第7話 入学式
階段を上っていると、壁のいたるところに部活の勧誘のチラシが貼られていた。愛理はそのチラシを見ながら階段を上っていくと、気がついたら四階に到着していた。
「この学校やっぱり最高! 毎日が楽しくなりそう!」
愛理は目を輝かせていると、自分のクラスである一年一組に着いた。教室の外に立つと、教室内から楽しそうな話し声が聞こえてきていた。愛理は期待で胸を一杯にしながら、教室のドアを開けた。すると愛理を見たクラスメイト達は、新たな仲間だと愛理を歓迎した。
「初めまして、黒羽愛理です!」
そう言って頭を下げると、クラスメイト達はよろしくねと返してくれた。愛理は良いクラスメイト達で最高だと思いながら、黒板に表示されている自分の名前の席に座った。
「窓側の一番後ろの席って最高だわ!」
愛理は晴天の空を自席から見ながら最高だと笑顔でいた。すると、愛理の隣の席に座っている女生徒が試験で会ったよねと話しかけてきた。
「あ、もしかして実技試験の時に話した斑鳩葵さん!」
斑鳩葵は愛理と星空学園高等学校の入学試験の際に、実技試験をする順番待ちの時に話が合って、試験終了後に駅まで一緒に帰るほどに仲が良くなっていた。斑鳩葵は綺麗な黒色の髪色をしており、その髪の毛の長さは肩を少し超える程の長さをしていた。また、前髪は少し重みを入れて左に流している感じであった。
少しあどけなさを残しながらも、大人なイメージを与える印象をしていた。スタイルは愛理と同等かそれ以上に良く見え、着痩せするタイプだと試験の時に言っていた。そして、葵は身長が愛理とほぼ同じであるので自身より大人に見える葵がいることがとても嬉しかった。
「同じクラスになったし、これからもよろしくね!」
愛理と葵が握手をすると、チャイムが鳴って教室に教師が入ってきた。その教師は女性であり、愛理はやったと喜んでいた。
「皆さん入学おめでとうございます! これからこの学園にて、魔法を主にしたカリキュラムを行っていきます。 しかし、魔法以外の授業も当然ありますので、そこは怠らないようにしてください」
教卓の前に立つ教師は、自己紹介をする前に注意を促す。毎年魔法ばかりを勉強してそれ以外の科目を怠って退学に陥る人がいるためだと言っていた。
「さて、注意はそこまでにいて。 私はこの一年間このクラスを担当する、水瀬由良です。よろしくね!」
水瀬由良と言う担任教師は、そのまま挨拶をすると頭を下げた。水瀬由良は肩にかかるほどの長さの茶髪をし、左分けの前髪をしていた。黒いスーツがそのスタイルの良さを前面に押し出しており、そのことは自身で気が付いていないようであった。
身長は百六十五㎝ほどであり、その身長もあって男子生徒から評判が高い。由良は自身の自己紹介が終わると出席を取りますと言い、あいうえお順で名前を呼んでいく。愛理の番になると、すぐに立ち上がって黒羽愛理ですと言った。クラス中の視線が愛理に注がれているので少し緊張をしているものの、名前や出身中学校を言えた。
そして愛理の番が終わると、何事もなく自己紹介の時間が終わった。それが終わると、由良がそろそろ入学式の時間だから第一体育館に行きましょうと言う。第一体育館は正門から見て左側に広がる敷地内の奥にある。由良に続いて歩いて行く生徒達は、これから行くであろう多数の施設を遠くから眺めていた。
愛理も葵と共に施設を眺めていると他のクラスの新入生達も現れて、入学式が始まるんだなと愛理は感じていた。第一体育館に入ると、そこはとても広い内部構造になっており、前方にある舞台にはマイクが設置してあった。体育館内には多数のパイプ椅子が置かれて、その数の多さが新入生の数なんだと愛理は考えた。
「ここに座るみたいね。 葵ちゃんが隣で良かった!」
愛理は指定されたパイプ椅子に座ると、左隣に葵が座った。入学式が後五分で始まるので、静かにお待ちくださいと教師の一人がマイクで喋っていると葵が緊張してきたと愛理に耳打ちしてきた。
「だよね! 私も凄い緊張してきた! 心臓の鼓動が止まらないよぉ」
愛理は自身の胸に手を当てて鼓動が早いことを確認すると、葵が緊張が最高潮だよと笑っていた。愛理と葵が緊張していると話していると、体育館が突然暗くなった。何が起こったと周りの生徒達が驚いていると、舞台に照明が当てられてそこには一人の男性が立っていた。その男性は白いローブを着ていて顔は見えなかったが、すらっとした体躯をしていて身長が高いことは分かった。
