第8話 異世界魔法研究会
愛理達がもらった教科書は魔法の歴史や国語や数学などの勉学の教科書、魔法属性のことが書かれている魔法書など、全部で十五冊であった。
「確かに大変だけど、勉強楽しみ! 魔法をもっと知りたい!」
愛理のその眩しい顔を見た葵は、そうだねと同意した。教室に戻ると由良から教科書を家に持ち帰って、授業の日に持ってきてくださいと言われた。その言葉と共に時間割表を由良は配る。授業は月曜日から金曜日まであり、土曜日には魔法練習として午前中の時間が入っていた。
星空学園高等学校だけは、他の高等学校とは違って土曜日に魔法練習という授業が設定されている。魔法練習は各属性魔法の練習や、武器を用いた魔法を戦闘訓練を行う日であり担当教師による指導も行われる。
「一時間目から六時間目まで毎週あって、土曜日は午前中までね。 結構毎日大変そうだけど、楽しみ!」
愛理その言葉に葵も私も頑張るわと愛理の方向を向いて言う。そして、由良の話が部活動の話に移行していた。
「部活動に参加は必須ではないけど、上級生と触れ合える機会でもあるので勉強になると思うわ!」
由良の言葉を聞いて、クラスメイト達は度の部活に入ろうかと騒いでいた。定番のサッカー部や野球部、バスケットボール部がある中で魔法研究会や攻撃魔法研究会、支援魔法研究会、防御魔法研究会といった多種多様な部活動があった。
愛理はどの部活に入ろうか考えていると、葵が一つの部活を見つけてここいいかもと言っていた。その部活動とは、異世界魔法研究会と書いてあった。
「異世界魔法研究会? どんな部活なのかな?」
「不思議な部活ね……どんな内容か想像できないわ……」
愛理は葵に聞いてみると分からないわと言いながら、帰りに寄ってみようと愛理に話しかけていた。
「そうね! 行ってみましょう!」
「放課後が楽しみ~」
楽しみが増えて嬉しいと愛理は感じていたが、葵はどんな属性を扱うのか気になっていた。
「さて、これにて初日は終わりです。 後は部活見学をしたり、入部手続きをしたりして下校時刻には帰宅してください!」
その言葉と共に由良は教室を出ていった。クラスメイト達はすぐさま仲良くなった友達と一緒に教室を後にして部活動の場所に走っていく。愛理達新入学生の入学に伴って、他の学年の生徒達も本日は授業はなく部活動だけしてくれと通達がされていた。
それは毎年のことなので、生徒達は授業がないと喜んで部活動に励んでいる。そして、愛理達の説明が終わった午前十一時を革切りに上級生達が部活の旗や勧誘のチラシを持って廊下や校庭、正門付近に現れて新入生を改めて勧誘し始めていた。
異世界魔法研究会。 葵が気になったというその部活を見学するために、愛理は先を小走りで歩いている葵のあとを追う。
「歩くの早いよ! そんなに焦らなくても逃げないって!」
「早く行かないと! 楽しみだわ!」
そういう愛理の言葉は、目を輝かせながら小走りで行く葵には届いていないようであった。愛理は葵がそこまで気になっている部活とはどんな内容なのか気になりすぎていた。
「あ、ここみたいよ!」
「早く行きましょう!」
クラスがある校舎とは違い、校舎と部活棟を結んでいる連絡通路を通って三階建ての部活棟に向かう。 愛理と葵が目指している異世界魔法研究会はその部活棟の三階奥にある。葵は真新しい横長の長方形の部活棟をできたての良い匂いがすると言いながら歩いていた。そして、愛理と葵は異世界魔法研究会がある奥の部屋に到着をした。
「ここが目当ての場所ね! どれくらいの人がいるんだろ!」
「こんなに広いんだから、沢山いるわよね!」
葵は楽しみにしながら、目の前の扉を引いた。すると、部屋の中は三十畳ほどの広さで、そこには多数の本が部屋の両端にある木製の棚ににしまわれており、部屋の中心部には大きなガラス製の長方形の机が置かれていた。愛理と葵は部屋の中に入っていくと、そこには誰もいなかった。ここが異世界魔法研究会なのはあっているはずなのだが、担当する教員の姿が見えなかった。
