第9話 悪夢

「でも、確定したわけじゃない。 噂の域を出ないし、そのことを見ていた人はいないからな」

「そうなんですか……噂の域……」


 そう言う星空校長は笑いながら言っている。それを聞いた愛理は、そのことを調べたり古代の失われた魔法を調べていくのがこの部活ですかと聞いた。


「そうだ。 この部活は天魔戦争のことを調べつつ、古代魔法のことを調べることだ!」

「古代魔法! 絶対強い魔法だわ!」


 星空校長は笑顔で部活のことを言うと、愛理と葵は頑張りますと返した。その言葉を聞いた星空校長は明日からよろしくと言って部屋を出ていった。


「今日は帰りましょうか。 葵ちゃん、明日もよろしくね!」

「うん! こちらこそよろしくね!」


 そう言って二人は部室から出て、帰宅することにした。葵は愛理とは逆の方向に帰るらしいので、愛理は駅で葵と別れると家の方向に行ける電車に乗った。


「初日から大変だったわ……色々なことがあったし、まさか校長先生が担当の部活に入るなんて……」


 愛理は今日一日で起きたことを思い返すと、凄い充実をしていたと感じていた。憧れの高校に入れたことや、初日で友達が出来たこと。古代魔法なんてものがあったことなど、愛理は怒涛の勢いで知ったことを思い返していた。


「明日もこの調子で授業を受けて、色々学ぶぞ!」


 そう言いながら電車の中で右腕を上にあげてしまう。その愛理の姿を見ていた周囲の人達が、愛理を見て小さく笑っていた。それに気が付いた愛理は、顔を赤くしながらすいませんと言って空いていた席に急いで座る。


「自然と声が出て腕を上げてた……」


 尚も顔が赤い愛理は、熱い顔を左手で扇いでいた。 家に着いた愛理は自室に入ってベットに飛び乗った。 疲れたと言って枕に顔をうずめていると、部屋に楓が入ってきた。


「疲れてるのー? 大丈夫?」


 ベットに横になっている愛理を見て、楓は体調は大丈夫なのと聞いた。すると、愛理は一日で沢山凄いこと起きたから疲れちゃってと話す。


「結構濃厚だったみたいね! 初日から凄いことばかりみたいだったようね!」


 楓は嬉しいわと言いながら、少し休んでなさいと言う。


「ありがとう……少し寝るねー」


 寝ると楓に言った瞬間、すぐに熟睡をしてしまった。愛理は寝ている途中から不思議な夢を見ていた。その夢は暗がりを歩きながらも、小さな光が空から降ってきていた。その光に手をかざすと、自身の身体が眩く光り輝いて力が溢れる感覚を感じた。


 愛理は輝く身体と共に前に歩いて行くと、そこには葵の姿が見えた。葵は身体中から目に見える程の高密度な闇のエネルギーを纏っていた。愛理はその葵に手を伸ばすと、伸ばした右手を葵の左手で払われてしまう。愛理は何で拒絶するのと叫ぶと、葵はもう私は違う世界の住人なのと言っていた。


「どういう意味なの! 葵は私の友達でしょ!」

「遅い……もう遅いのよ……愛理は遅すぎたのよ!」


 友達だからという愛理に、葵はもう遅いのと返す。


「何で遅いの! 今私はここにいるよ!」


 その言葉に葵は私のこの姿を見ても言えるのと言い、髪に隠れている右側の顔を見せる。


「そ、その顔は……」

「この顔を見ても愛理は言えるの!? 愛理のせいでこうなったのに!」


 葵の顔の右側には、鼓動を打っている青黒い波模様が目の上から首筋まで伸びていた。葵はこの模様は呪いよと言い愛理があそこで躊躇したから私に呪いがかかったのと愛理の顔を見る葵の目には、恨みが溢れていた。


「私は……あの時、あのようにするのが正解だと思って……」

「正解じゃなかった! 愛理はいつも間違えてばかりよ! あの時も私を置いて行っちゃうし!」


 愛理は夢の中だというのに実体験中なように言葉が自然と口から出ていた。愛理は友達を救うのに理由はいらないと叫んで葵の側に駆け寄も、葵の側に近づいた瞬間に、愛理は目が覚めた。 枕やシーツが濡れている程に汗をかいていた愛理は、服がベタベタで気持ち悪いと小さく言いながらベットから出る。


