第6話 緊張と通学路

「お、お母さんの料理も好きだから! あーこの炒飯も美味しそうだわ! いただきます!」


 そう言って食べ進める愛理を見ていた楓はありがとうと言って、自身も食べ進めていた。愛理と楓で楽しく談笑しながら食べていると、テレビで愛理が通う予定である星空学園のCMをやっていた。


「日本で最高峰の魔法学園の星空学園高等学校に皆さまも魔法を学びに来ませんか? この学園であなたに未来の想像を!」


 CMに出演していた男女一組の学園の生徒と思われる人が笑顔で話していた。それを見た愛理は、ここに私が通えるんだなと笑顔になっていた。


「そんなに楽しみ?」


 そう言われた愛理は、うんと笑顔で即答した。すると、楓がリビングにある棚から先ほどテレビで見た制服を手渡してくれる。 紺のブレザーと紺のスカートの制服で、女性でもネクタイをしているのが特徴の星空学園の制服であった。加えて、左胸に星空の如く輝く星をイメージした小さなバッチが付けられていた。


「凄い可愛い制服! お母さんありがとう!」

「絶対愛理に似合うわ! 良かったわね!」


 その制服を見た愛理は、楓にありがとうと言うと喜んでもらえてよかったと笑っていた。愛理は星空学園高等学校に本当に通えるのねと、実感が湧いてきていた。


「明後日から入学だし、今日はお祝いでこのプレゼントも買ってきたのよ!」


 そう言い、楓は側に置いていた鞄からピンク色のシュシュを取り出して手渡す。


「戦闘訓練とかもあるでしょうから、髪を束ねるのに必要かと思って」


 その言葉を聞いた愛理は嬉しいと言ってありがとうと楓に言う。


「これから大変だろうけど、自分の信じた道を進んでね!」

「うん! 迷うこともあると思うけど、絶対前に進んでいく!」


 楓にありがとうと言って、シュシュを右腕に付けた。ピンク色のシュシュは愛理に似合っており、大切にしようと愛理は決める。


「お守りだと思って大切にするね!」


 楓はありがとうと言って、愛理と共に笑いあっていた。その後、奏と父親が帰ってきてお姉ちゃん何笑っているのと奏に言われた。


「秘密よ、ひーみーつー」

「なんでー!? 教えてよー!」


 秘密と返す愛理と、教えてと何度も愛理の背中を叩く奏の楽しく幸せな空間が溢れていた。そして翌日、愛理は安静に好きなことをして過ごしていた。夜になると明日から通う星空学園のことばかり愛理は考えていた。


「どんな学校生活を送れるんだろうなー。 どんな同級生がいて、どんな先生がいてどんなふうに魔法を使えるようになるんだろうー」


 胸の中が期待で溢れていると愛理は考えすぎて寝てしまった。カクンと音が出る程にスッと熟睡してしまったようである。そんな日々を過ごしていると、ついに春休みが終わり、星空学園高等学校への入学の日がやってきた。愛理は入学初日の早朝に目が覚めてゆっくりと制服に着替えていた。


 紺色のブレザーとスカートを着て自室の鏡で自身を見ていると、高校生になったんだなとの自覚が湧いてきていた。


「どんな入学式なんだろう……それにどんな友達が出来るのかなー」


 愛理は期待に胸を躍らせながら、通学鞄に荷物を入れていた。行く準備が整うと、楓が起きてきたようで愛理の部屋の物音が気になったのか部屋に入ってきた。


「こんなに朝早くから何してるの?」


 目を擦りながら楓が愛理の部屋に入ると、既に起きていて制服を着ていた愛理を見て驚いていた。


「もう着替えていたの? まだ時間あるのに早すぎるわよ」


 クスクスと小さく笑う楓に愛理は、興奮しちゃって目が覚めちゃったと返した。愛理は早朝のテレビ番組を見ながら楓が朝食を作るのを待つことにした。


「どこのテレビ番組も入学式のことばかりだなー。 私の行く学校も出てるかな、楽しみ」


 そんなことを考えていると、朝ごはんだよと楓に呼ばれた。愛理はその言葉を聞いて、今行くとすぐに答えた。朝食は目玉焼きと白米にウインナーであり、愛理は美味しそうと目を輝かせながら目玉焼きをべ始めた。


「美味しい! ありがとう!」

「ありがとうね。 どんどん食べてね」

「うん!」


 愛理は美味しいと言いながら朝食を食べ進めていると、奏と正人がゆっくりと起きてきた。奏はお姉ちゃん朝早いねと言い、正人はもう制服を着ているのかと驚いていた。朝食を楽しく食べていると、そろそろ通学時間だよと奏が教えてくれた。


