武器はそれか。 なら、より強くなれるように武器を扱えるようにこれから特訓をしていく予定になるな」
星空校長がそう言った瞬間、授業が終わるチャイムが鳴り響く。愛理と葵はその場に座って、疲れたと肩で息をしていた。
「もう終わりか。 これで授業は終わりだが、明日もあるのでその武器をしまっておくように」
武器を出したところを星空校長は指をさして、片付けておいてと言う。愛理と葵は、武器をしまいにいっている。そして、片づけが終わると教室に戻ろうと二人で言って歩いて行く。教室に戻ると、教室にいる生徒たち全員がぐったりとしていた。
「皆すごい疲れているわね。 やっぱり激しい授業なんだね……」
「そりゃ疲れるよぉ……凄い動くからねぇ……」
愛理と葵も机に突っ伏して疲れたと言っていた。他の生徒も溜息をついたり身体が動かないと呟いているようだ。クラスメイトたちは飲み物を飲んだり、談笑し始めるも、どこか疲れた様子を感じれる。愛理と葵も次第に話し始めるも、どうしても途中で疲れがどっと波のように押し寄せる。
「この授業が毎日あって、土曜日は午前中全部あるのね……」
「でもでも、強くなれるよ! 頑張ろう!」
嬉しいのだが大変だと感じてしまう愛理と励ましている葵が話していると、教室に担任教師が入ってきた。
「皆一日お疲れ様! 魔法の授業は大変だったみたいだね! でも、着実に実力は伸びていくから頑張って!」
その言葉と共に帰りのホームルームが終わって、愛理たちは部活に移動をした。部室に移動をすると、既に星空校長がそこにいた。
「さっきはお疲れ様。 少し厳し過ぎたかな? 身体の方は平気かい?」
「大丈夫です! 身体が痛いですけど、成長した証です!」
「私も大丈夫です! ピンピンしてます!」
愛理と葵の心配をする星空校長は、少し激しすぎたのかと不安になっていた。しかし、愛理と葵は大丈夫ですと返答をした。
「ならよかった! さて、今日の部活だが、君たちの魔法を先ほど拝見して、まだまだ初心者だと私は感じた。 そこで、当分の間は魔法の修得に励んでもらおうと決めた!」
その言葉を聞いた二人は、マジですかと小さく呟いた。愛理と葵は鞄から魔法書を取り出すと、星空校長はそれよりもこっちの魔法を覚えて欲しいと一枚の紙を二人に渡した。
「フライ……? 聞いたことない魔法だわ……」
「私も聞いたことないなぁー」
愛理は今まで聞いたことがない魔法名だったので、星空校長にどんな魔法ですかと聞いてみた。
「この魔法は今は使う人が限られている、古代魔法ではないが廃れつつある飛行魔法だ」
飛行魔法と聞いて、愛理と葵は目を輝かせていた。まさか自分たちが飛行魔法を覚えられるとは思わなかったのと、特殊な魔法を覚えられる感動があった。
「さて、フライは自身を空中に浮かせて移動をする魔法だ。 戦闘で使用したり、ちょっとした移動に可能な便利な魔法だ」
星空校長は、フライはインターネットなどで調べられるが、それだけじゃ使用はできないと言う。
「使用できる人が教えて、初めて使用可能な魔法の一つがこのフライだ」
「そんな魔法もあるんですね!」
「知りませんでした!」
それを聞いて伝承によって使える魔法もあるのだと感じだ愛理は、まだ見ぬ伝承によって使える魔法を知りたいと考えていた。愛理と葵は、星空校長からフライの魔法を教わるために先ほどまでいた第二体育館に移動をした。 そこに移動した二人は、星空校長から教わったフライの魔法を練習することにした。
「さて、フライを習得してもらうのだが、この魔法はバランスがとても重要でね。 私も苦労をしたものさ……」
「先生もですか!? それ程に難しいのね……」
「そんな難しい魔法を修得出来るのかなぁ……」
星空校長は、自身が苦労をした時を思い出していた。時折笑っていたのは、バランスを崩して砂浜に落下した時を思い出していたからである。
「フライと魔法名を言葉にして、自身が飛ぶイメージをするんだ。初めは高揚感が高まるだろうが次第に恐怖心が出てくる。 だが、その恐怖を乗り越えてバランスを取って飛び続けるんだ」
星空校長のその言葉を聞いた二人は、フライと二人同時に魔法名を言葉にした。すると、愛理と葵の身体が数センチ程中に浮いた。二人はやったと嬉しそうにするも、星空校長の恐怖心が出てくると言った言葉を感じていた。
「バランスを取れないし、操作できないから怖い!」
「落ちるぅうう! うぎゃ!?」
葵がそう叫んでいると、愛理は地面に倒れて呻き声をあげていた。 愛理は鼻を打ったらしく、痛いと鼻をさすっていた。
「操作は難しいけど、フライの魔法は絶対ものにしないと!」
愛理は再度意気込んで、フライの魔法を発動させた。二度目に発動させたフライは一メートル上昇して、愛理は全身に力を入れてバランスを取ることが出来た。
バランスを取っていく愛理に星空校長は、その調子でだんだんと力を入れずに自然と自由に動けるようにするんだと助言する。愛理はその言葉通りに、次第に力を抜いて、自然体で動けるようにしていく。
「次は足の力を抜いて……うわぁ!?」
愛理はそのまま前のめりに倒れて、そのまま額を体育館の床にぶつけてしまい呻き声をあげた。葵はその倒れた愛理を見て、慌てて愛理に近寄った。
「だ、大丈夫!? 血は出てない!?」
葵は地面に降りて愛理に近寄った。愛理は額が赤くなる程度で済んでいるようであり、痛いと自身の手で摩っていた。
「葵ちゃんは動くまでいけてる! 私も早く自由に動かなきゃ!」
愛理がそう叫ぶと、フライと勢いよく叫ぶ。愛理が叫ぶと、軽く宙に浮いて少しだけ思った通りに左右に動くことが出来た。
「やった! ついに少しだけ動けた! これでもっと動ければ!」
愛理は笑顔でもっと動くぞと言うと、隣にいた葵が歩く程度の速さで上下左右に自由に動いていた。
「葵ちゃん凄い! 私もこれぐらいしかまだ動けないのに、もう自由に動けてる!」
「なんとか感覚が掴めてきたかも!」
葵を見て凄いと言う愛理に、葵は考えるより身体で自然と動かす方に集中した方がいいかもと言ってくれた。愛理はわかったと力強く返事をすると、葵に言われた通りに魔法を制御しようとした。
すると、先程までとは違って思い通りに動けるようになってきた。愛理は葵ちゃんありがとうと葵の方を向いて言った瞬間、鼻血を出してしまう。
「あっ……鼻血が……」
「ちょっちょ、大丈夫!?」
愛理は鼻を抑えるも大量に血が流れてしまい、手では抑えられなかった。葵はポケットに入れていたポケットティッシュから数枚取り出して、愛理の鼻に当てた。
「葵ちゃん、ありがとう……」
「心配させないでよぉ……無理しないでね?」
「うん……ごめんね……」
愛理は地面に座って、鼻血を止めることに集中していると、星空校長が愛理と葵に近寄ってきた。
「なかなかフライの魔法は難しいかな? でも、習得すれば必ず戦闘の役に立つしフライがなければ戦えないことの方が多い」
続けて星空校長は、空中戦の可能性だってあるから、自由に素早く動けるようにしていこうと二人に言った。
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