その男性は、両手を広げるとその手から緑色と白色の掌の大きさぐらいだと思われる妖精を出現させた。その妖精は小さな羽を広げて前方から後方へ飛んでいき、妖精が飛んだ後には桜と癒し効果があるアロマの匂いが漂っていた。
「すごーい! すごーい! 魔法でこんなことまで出来るんだ!」
葵は目を輝かせながら妖精を目で追い、愛理は妖精より魔法を発動した舞台にいる男性のことを見ていた。愛理はあれはどんな魔法なのか気になり、あの舞台にいる男性は誰なんだとも気になっていた。属性のある魔法ではないだろうし、魔法名も口にせずに発動をしていた。
「あのレベルになるまでは、どれくらいかかるんだろう……」
愛理が神妙な顔つきで舞台にいる男性を見ていると、妖精達が男性のもとに戻ってその姿を消した。男性は妖精が消えるのを確認すると、ローブを脱いでその姿を現した。ローブから見えた姿は三十代前半と思える年齢の男性であり、ローブの下にはスーツを着ていた。そして、男性はマイクを右手で掴んで入学おめでとうと言う。そのスーツを着ている男性はおめでとうと言った次の言葉で、私は校長の星空蓮だと話した。
「あの人が校長先生だったんだ! 想像より若かった!」
愛理は校長の姿にも驚いていたが、その苗字にも驚いていた。
「この学園と同じ名前なんだね! 親族なのかな?」
愛理のその言葉に葵が、この学園は創業者の子供達が幼稚舎から研究施設までの代表を一人ずつ勤めているらしいよと教えてくれた。
「そうだったんだ……知らなかった……」
愛理はこの学校の表面しかまだ見てなかったんだと思い、もっとこの学園を知りたいと思い始めていた。愛理がそう考えていると、星空校長はこれからのことについて話し始める。
「今日入学した君たちはこれから教室に戻って、カリキュラムのことを担任教師から教えてもらう。 自分の魔法を伸ばすことや、勉学に励むためにこれからの方向を決めてもらう!」
愛理と葵はその言葉を聞いてどんな魔法使いになりたいか、どんな方向で魔法を修得していきたいか未来に向かって歩き続ける自分の姿を想像するのが楽しかった。それからは星空校長によって各教科の教師の説明や自己紹介をしていき、それが終わると第一体育館から出て教室に戻ることになった。
「そう言えば終始暗くて舞台の上だけ明るかったけど、寝てた人少しいたね」
愛理の言う通り、殆どの時間が暗かったため寝ていた人が多少いた。本当は校長の話の途中で明るくする予定であったが、それを担当する人が忘れていたために暗い中で進行をすることとなってしまっていた。
教室に戻ると、由良から全員に三枚のプリントが配られた。その紙には一年ごとの行事が簡易的に書かれたものと、部活名が書かれている一覧と魔法の授業の時に各属性で別れるのでその時に行く教室の部屋番号が書かれていた。
「結構行事が多いのね。 学園生活自体も楽しめそう!」
愛理は夢にまで見た通いたい学校だったので、面白そうな行事が多いのが嬉しかった。例えば、定番の学園祭や運動会がある中で、愛理は魔法研究所に見学に行く行事に目がいった。
「魔法研究所って凄い場所じゃない! 行きたい!」
魔法研究所は、世界で最先端の魔法研究を行っている日本に本部がある研究施設であり、世界中の研究結果を取りまとめて新たな魔法の可能性を追求していいる施設である。
「さて、説明は以上ですのでこれから二階にある多目的ホールに行って教科書類を取りに行きましょう。 各クラス順ですので、この一組から先です」
そう言われて愛理達は二階に行き、階段を下りて右側にある多目的ホールに行った。そこでは奥行きがある室内に、一つの机の上に一種類ずつの教科書が置かれていた。
「一個の机に一つの教科書があるので、全て取って教室に戻ってください」
由良のその言葉に従って愛理と葵は教科書を取っていく。愛理はこんなに種類があるのとげんなりしていたが、これを覚えれば光属性の魔法をより扱えるようになるかなと考えていた。
「結構教科書多いねー。 覚えきれるか不安だよぉ」
葵はため息をつきながら教科書を持って歩いていると、愛理は多いねと葵に同意をしていた。
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