「何だったのかしらあの夢……葵ちゃんが出てきて、わけわからない夢だった……正夢にならなきゃいいけど……」


 タンスからハンカチを出して顔や身体中の汗を拭いていくと、楓がご飯が出来たよと教えてくれた。汗を拭き終えた愛理は、息を整えてから二階に降りていく。階段を下っている最中に、何やら美味しい匂いが漂っていた。


「この匂いは! カレーだ!」


 愛理は勢いよくリビングのドアを開けると、そこにはカレーを頬張っている奏の姿があった。


「奏が先に食べてるんかい!」

「食べてるよー! 超美味しい!」


 愛理はその場でずっこけそうになるも、美味しそうにカレーを頬張っている奏に近寄って奏の両頬を引っ張った。


「ふぁにするの! ふぉねえちゃん!」


 頬を引っ張られているので上手く言葉を発することが出来ない奏に、愛理は先に食べるなんてずるいわと怒っていた。怒る愛理に奏が美味しいから食べてみてよと言い、スプーンでカレーを愛理の口の中に入れた。すると、愛理は美味しいと言いながら奏の頬から指を離す。


「お母さんの料理美味しい!」

「お姉ちゃんも食べてるじゃん!」


 そう言いながら奏より早く食べ進める。その愛理の姿を見た奏はお姉ちゃん先食べちゃダメと言いながら、奏も再度食べ始めた。その姉妹の様子を楓は幸せそうな顔で見つめて、自身で食べるカレーを用意して飲み物を出す。愛理と奏はお茶頂戴と二人して言うと、楓は笑いながらはいはいと言っていた。


 翌日、奏とカレー早食い競争をして胃がムカムカするも授業を受ける楽しさで期待が高まっていた。学校の最寄り駅に着くと、正門を抜けた先にて上級生達が部活の勧誘を本日もしていた。


「まだまだ勧誘は続きそうだけど、高校って感じで楽しい!」


 周囲の勧誘する上級生を見ながら、愛理は下駄箱に辿り着いた。新品の上履きに、新品の制服の匂いや手触りを感じながらも、自身のクラスに入っていく。そこでは昨日と変わらずに賑わっているクラスメイト達が、どの部活に入るか話し合っていた。その中で葵も友達たちと話していて、愛理の姿を見た葵はすぐさま愛理のもとに駆け寄った。


「愛理ちゃん! 私達の魔法の教官は校長先生らしいよ!」


 その言葉を聞いた愛理は、なんでと驚いていた。


「なんか校長先生が教えるって言ったらしいよ。 部活の教え子だからついでに教えるって言ったらしいよ!」


 ついでって何よと驚いていたが、葵と話していたクラスメイトのクラスメイトたちが羨ましいと言っていたが、一人の女子生徒が校長先生が教えてくれるって凄い緊張しそうと言った。


「だよね! 部活だけかと思ったら、授業でも会うのは緊張する!」


 そんなことを言う愛理に、葵は沢山魔法教えてもらおうよと言う。愛理はそれにそうだったわねと言い、魔法を沢山教えてもらって強い魔法使いになると言う。愛理がそう言った瞬間、チャイムが校舎内に響き渡る。 それはホームルームが始まる合図であり、星空学園高等学校での本格的な生活が始まった瞬間でもあった。


 愛理が授業を受けて目が回るような高等学校の授業内容に唸っていた。ここまで授業難易度が高いことに驚愕をしていた。今は四時間目の授業が終わり一時間の昼休みに入ったのだが、愛理は机に突っ伏して魂が口から出ているようであった。葵は左隣で屍になっている愛理の右肩を揺さぶって、大丈夫と声をかける。


「何とか……魔法以外の勉強もレベルが高くてテストが今から不安だわ……」


 愛理のその言葉を聞いた葵は、テスト前には勉強会をして一緒に乗り切ろうと笑っていた。


「ありがとう……あ、お昼食べよ」


 フラフラなまま席を立つと、屍姿の愛理をクラスメイトたちは大丈夫なのかと不安な眼差しで見ていた。


「何食べるの? 食堂はあっちだよ」


 葵は愛理が何を食べるのか気になって聞いてみると、愛理はジェノベーゼを食べるわと言う。愛理は葵に食堂は色々なメニューがあるから迷うけど、曜日で食べる種類を決めてるからその中から選んでるわと言った。


「そこまで考えてお昼食べることにしたのね……私もそうしてみようかなー」


 葵は愛理と共に廊下を歩きながら笑って話していた。正門を背にして右側に食堂のため物が地上二階建ての長方形の横長のガラス張りの建物であり、そこには広さがあり席も多数置かれている。

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