「あ、本当だ!? ゆっくりしすぎた!」

「お母さんの料理美味しいけど、堪能しすぎだよー。 登校初日だし」


 愛理はそれほど遠くない場所に星空学園高等学校があるので、まだ焦る必要はなかった。しかし奏と一緒に家を出ようと決めていた。


「お姉ちゃん行くの?  なら、一緒に行こう!」

「奏も同じこと考えていたのね! 私も奏と一緒に行きたかった!」


 そう奏と愛理は笑いながら家を出て、二人で横に並びながら歩いて最寄り駅に行く。四月で春の季節なので、桜が舞っていたりして道を歩くのが楽しいと感じていた愛理は、春っていい季節よねと奏に話しかける。


「私も好き! 春ってワクワクするし、過ごしやすい季節でもあって好き!」

「だよね! ワクワクが凄いわ!」

「あ、ドラマの撮影で学校に提出書類があったんだ! 鞄に入ってるかなー」


 鞄の中を探す奏は、芸能との両立は難しくて大変だと小さな声で愛理に言う。しかし愛理は芸能界に入ってから奏は楽しそうだよと返した。


「芸能界は凄く大変だけど、凄く楽しいよ! 色々な人に会えるし、自分の可能性を存分に出せるから!」


 目を輝かせている奏は、いつか日本一の芸能人になって海外で活躍するんだと愛理に話す。愛理はそこまで既に考えているとは知らなかったので、奏は凄いと頷いていた。

「奏は凄い芸能界で活躍してるし、自慢の妹よ」

「お姉ちゃんも魔法を追求して偉大な魔法使いになるんだから、私以上に凄いって!」


 愛理のことを褒める奏の眼は、奏を見ていた愛理の眼とは違って澄んでいたので自分のことをちゃんと見てくれていて嬉しいと感じていた。二人は駅に到着をして電車に乗ると、途中の駅で奏は下車した。奏はお姉ちゃんまたねと言って学校へ向けて走って行く。


「私の降りる駅は、次の駅で乗り換えて星空学園駅に行けば大丈夫か!」


 愛理は間違えることなく乗り換えて、家から四十分ほどで星空学園駅に到着をした。星空学園駅に降りると、そこには子供から大人まで沢山の人で溢れている。その駅はとても広く、巨大なターミナル駅のように見える。愛理は目を輝かせながら周囲を見渡していると、駅の東側に星空学園高等学校はこちらですと看板が立っているのが見えた。


「あっちか! 早く行こう!」


 愛理は小走りで看板の方に走っていくと、そこには青空の下に広がる巨大な敷地面積を持つ星空学園高等学校が見えた。星空学園高等学校は星空学園駅に隣接をする高等学校であり、そこには千名以上の生徒達が通っている。


 ちなみに、星空学園は幼稚園から大学院まであるエスカレーター式の魔法学校である。そして、この日本で上位に入る有名な魔法学校の一つでもある。


「ここに今日から通うんだ! 楽しみだわ!」


 目を輝かせて道を歩くと、学校の正門に前に到着した。正門には、入学おめでとうの門が手作りで作られていたり、在校生達が正門から校舎までの間に多数立っていて新入生に声をかけたり部活の勧誘をしていた。


「サッカー部はどうですか! 面白いですよ!」

「剣道部はどうですかー! 精神も鍛えられますよ!」

「魔法剣闘部はどうですか! 大会もあってこれからの人生の役に立ちますよー!」


 無数にいる在校生達に驚く愛理だが、夢への第一歩だと頷いて正門を超えて学校内に入っていく。学校内に入ると、そこにはいろいろな旗を持っている生徒達が新入生を迎えていた。そこにはサッカー部やバスケットボール部などの部活や映画部や写真部などの文化部など幅広い勧誘が沢山あった。


 愛理は多くの部活の旗を見ながら、学校内を歩き続ける。正門を抜けて在校生の勧誘を抜けると、学校内に入る入り口が見えた。入り口の先には下駄箱が見え、その前にクラス分けの看板が立っていた。愛理は一年一組に所属するらしく、愛理はクラスも分かって一年一組の下駄箱に向かうと、そこには既にクラスメイトと思われる女子生徒がいた。


「おはよう……」


 緊張をしているのか、顔を強張らせながら上履きに履き替えて先に行ってしまう。


「凄い緊張がこっちにも伝わってきたわ……」


 愛理も少し緊張をしてしまうが、すぐに持ち直して地震も上履きに履き替えて一年一組を目指していく。校舎内はガラスと白い壁がとてもマッチしており、廊下は綺麗な大理石で出来ていた。天井は圧迫感を感じない程度に高く、一階には職員室や放送室に生徒会室がある中に三年生の教室が五つある。


 一階だけでも見る場所が多く、L字型の廊下を歩こうとしたが、時間も迫っているので自分のクラスがある四階に行こうと決めた。

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