「勧誘に行ってるのかな? 誰もいない部活なんてありえないと思うんだけど……」
葵は部屋の中を歩きながら、この部屋に何があるのかと物色していた。葵は口を尖らせながら窓際に置いてある本や机の上にある書類などを弄ると、やっぱり誰かしら入部していると言う。
「そうみたいだけど、なんで誰もいないんだろう……」
愛理と葵が顔を見合わせていると、突然部屋のドアが開く。ドアが開いた先を見てみると、先ほど入学式で見た校長先生の姿が見えた。
「な、なんでここに校長先生が!?」
愛理が驚いた声を上げていると、星空校長は笑っていた。
「毎年新入生に配られる紙に魔法で細工をして、特殊な魔法属性を持つ人にしか見えないようにしているんだけど今年は二人が見れたようだね」
そう言う星空校長は、愛理と葵の顔を見て笑っていた。
「黒羽愛理君と、斑鳩葵君だっけ? 二人は私が受け持つこの部活に入部するかね?」
「どうする葵?」
「そんなの決まってるでしょう?」
星空校長が部活を担当している異世界魔法研究会に入らないかと言われ、愛理と葵は入部しますと即答をした。愛理と葵の入部すると言う言葉を聞いた星空校長は、部屋の奥にある小机の中から入部届を取り出して二人に手渡した。
愛理と葵は、部屋の中心部にある机の上で椅子に座りながら入部届を記入していく。氏名とクラスを記入して、その紙を星空校長に手渡す。
「確かにもらったよ。 君達がこの部活の初めての部員だよ」
「本当ですか!?」
「もっといると思ってた……」
その言葉を聞いた愛理は今まで誰も来なかったんですかと聞くと、星空校長は溜息をつきながらだれも来なかったよと言う。
「さっき特殊な属性を持つ者だけが分かると言ったけど、その属性は使用者が極端に少ない光と闇の属性なんだよね」
光と闇、その言葉を聞いた愛理と葵はお互いの顔を見ていた。愛理は葵も光属性なのかと聞くと、私は闇属性よと葵が言った。
「闇属性なんだ! 私は光属性なの!」
愛理と葵は自分達が希少な属性を有していることを知ると、闇属性ってどんな魔法があるのと愛理は聞いてみることにした。
「闇属性の魔法は結構怖いのが多いいわよ。例えば数秒間相手の視力を奪う魔法や、相手の身体の部位を麻痺させる魔法などがあるわね」
愛理は結構戦いで有利になる魔法だねと言うと、あまり使いたくない魔法だけどねと葵は顔を伏せて言う。その様子を見た愛理は、闇属性の魔法って名前だけど味方を支援出来る魔法が多いって思えばいいと思うよと言った。
「そんなこと考えたことなかった……そうだよね! 味方を支援出来たり守れる魔法があるんだもん!」
愛理と葵はお互いに手を握って笑っていた。愛理と葵が手を握っていると、星空校長がそろそろ部活の説明をしていいかなと言う。それに対して愛理と葵はごめんなさいと言い、お願いしますと返答をした。
「この私が担当をしている異世界魔法研究会は昔に起きた天魔戦争のことを調べたり、失われた古代魔法の研究をするところだよ」
失われた古代魔法の噂は聞いたことがあった愛理は古代魔法のことを追求できることや、最近奏との話題にも出た天魔戦争がここでも話題に出るとは驚いていた。
「天魔戦争って授業でも習ってきましたけど、授業で習うこと以外にもあるんですか?」
愛理は思ったことを聞いてみると、星空校長はまだ知られていないことや隠されていることがあるんだと言う。
「例えば天魔戦争ではまだ人類が魔法を使えなかった時代に、魔法を使用できなくとも怪物達を倒せて一方的に殺されるだけではなかったことや、救世主と言われる人達が何人かの日本人を連れ去ったり自ら望んでその救世主たちの惑星に連れて行ってもらった人たちなどがいるらしい」
そのことを聞いた愛理と葵は、そんなことがあの奇跡の戦いの裏で起きていたなんてと絶句をしていた。
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